GM-CSFを用いた第二世代腫瘍溶解性ヘルペスワクチンが悪性黒色腫の治療に有望

キャンサーコンサルタンツ

2009年12月

国際多施設共同第II相臨床試験で、顆粒球‐マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を用いた第二世代の腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスワクチンの投与を受けた転移悪性黒色腫患者において奏効率が26%であったと、本試験に参加した研究者らが報告した。本試験の詳細は、Journal of Clinical Oncology誌の2009年12月1日号に掲載された [1] 。

デノスマブは完全ヒトモノクローナル抗体であり、骨リモデリングにおける骨悪性黒色腫は免疫療法に反応を示す癌と見なされている。プロロイキン®(Proleukin)(インターロイキン-2)、リンフォカイン活性化キラー(LAK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、遺伝子組換えT細胞など、さまざまな免疫療法が一部の転移悪性黒色腫患者で奏効を示している。また、効果の高いワクチン開発への試みが数多く行われている。

前回のGM-CSFを発現する第二世代の腫瘍溶解性ヘルペスウイルスワクチンに関する第Ⅰ相試験は、各種固形癌患者を対象に実施された。この試験では、OncoVEX-GM-CSFと呼ばれるBioVex社製のワクチン[2]を用いてその安全用量が確立され、悪性黒色腫患者および他の固形癌患者において奏効が認められた。

今回の試験では、転移悪性黒色腫患者50人を対象に、JS1/34.5/47-/GM-CSFと呼ばれる同一のワクチンについて評価された。本試験に参加した患者のうち75%は、1回以上の全身療法で奏効を示さなかった。ワクチンは隔週で最大24回腫瘍結節に注入され、奏効または安定を示した患者については延長試験で投与が継続された。本試験の報告者らは以下の結果を観察した。

全奏効率は26%であった。
患者8人(16%)が完全奏効を示した。
患者5人(10%)が部分奏効を示した。
注入部位および遠位部位で奏効が認められた。
患者10人(20%)では、3カ月以上腫瘍が安定した。
認められた奏効のうち92%は7~31カ月持続した。
上記に加え、2人の患者が術後に完全奏効を示した。

また、初期段階で部分奏効または安定を示した患者のうち2人が、24カ月の追加投与後に完全奏効を示した。

完全生存率は1年目で58%、2年目で52%であった。

コメント:本試験結果は、悪性黒色腫に対するワクチンについて、現時点で最良の結果である。引き続き本試験の結果を確認するための第Ⅲ相試験が実施される予定である。

 参考文献:
[1] Senzer JJ, Kaufman HL, Amatruda T, et al. Phase II clinical trial of a granulocyte-macrophage colony-stimulating factor-encoding, second-generation oncolytic herpesvirus in patients with unresectable metastatic melanoma. Journal of Clinical Oncology. 2009;27:5763-5771.
[2] Hu JC, Coffin RS, Davis CJ, et al: A phase I study of OncoVEXGM-CSF, a second-generation oncolytic herpes simplex virus expressing granulocyte macrophage colony-stimulating factor. Clin Cancer Res. 12:6737?6747, 2006.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved. These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein. Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc. 本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。 Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 菅原 宣志

監修 金田 澄子(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

皮膚がんに関連する記事

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認の画像

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocy...
進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測かの画像

進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か

米国がん学会(AACR)ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メ...
MDアンダーソンによるASCO2023発表の画像

MDアンダーソンによるASCO2023発表

MDアンダーソンがんセンター(MDA)急性リンパ性白血病(ALL)、大腸がん、メラノーマ、EGFRおよびKRAS変異に対する新規治療、消化器がんにおける人種的格差の縮小を特集
テキサス大...
軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効の画像

軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効

MDアンダーソンがんセンター
髄腔内および静脈内への同時投与により一部の患者の転帰が改善
髄腔内(IT)の免疫療法(髄液に直接投与)と静脈内(IV)の免疫療法を行う革新的な方法は、安全であり、かつ、転移性黒色腫(メラノーマ)に起因する軟髄膜疾患(LMD)患者の生存率を上昇させることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者による第1/1b相試験の中間解析によって認められた。