男性不妊症により精巣癌のリスクが増大

キャンサーコンサルタンツ
2009年2月

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らは、不妊症の男性は不妊でない男性に比べて精巣癌を発症するリスクが3倍高いと報告した。この研究の詳細はArchives of Internal Medicine誌の2009年2月23日号[1]に掲載された。

精巣癌は米国の男性10万人に5人の割合で起こるという比較的まれな癌である。しかし若年男性には最も一般的な悪性腫瘍である。精巣癌は後進国より先進国の罹患率がずっと高く、この癌に関連する環境因子が存在することを示唆している。多くの西洋諸国で20世紀の半ばから精巣癌の発症率は増加し続けている。1975年から2002年の間で米国での精巣癌の発症率は倍増した。またアジアのいくつかの国、特に日本でも発症率が増加しているという証拠がある。精巣癌の原因についてはよく解明されていないが、発症率が増加していることについては思春期早発、精巣の外傷、タバコやマリファナの吸引、鉛などの有毒物質への曝露などと関連付けられている。そのほかの要因には、停留精巣、上皮内癌、子宮内での女性ホルモンへの曝露などがある。ノルウェーの研究者らはまた、精巣癌の発症率と母親の体重増加とが関連している可能性があると報告している。

今回の研究では、51,461組の夫婦に対して不妊症の判定を行い、California Cancer Registryの22,562人の男性と照合した。この不妊症の判定を行った集団のなかに、予測される25件に比べて30%多い34件の精巣癌を認めた。不妊症が確認されている男性は精巣癌の発症リスクが2.8倍高かった。ただ精巣癌が希少であるため、予測値の5件に対して実際の症例は13件であった。

コメント:

データから男性不妊症と精巣癌を関連付ける共通因子の存在が示唆されるとみられる。この因子が何かについては、今後の研究を待たなければならない。

参考文献:
[1] Thomas J. Walsh, MD, MS; Mary S. Croughan, PhD; Michael Schembri, BS; June M. Chan, ScD; Paul J. Turek, MD. Increased risk of testicular germ cell cancer among infertile men. Archives of Internal Medicine. 2009;169:351-356.


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翻訳担当者 杉田 順吉

監修 榎本 裕(泌尿器科)

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