FDAが局所進行基底細胞がんの治療にソニデジブを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

米国食品医薬品局(FDA)は、7月24日、術後や放射線治療後に再発した局所進行基底細胞がんの患者、また、手術や放射線治療が適応とならない同疾患患者の治療薬として、ソニデジブ[sonidegib](商品名:Odomzo)を承認した。

皮膚がんは最も一般的ながんであり、基底細胞がんは非黒色腫皮膚がんの約80%を占める。基底細胞がんは皮膚の最上層(表皮という)で発生し、通常は日光やほかの紫外線に何度もさらされた箇所に発生する。米国国立癌研究所によると、非黒色腫皮膚がんの新たな症例が年々増加している。局所進行基底細胞がんとは、体の他の部位に転移していないが、手術や放射線などの局所療法では治療することができない基底細胞がんのことを指す。

ソニデジブは1日1回投与のカプセル剤であり、ヘッジホッグ経路とよばれる、基底細胞がんで活性化する分子経路を阻害することで効果を現す。同剤には、この経路を抑制することでがん病巣の成長を止める、もしくは縮小できる可能性がある。

FDA医薬品評価研究センターの血液学・腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師は、「がんに関与する分子経路についての理解が高まったことで、以前は治療の選択肢がほとんどなかった治療困難な疾患に対する数多くの抗腫瘍薬剤が承認に至りました。ヘッジホッグ経路への理解が深まったおかげで、FDAはこのわずか3年間で基底細胞がんの治療薬として2剤を承認しました」と述べている。2012年には、局所進行または転移性基底細胞がんに対する初の治療薬としてビスモデギブ[vismodegib](商品名:Erivedge(エリベッジ))が承認されている。

ソニデジブには枠組み警告の記載があり、医療従事者に対し、同剤が妊婦に投与されることで発育している胎児に死亡や重度の先天性欠損が生じる可能性があると警告している。妊娠の有無はソニデジブ投与の開始前に確認し、男女両方の患者に対してこれらのリスクについての注意を促し、効果的な避妊を忠告する必要がある。

ソニデジブの有効性は、多施設二重盲検臨床試験で立証された。この試験では、局所進行基底細胞がんの患者が無作為に割り付けられ、66人に1日200mg、128人に1日800mg が投与された。試験の主要エンドポイントは、腫瘍が部分的に縮小もしくは完全に消失した患者の割合を示す奏効率とした。結果は、ソニデジブを200mg投与された患者の58%で腫瘍が縮小もしくは消失した。この効果は1.9~18.6カ月間持続し、反応があった患者の約半数において、腫瘍縮小効果が6カ月以上持続した。奏効率は、ソニデジブを1日800mg投与した患者においても同様であったが、副作用が多くみられた。

ソニデジブを1日200mg投与した際の最も一般的な副作用は、筋痙攣、脱毛症(脱毛)、味覚異常(味覚の歪み)、疲労、悪心、筋骨格痛、下痢、体重減少、食欲不振、筋痛症(筋肉痛)、腹痛、頭痛、疼痛、嘔吐、そう痒症(かゆみ)である。また、同剤は筋骨格関連の重篤な副作用の原因となる可能性もあり、血清クレアチニンキナーゼ値上昇(筋組織破壊(横紋筋融解症)の報告は希少)、筋痙攣、筋痛症などを引き起こすおそれがある。

ソニデジブは、ニュージャージー州イーストハノーバーに拠点を置くNovartis Pharmaceuticals Corporation社が販売している。ビスモデギブは、カリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置くGenentech社が販売している。

FDAは、連邦政府保健福祉省内に設けられた機関で、国民の健康を増進しこれを守るために医薬品、動物用医薬品、ワクチンおよび生物製剤や医療機器の安全性と有効性の確保に努めている。FDAは、米国の食糧供給の確保や食品安全、化粧品、健康補助食品、電磁波を放出する製品の安全性を保証し、たばこ製品を規制する責務も担っている。

翻訳担当者 白石 里香

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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