一部の転移性腎臓癌患者で完全奏効を示す分子標的薬

キャンサーコンサルタンツ

一部の転移性腎臓癌患者は、スーテント(スニチニブ)あるいはネクサバール (ソラフェニブ)での治療後、完全奏効(検出可能な癌の完全消失)を示した。しかしながら、研究者らは、どの患者群が完全奏効を示す可能性が最も高いかを予測することは不可能である。これらの研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された。

米国では、毎年58000人以上が腎臓癌と診断されている。腎細胞癌は腎臓癌の最も一般的な型である。

転移性腎細胞癌(体の他の部分に転移した癌)を持つ人々にとって、スーテントやネクサバールなどの標的療法は、治療において重要な役割を果たしうる。人々がこれらの治療で効果がみられる場合には、通常、部分奏効(検出可能な癌の縮小)である。完全奏効はあまり多くはないが、報告されている。

完全奏効の予測因子と転帰を調べるために、フランスおよびスイスの研究者らは、64人の転移性腎臓癌患者について検討した。すべての患者は、スーテントあるいはネクサバールによる治療により、完全奏効を示していた。薬剤は単独投与、または手術や放射線療法などの局所治療と併用された。

主な試験実施施設において、完全奏効は、スーテントやネクサバールで治療を受けたすべての患者の2%未満にすぎなかった。

  • 研究者らは、治療での完全奏効に関連する臨床的あるいは生物学的特性を識別し得なかった。したがって、どのような転移性腎臓癌患者が、スーテントまたはネクサバールで完全奏効する可能性が最も高いかを予測することはまだできていない。
  • 完全奏効した後、一部の患者群はスーテントまたはネクサバールによる治療を継続し、一部は継続しなかった。再発は両群(治療を継続した群と継続しなかった群)で生じた。対象患者が少数のため、継続的治療が再発の可能性を減少させるかどうかを判断することはできなかった。
  • 治療を中止した患者群では、8カ月間の経過観察後、半数よりわずかに多く(55%)の患者が、再発しなかった。

これらの研究結果は、スーテントまたはネクサバールで完全奏効した患者の経験を示している。一部の患者は、完全奏効後に再発したが、完全奏効後にスーテントまたはネクサバールを継続することが、再発のリスクを軽減するかどうかについては明らかになっていない。

参考文献:

Albiges L, Oudard S, Negrier S et al. Complete remission with tyrosine kinase inhibitors in renal cell carcinoma. Journal of Clinical Oncology. 2012;30:482-287.


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翻訳担当者 伊藤実花

監修 辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)

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