PD-1阻害剤ペムブロリズマブが進行黒色腫患者の長期生存に有用性を示す

早期試験における36カ月時点の患者の全生存率データの初回報告

注釈:要約には抄録にはない最新のデータが含まれる

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解

「PD-1を阻害する新規治療は多くの患者の生存期間を延長し、一部の患者では進行メラノーマと診断された後でもこれまで以上の生存期間の延長効果を期待できるかもしれません。これらの治療により、ほんの数年足らずで、メラノーマや他の多くの治療困難ながん患者の予後が大きく変化しました」と、本日の報道会見の広報担当者および議長で、米国内科学会名誉上級会員(FACP)のDon S. Dizon医師は述べた。

進行悪性黒色腫(メラノーマ)と新たに診断された患者およびすでに治療を受けたことがある患者が参加した第1b相臨床試験(KEYNOTE-001)の長期追跡結果から、患者の40%はpembrolizumab[ペムブロリズマブ]投与開始後3年間生存し、両群の36カ月時点の全生存率は同等であることが示された。本日の報道会見にて取り上げられた当該研究はシカゴで開催される2016年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会にて発表される予定である。

KEYNOTE-001の結果に基づき、ペムブロリズマブは米国の迅速承認プログラムの下、2014年9月に進行メラノーマの適用で初めて承認された。追加の臨床研究(KEYNOTE-002およびKEYNOTE-006)においても、ペムブロリズマブは進行メラノーマ患者に対し、化学療法またはイピリムマブと比較して、生存に有益であることが示されている。

特に、本研究の患者の15%は免疫関連効果判定基準に基づく完全寛解が認められ、これらの患者のうち89%は寛解状態を維持した。イピリムマブが生存期間を延長させる初の薬剤として承認された2011年以前は、進行メラノーマ患者の全生存期間の中央値は1年未満であった。

「進行メラノーマは依然として非常に治療困難ながんであるので、本治療が大多数の患者の長期生存率に有用であることは注目に値します。本研究の結果はペムブロリズマブ治療によるさらなる長期の有用性の可能性を示しています」と、フランス、パリのthe Dermatology Unit at the Institut Gustave-Roussyの長であり、研究の筆頭著者であるCaroline Robert医学博士は述べた。

本研究について

第1相試験には進行メラノーマと診断された患者655人が参加した。患者の75%はイピリムマブなどの他の治療を以前に受けていた。参加者は3週に1回、2 mg/kgまたは10 mg/kgのペムブロリズマブ投与、あるいは2週に1回、10 mg/kg のペムブロリズマブ投与を受けた。試験期間中、3週に1回、2 mg/kgが最適用量であると決定された。病勢が進行する、忍容できない毒性が認められるまたは医師の決定により中止されるまで治療が継続された。

主要な結果

ペムブロリズマブ治療患者の3年全生存率は40%、全生存期間の中央値は24.4カ月であった。

しかし、メラノーマに対する前治療の内容により、生存率への影響がわずかにあった。前治療を受けていない患者では、生存率はわずかに高く45%であった。3年生存率は、以前にイピリムマブによる治療を受けたことがある患者と受けていない患者間で同等であった(両群で41%)。ペムブロリズマブの平均治療期間は11.3カ月であった。合計61人(9%)の患者は完全寛解が達成された後、ペムブロリズマブ投与を中止したが、解析時に97%は寛解を維持していた。ペムブロリズマブ中止後も寛解を維持していた患者において、中止後の寛解維持期間の中央値は10カ月であり、現在も継続中である。研究者らによると、この初期の単群臨床試験に基づいて最終的な結論を出すことは難しいが、有望な生存率のデータにより、前治療の有無によらずペムブロリズマブ治療は患者にとって有用であることが示唆された。

全体的に見れば、ペムブロリズマブは忍容性が良好であり、他の大規模臨床試験で確認された安全性や忍容性と一致していた。最もよくみられたペムブロリズマブに関連した有害事象は、疲労(40%)、そう痒(28%)および発疹(23%)であり、患者の8%のみがペムブロリズマブに関連した副作用により治療を中止した。

本研究は米国、ニュージャージー州KenilworthのMerck社から資金援助およびサポートを受けた。

抄録全文はこちらを参照のこと

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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