ペムブロリズマブによる術後療法が腎臓がんの再発を遅らせる

・術後の免疫療法薬投与により、再発リスクの高い腎臓がん患者の無病生存率が改善した。
 ・ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)はプラセボと比べ再発または死亡のリスクを32%減少させることが、術後補助免疫療法を評価した第3相試験の中間結果で明らかになった。
 ・再発リスクの高い腎臓がん患者に対する免疫療法において有望な結果が示されたのはこの試験が初めてである。

このプレスリリースは最初、2021年6月3日に発行されたが、The New England Journal of Medicine誌での発表にあたり、更新および再発行されたものである。

腎臓がんの手術後に免疫療法薬を投与すると、再発リスクの高い患者の無病生存率が改善することが、同患者を対象に術後補助免疫療法を検討する第3相臨床試験の中間報告としてThe New England Journal of Medicine誌に掲載された。

ほぼ1年にわたりペムブロリズマブを投与した患者はプラセボを投与した患者よりも再発までの期間が長かったと、KEYNOTE-564臨床試験の報告者であるダナファーバーがん研究所のToni K. Choueiri医師は述べる。これは、試験開始からの2年間で再発または死亡のリスクが32%減少したことを示す。この結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の全体会議(プレナリー発表)で、ダナファーバーがん研究所のLank Center for Genitourinary Oncology所長であるChoueiri氏により発表された。

本試験を主導した同氏は「KEYNOTE-564は、このような条件で術後補助免疫療法を検討し、初めて有望な結果が得られた第3相試験です。この療法は新たな標準治療になる可能性があります」と話す。試験データに対して予め規定された最初の解析が今回報告された。

術後補助免疫療法は、主治療後に追加で行い、がんの再発リスクを減少させる治療である。

Choueiri氏は、KEYNOTE-564試験のこれまでの結果を報告し、術後24カ月時の無病生存率はペムブロリズマブ群が77.3%、プラセボ群が68.1%と推定されると述べた。試験は継続中であり、この術後補助免疫療法により全生存率が改善するかどうかを検証する。これまでのところ、全生存率の評価に足る死亡者数には達していないものの、同氏は「早期に得られた徴候はたいへん期待がもてるものです」と話す。24カ月時の全生存率はペムブロリズマブ群が96.6%、プラセボ群が93.5%と推定される。

KEYNOTE-564試験は、腎細胞がんに対し、無作為化前の12週以内に部分腎摘除術または根治的腎摘除術を施行した患者を対象に、摘除術後に行う補助免疫療法を評価する目的でデザインされた。この第3相二重盲検試験は国際的な多施設共同試験である。試験では患者994人を登録し、約1年間にわたり3週間ごとにペムブロリズマブを投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。がん細胞は、体の免疫系による認識および殺傷から逃れるための分子経路を乗っ取る。ペムブロリズマブはその経路を標的とする。この「チェックポイント」経路を阻害することでT細胞を中心とした免疫系を解放し、腫瘍を攻撃することを助ける。

試験の選択基準は、淡明細胞型腫瘍が認められ、再発リスクが中等度から高度(intermediate-high)または高度(high)の患者とされた。リスクの定義は、核異型度4または肉腫様変化を伴う腫瘍病期2、核異型度にかかわらず腫瘍病期3以上、核異型度・病期にかかわらず所属リンパ節転移を認める、転移巣を切除し残存病変を認めない(NED:no evidence of disease)M1とされた。

主要評価項目は無病生存期間であり、これは無作為化時点から、腎細胞がんの局所もしくは遠隔再発を最初に認めた時点まで、または原因を問わない死亡までの期間である。全生存期間は、無作為化時点から原因を問わない死亡までの期間であり、副次評価項目とされた。

無病生存率はペムブロリズマブ群、プラセボ群のいずれも中央値に達しなかったものの、24カ月時の無再発生存患者の割合は、ペムブロリズマブ群が77.3%、プラセボ群が68.1%と推定される。全生存率に群間差があるかを判断するため、引き続き患者観察が行われているが、さらに追跡調査が必要かもしれないとChoueiri氏は話す。

両群とも大半の患者に1種類以上の有害事象が発現し、グレード3~5の有害事象がみられた患者はペムブロリズマブ群が32.4%、プラセボ群が17.7%であった。ペムブロリズマブの投与に関連した死亡例は報告されなかった。両群で最も頻度が高かった有害事象は疲労、下痢、そう痒であり、両群間のリスク差が最も大きかった有害事象は、甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進、そう痒、発疹であった。割り付けられた群にかかわらず実際に受けた治療で比較するAs treated解析集団では、101人(ペムブロリズマブ群の20.7%)および10人(プラセボ群の2.0%)が、なんらかの原因で有害事象が発現したため試験治療を中止した。

本試験の著者は結論として「われわれが行った試験の結果は、中等度から高度(intermediate-high)および高度(high)の再発リスクを有する患者さんに対し、術後補助免疫療法でのペムブロリズマブの使用を支持するものです」と述べる。

Choueiri氏は今後、どの患者に術後補助免疫療法が必要かを判断できるバイオマーカーを調べるという。「われわれの試験では、手術のみで治癒した可能性が高く術後補助免疫療法を必要としなかった患者さんがいた一方、ペムブロリズマブの投与後もがんが進行した患者さんもいました」。

本試験はMerck & Co., Inc.の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の支援を受けて実施された。

翻訳担当者 伊藤美奈子

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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