ソラフェニブまたはスニチニブによる術後療法は局所進行性腎癌の転帰を改善せず

局所進行性腎癌患者の術後療法にソラフェニブ、もしくはスニチニブを用いるべきではない。これは、連邦政府の資金提供で実施された試験の結果である。ソラフェニブ、もしくはスニチニブを術後投与された患者集団の再発までの平均期間(5.6年)は、プラセボを投与された患者集団(5.7年)と差がなかった。本試験結果は、オーランドで開催される泌尿生殖器癌シンポジウム2015で発表される。

筆頭著者でフィラデルフィア郡ペンシルベニア大学Abramsonがんセンターの准教授Naomi B. Haas医師は、「これらの薬剤は癌の再発を低減しなかったものの、概して、患者の転帰を悪化させたとも考えられなかった」とし、「この試験に登録された患者をさまざまな集団別に解析中であり、収集された患者検体を解析することで、ソラフェニブ、スニチニブにより有益性が得られそうな患者集団サブセットについて重要な情報源を提供してくれるだろう」と語った。

ソラフェニブとスニチニブはVEGF阻害剤で、腫瘍に血液を供給する血管の成長を阻止する薬剤のクラスに属する。両剤は転移性腎癌の治療に広く用いられている。

著者らによると、本試験は再発リスクの高い局所進行性腎癌患者の術後療法としてVEGF阻害剤の有効性を評価する初の、大規模な試験である。現在、局所進行性腎癌患者に対する標準的ケアは頻繁に観察していくことである。

局所進行性腎癌の術後患者1943人をソラフェニブ、スニチニブ、もしくはプラセボ群にランダムに割り付け1年にわたり治療した。腫瘍のサイズや進行段階、リンパ節への転移といった因子に基づくと、全例が再発のリスクが高い患者であった。

中間解析では再発率(約40%)、無病生存期間(5.6~5.7年)が3つすべての治療群で同程度であった。再発と生存を実証するため患者転帰の追跡は継続されている。

Haas医師は、「この試験で収集された多くの患者検体は、腎癌治癒の任務にとって貴重な資源となる。ソラフェニブ、スニチニブが有益となる可能性のある患者を個別に特定するために、また、治療抵抗性と再発についてより見識を深めるために、分子学的な手がかりを提供してくれるだろう」と述べた。

局所進行性腎癌の術後療法は研究が活発な領域である。他のVEGF阻害剤では患者登録が終了した試験がいくつかあり、解析待ちの段階にある。また別のVEGF阻害剤アキシチニブ、mTOR阻害剤エベロリムスを評価する臨床試験も行われており、患者登録が継続中である。免疫療法や他の分子標的薬のアプローチを用いた試験も計画されている。

本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)より資金提供を受けている。

翻訳担当者 川又総江

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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