FDAが術後メラノーマの再発予防にイピリムマブを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

米国食品医薬品局(FDA)は本日、術後のメラノーマ(悪性黒色腫)再発リスクを抑えるため、イピリムマブ[ipilimumab](商品名:ヤーボイ[Yervoy])の適応を拡大し、新たにステージ3メラノーマ患者の術後補助療法薬としての使用を承認した。

メラノーマは皮膚がんのなかで最も悪性度が高く、皮膚がんによる死亡の第一位を占める。メラノーマは、体の他の部位に広がる傾向が他のタイプの皮膚がんよりも強い。米国国立癌研究所(NCI)によれば、メラノーマはここ数十年増加傾向にあり、今年は73,870人が新たに罹患し、9,940人がこの疾患で死亡すると推定されている。ステージ3のメラノーマとは、1個以上のリンパ節に転移を認めるものをいう。ステージ3のメラノーマ患者の治療は、通常、メラノーマの皮膚病変および隣接するリンパ節の手術による切除である。

FDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師は、「本日のイピリムマブの承認は、手術後のメラノーマ再発リスクが高い患者にまで適応を拡大するものです。これまでよりも早期のメラノーマに対する今回のイピリムマブの適応拡大は、免疫系とがんとの相互作用に関するわれわれの理解に基づいています」と話す。

イピリムマブ点滴静注薬は、最初、2011年に切除不能の進行期メラノーマの治療に承認された。イピリムマブは、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)として知られる分子を遮断するモノクローナル抗体である。CTLA-4は免疫系の抑制や阻害に関与していると考えられ、がん性細胞を撃退する免疫系の能力に影響を及ぼしている。イピリムマブは、免疫系がメラノーマ腫瘍細胞を認識し、標的とし、攻撃するのを可能にすることによって作用すると考えられている。

今回の新たな適応に対するイピリムマブの安全性および有効性は、メラノーマの完全切除後に、術後補助療法としてイピリムマブまたはプラセボが投与された患者951人を対象に検討された。試験では、治療からがんが再発するまでに経過した時間(「無再発生存期間」)および全生存期間を測定した。イピリムマブを投与された患者の49%が平均26カ月後に再発したのに対し、プラセボを投与された患者では、62%が平均17カ月後に再発した。全生存期間のデータの解析は未だ実施されていない。

この試験にみられたイピリムマブの最も頻度の高い副作用は、皮疹、下痢、倦怠感、そう痒、頭痛、体重減少、悪心であった。また、イピリムマブは、消化器系、肝臓、皮膚、神経系に、それぞれ副腎皮質ステロイド薬による治療が必要となる自己免疫疾患を引き起こす可能性があり、さらにホルモン産生腺には生涯にわたってホルモン補充療法を要する自己免疫疾患が引き起こされる可能性もある。イピリムマブは胎児の発達に害を及ぼす可能性があり、妊娠中の女性に投与してはならない。

イピリムマブの投与によって致死的な免疫介在性副作用、および重度の副作用を来たす恐れがあるため 、添付文書には枠組み警告を設けている。さらに、患者に向けて医薬品ガイドを作成し、この治療によって起こりうる副作用について伝えることになっている。

イピリムマブは、ニュージャージー州プリンストンのブリストル・マイヤーズ スクイブ社が製造する。

翻訳担当者 中村幸子

監修 小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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