進行尿路上皮がんの一次化学療法後、免疫療法アベルマブが全生存を改善

ASCOの見解

「進行性尿路上皮がんは、化学療法による一次治療後に再発しやすい特徴があります。本試験は、進行性尿路上皮がんに対して、全生存期間のこれまでで最長の延長を示しました。維持療法としてのアベルマブは、再発までの期間を有意に延長しました」と米国臨床腫瘍学会(ASCO)会長Howard A. Burris III 医師(FACP、FASCO:学会で評価された医師に与えられる称号)は語った。

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バージニア州アレクサンドリア -進行性尿路上皮がん患者を対象にしたJAVELIN Bladder 100試験において、化学療法後のアベルマブと支持療法(ベストサポーティブケア、BSC)の併用は、支持療法のみの場合と比較して、全生存期間を有意に延長した。本試験の結果は、2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のバーチャル科学プログラムで発表される予定である。

試験概要

【主題】切除不能な局所進行または転移性の尿路上皮がん患者を対象とした維持療法としてのアベルマブ

【対象】化学療法が奏効した患者700人

【調査結果】アベルマブは支持療法と比較して全生存期間を7.1カ月改善した

【意義】一次化学療法後の維持療法としてアベルマブの使用を支持

本試験の結果は、進行性尿路上皮がんの維持療法として、これまでで最長の生存延長を示している。膀胱がんは、全米がん死亡要因の上位10位に入るがん種である。アベルマブは転移性疾患への有効性がすでに確認されているが、本試験は一次化学療法後フロントライン治療としての有効性データを初めて示すものである。

維持療法は免疫チェックポイント阻害薬を使用する上で興味深いタイミングです。患者は化学療法を経て、疾患がコントロールされている状態です 」と筆頭著者であり、ロンドンのバーツがんセンター所長で、泌尿器腫瘍学教授である、Thomas Powles医師は述べる。「しかし、化学療法後に疾患が進行するのを待つのではなく -進行尿路上皮がん患者に起こりやすいのですが – アベルマブを追加することによって、生存期間が大幅に延長します」

アベルマブと支持療法を併用した場合は全生存期間中央値が21.4カ月であったのに対し、支持療法のみの場合は14.3ヵ月であった。

研究者らはまたプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)陽性腫瘍患者における奏効性も検証した。この患者群において、アベルマブおよび支持療法併用群では、全生存期間が有意に延長し、全生存期間中央値は未到達である。支持療法単独群においては、全生存期間中央値は、17.1カ月であった。

さらに、全患者およびPD-L1陽性腫瘍患者どちらの患者集団においても、アベルマブおよび支持療法併用群は支持療法単独群と比較して無増悪生存期間を延長した。

グレード3以上の有害事象は、アベルマブと支持療法を受けた患者の47.4%、支持療法のみを受けた患者の25.2%で報告された。グレード3以上の有害事象で最も多かったのは、尿路感染症、貧血、血尿、疲労、背部痛だった。

本試験について

本ランダム化第3相試験の対象となったのは、化学療法(ゲムシタビンと、シスプラチンまたはカルボプラチンのいずれかとの併用療法)後に病勢の進行が認められなかった切除不能な局所進行性または転移性の尿路上皮がん患者であった。試験には700人の患者が登録され、350人がアベルマブの維持療法と支持療法の併用群へ、350人が支持療法のみの群へ無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は19ヵ月以上であった。患者の過半数(51%)の腫瘍がPD-L1陽性だった。

アベルマブは免疫チェックポイント阻害薬であり、がん細胞表面に発現するタンパク質(この場合はPD-L1)を阻害することにより作用する。このタンパク質はがん細胞が免疫系から逃れるのを助けるが、アベルマブがこのタンパク質をブロックすることにより、免疫系はがん細胞を識別し、攻撃しやすくなる。

「尿路上皮がんにおいては、PD-L1の高い発現が認められ、遺伝子変異量が多い傾向があります。免疫療法の奏効率はかなり高いのです」とPowles医師は述べた。「つまり、免疫チェックポイント阻害薬が尿路上皮がんに非常に有効である可能性があります」

次のステップ

対照(支持療法)群の患者はアベルマブおよび支持療法併用群へのクロスオーバーを許されていた。研究者たちは、効果がどれだけ維持されるかを確認するため、追跡調査を行う予定である。

資金提供 この研究はPfizer((Merck KgA)から資金提供を受けた。

翻訳担当者 為石 万里子

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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原文掲載日 

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