がんゲノムアトラス研究によりメラノーマのがん遺伝子解明に進歩
米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート
原文掲載日 :2015年6月18日
致死性の皮膚がんであるメラノーマ(皮膚黒色種)333検体の総合的な遺伝子解析により、本疾患の発生を促進する高頻度に変異したがん遺伝子とその他のゲノム変化の役割について新たな洞察を得た。
がんゲノムアトラス(TCGA)研究ネットワークの研究者らは、どの腫瘍がより悪性で、どの腫瘍が特定の治療法に対してより反応しやすいのかを臨床医が決めるのに役立つであろう分子サブタイプを同定した。この知見から、IDH1、RB1、DDX3X、NF1各遺伝子のタンパク質コード領域の変異によって、メラノーマをBRAF変異型、RAS変異型、NF1変異型、トリプルWT型(3因子に変異のない野生型)の4つのいずれかのサブタイプに分類するのに役立つことが確かめられた。
この分類は、研究者がどの遺伝子が(分子)標的療法に反応するかを特定するために有用であり、また、病気の進行予測のための遺伝子やその他の因子のバイオマーカーを確立するためにも有用であろう。
特にトリプルWT患者では、治療の選択肢として、KIT、PDGFRA、KDR(VEGR2)など、一連の受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の酵素がRTK阻害薬剤との併用療法に反応する可能性があることがこの研究でわかった。また、TCGAの解析では、リンパ節転移のあるメラノーマ患者の予後は腫瘍に浸潤している免疫細胞(リンパ球)の性質と量に影響され、浸潤リンパ球が多いほど生存は長期になることが示唆されており、この洞察はさらに個別化された治療法の決定につながる可能性がある。テキサス大学オースティン校のLynda Chin医師、ヒューストンMDアンダーソン総合がんセンターのJeffrey E. Gershenwald 医師、Chang-Jium Wu博士、Ian Watson 博士らをリーダーとする研究者らは、2015年6月18日、研究成果をCell誌上で発表した。
メラノーマは、欧米諸国ではもっとも多いがんの一つで、米国では1996年から2012年までの発生率が年に1.8パーセントの率で上昇した。早期診断と早期の腫瘍の外科的切除は、限局性疾患の患者には長期生存をもたらすことが多いが、局所に転移のある患者にとっての予後はあまり好ましくない。TCGAは、米国国立衛生研究所(NIH)の機関である国立がん研究所(NCI)と国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)により共同で支援、運営されている。
[画像訳]
転移性メラノーマ細胞
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