腎臓がんリスクに関連する50のゲノム領域を新たに同定

概要

腎臓がんの遺伝的感受性に関する新たな解析において、国際研究チームが、腎臓がんの発症リスクに関連する50の新たなゲノム領域を特定した。これらの知見は、腎臓がんの分子的基盤の理解を進め、リスクの高い人々に対する検診の取り組みを周知し、新たな創薬標的を同定するために利用されるであろう。本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である国立がん研究所(NCI)の研究者が主導した。

ヨーロッパ人の祖先を持つ人々を対象とした先行のゲノムワイド関連解析(GWAS)では、腎臓がんリスクと関連するゲノムの13領域が同定された。しかし、この研究対象集団は多様性に欠けていた。さらなる領域を同定するため、研究者らは遺伝的先祖がさまざまである参加者を対象としてGWASを実施した。参加者の内訳は、腎臓がんを有する人29,020人、腎臓がんではない人835,670人であった。公表されている研究、バイオバンク、そして今回の研究から得られたデータを解析した結果、腎臓がんの発症リスクと関連する領域として新たに50領域が同定され、そうした領域は合計して63となった。

新たに同定された遺伝子変異の中には、腎細胞がんでは2番目に多い種類である乳頭状腎細胞がんの発症リスクと関連するものがいくつかあった。また、VHL遺伝子にみられる別の変異はアフリカ系の人々に多く、腎臓がんの中で最も多い淡明型腎細胞がんの発症リスクが推定3倍高いことと関連していた。

最終的に研究者らは、この研究データを用いて、個人が腎臓がんを発症する全体的なリスクを示す指標(多遺伝子リスクスコアまたはポリジェニックリスクスコア)を開発した。この指標は、高血圧、喫煙、体格指数高値などの確立されたリスク因子と組み合わせて、腎臓がんの早期発見につなげられる可能性がある。

研究者

Mark P. Purdue博士(NCI、がん疫学・遺伝学部門)

研究

2024年4月26日付Nature Genetics掲載
「Multi-ancestry genome-wide association study of kidney cancer identifies 63 susceptibility regions(さまざまな祖先をもつ人々を対象とした腎臓がんゲノムワイド関連解析により63の感受性領域が同定される)」

  • 監訳 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/04/26

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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