FDAが転移尿路上皮がんにエンホルツマブ ベドチンを迅速承認

2019年12月18日、米国食品医薬品局(FDA)は、抗PD-1抗体薬または抗PD-L1抗体薬による治療歴があり、術前または術後化学療法として、あるいは局所進行または転移した状態において白金製剤による治療歴のある局所進行または転移尿路上皮がんを有する成人患者に対して、エンホルツマブ ベドチン[enfortumab vedotin-ejfv](販売名: PADCEV、Astellas Pharma US, Inc.社)を迅速承認した。

エンホルツマブ ベドチンは、ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体として初めてFDAの承認を取得した。

多施設共同単群試験であるEV-201試験(NCT03219333)において、抗PD-1抗体薬または抗PD-L1抗体薬による治療歴および白金製剤による化学療法歴のある局所進行または転移尿路上皮がんを有する患者125人を対象として有効性を検討した。患者に、エンホルツマブ ベドチン1.25 mg/kgを28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に疾患進行または許容できない毒性が認められるまで投与した。

主要有効性評価項目は、RECIST1.1に基づいて盲検独立中央判定が評価した客観的奏効率(ORR)および奏効期間であった。ORRは44%(95%CI:35.1~53.2)であり、このうち完全奏効率は12%、部分奏功率は32%であった。推定奏効期間中央値は7.6カ月(95%CI:6.3~推定不能)であった。

最もよくみられた副作用(20%以上)は、疲労、末梢神経障害、食欲減退、発疹、脱毛症、悪心、味覚異常、下痢、ドライアイ、そう痒症、および皮膚乾燥であった。既存の糖尿病にかかわらず、糖尿病性ケトアシドーシスおよび死亡が、エンホルツマブ ベドチンを投与した患者で発生した。糖尿病または高血糖の患者、またはそのリスクがある患者では、血糖値を綿密に監視する必要がある。

エンホルツマブ ベドチンの推奨用量は1.25 mg/kg(最大用量は125 mgまで)であり、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に30分間かけて疾患進行または許容できない毒性が認められるまで静脈内投与が行われる。

PADCEVの全処方情報はこちらを参照。

本審査には、FDAによる評価の促進を目的として申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用され、本申請はFDAの目標期日の3カ月前に承認された。

本適応は、腫瘍奏効率に基づき、迅速承認制度のもとで承認された。本適応の継続的な承認には、検証的試験における臨床的有用性の検証および説明が条件となる可能性がある。FDAは本申請を優先審査に指定した。また、エンホルツマブ ベドチンは画期的治療薬の指定も受けた。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、企業向けガイダンス「重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(the Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 小石みゆき

監修 花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)

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