イピリムマブが切除不能/転移性メラノーマ小児患者に承認

イピリムマブは、小児患者と成人患者で一貫した安全性プロファイルおよび同等の薬剤濃度を示した。

トピック:特定の状況におけるがん/メラノーマ(悪性黒色腫)および他の皮膚がん/がんの免疫および免疫療法

2017年7月24日、Bristol-Myers Squibb社は、米国食品医薬品局(FDA)が静脈内投与用のイピリムマブ(ヤーボイ)の適応を12歳以上の切除不能または転移性メラノーマ(悪性黒色腫)小児患者に拡大すると発表した。

イピリムマブについて、小児患者を対象とした2つの臨床試験で評価した。すなわち、再発性または難治性固形がんを有する2~21歳の患者33人を対象とする用量設定試験、および、治療歴がある、または青年期(12〜16歳)の未治療切除不能III/IV期メラノーマ患者12人を対象とする非盲検単群試験である。

小児および青年におけるイピリムマブの全体的な安全性プロファイルは、成人での安全性プロファイルと一致したが、成人および12歳以上の小児患者との間で疾患の性質が類似しているため、データの外挿が可能であった。

母集団薬物動態解析によると、90分間かけて3週間ごとに計4回静脈内投与を実施した場合、12歳以上の青年患者での曝露は、承認されている投与量3 mg/kgにおける成人での曝露と同程度であった。

イピリムマブには枠組警告があり、重症または致命的な免疫介在有害反応を引き起こす可能性がある。

これらの免疫介在反応は、臓器系に影響を及ぼす可能性があるのだが、最もよくみられる重症の免疫介在有害反応は、腸炎、肝炎、皮膚炎(毒性表皮壊死など)、神経障害および内分泌障害である。

「転移性メラノーマは、小児および青年期では非常にまれであるため、臨床試験での研究は特に困難です。

小規模な小児患者集団の臨床試験を設計するのは難しいかもしれませんが、この研究者グループは、治療が必要な人々に新しい治療法を提供することに尽力しました」と、コロラド州コロラド大学医学部小児病院のLia Gore医師は、同席したプレスリリースで述べた。

「イピリムマブの承認は長期的努力の集大成であり、医師は若年成人の転移性メラノーマ患者の治療のために、医学で最も胸躍る領域の一つである腫瘍免疫学 を拡大させることができるようになります」。

12歳以上の転移性メラノーマ患者に対するイピリムマブのFDA承認は、Bristol-Myers Squibb社初の腫瘍免疫学 における小児適応症である。

今回の拡大適応は、最初の承認以来、転移性メラノーマの成人患者38,000人以上の治療に用いられてきたイピリムマブの6年間の実績に基づいている。

小児患者でのイピリムマブ試験について

イピリムマブは、2つの臨床試験において計45人の小児患者で評価が行われた。

イピリムマブの安全性と効果が、12歳以上の小児患者で確立された。

この年齢群でのイピリムマブの使用は、成人でのイピリムマブの十分かつ適切な対照試験、ならびに小児と成人とで用量3 mg/kgでの曝露が同等であることを示す集団薬物動態学的データからのエビデンスに裏付けられている。

さらに、進行メラノーマの腫瘍生態と経過が成人患者と12歳以上の小児患者の間で十分に類似しているため、成人から小児患者へのデータ外挿が許容された。

用量設定試験では、小児の再発性または難治性の固形がん患者33人でイピリムマブを評価した。

本試験に登録された患者の年齢は2~21歳であり、中央値は13歳であった。患者のうち20名は12歳以上であった。

イピリムマブは、用量1、3、5、10 mg/kgを90分間かけて投与する3週間ごとの静脈投与を4回行い、その後、疾患進行または治療中止に至るまで12週間ごとに静脈内投与された。

イピリムマブについて、12歳以上の、治療歴がある、または未治療の切除不能なIII期またはIV期のメラノーマ小児患者12人において、非盲検単群試験でも評価した。

患者は、イピリムマブを90分間かけて3 mg/kg(4人)または10 mg/kg(8人)投与する3週間ごとの静脈投与を4回受けた。

両試験で、イピリムマブの投与を受けた12歳以上の患者17人のうち、2人が客観的奏効を示し、そのうち1人の部分奏効は16カ月持続した。

小児の切除不能または転移性メラノーマ患者に対するイピリムマブの承認用量は3 mg/kgであり、90分間かけて投与する3週間ごとの静脈投与を計4回行う。

集団薬物動態解析について

成人患者を対象とした第2相の4試験(521人)および小児を対象とした2試験(44人)、計565人からの利用可能な蓄積データを用いた集団薬物動態解析によれば、イピリムマブの体重標準化クリアランスは、成人患者と小児患者の間で同等であった。

Bristol-Myers Squibb社のプレスリリースには、将来の見通しに関する記述が含まれている。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/九州大学病院 呼吸器科)

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