ペンブロリズマブはイピリムマブよりも進行性メラノーマの治療に有益

進行性メラノーマ患者の一次治療として米国食品医薬品局(FDA)が承認した2種類の免疫チェックポイント阻害剤を比較した最初のランダム化試験では、ペンブロリズマブ[pembrolizumab](キートルーダ)は全評価項目でイピリムマブ[ipilimumab](ヤーボイ)よりも治療成績が有意に優れていたことが、2015年4月18日から22日にかけて開催された米国がん学会(AACR)年次総会で発表されたKEYNOTE-006第3相試験のデータによって明らかになった。

この研究は、同時にNew England Journal of Medicine誌でも発表されている。

「この研究は、メラノーマの一次治療として2種類の免疫チェックポイント阻害剤を直接比較した最初の臨床試験です」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校ジョンソン総合がんセンターの血液学および腫瘍学教授で腫瘍免疫学プログラム責任者のAntoni Ribas医学博士は言う。「われわれは、800人以上を対象とした16カ国共同臨床試験を開始し、用法用量が異なる2つの抗PD1抗体ペンブロリズマブ群と抗CTLA4抗体イピリムマブ群について検討をしました」。

現在、イピリムマブは転移性メラノーマ患者の一次治療の標準治療薬であり、ペンブロリズマブは腫瘍がイピリムマブまたはBRAF阻害剤に対してもはや奏効しない患者の二次治療薬として承認されている。

「この臨床試験は全統計評価項目を達成しており、ペンブロリズマブが一次治療としてイピリムマブよりも優れていることが明らかになったことを発表することができて光栄です」と博士は言う。

今回の第3相試験の対象となった転移性メラノーマ患者834人のうち66%が治療を受けておらず、79%にPD-L1タンパク質を含む腫瘍が認められた。患者はペンブロリズマブ10 mg/kg2週間または3週間に1回投与する群、イピリムマブ3mg/kgの投与を3週間毎に1回で計4回投与する群に111に無作為に割り付けられた。研究者らは、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST v1.1 )および免疫関連反応基準の2つの基準によって、治療開始後12週目、その後6週間毎に治療効果を評価した。主要評価項目は無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)、副次評価項目は全奏効率(ORR)および安全性とした。

2次中間解析のデータによれば、治療後6カ月の時点で無増悪生存率はペンブロリズマブ群では45%、イピリムマブ群では26%であり、イピリムマブ群の全生存率が75%であったのに対して、ペンブロリズマブ群は約87%であった。全奏効率はペンブロリズマブ群では33%であり、イピリムマブ群では12%であった。

治療後12カ月目では、全生存率は2つのペンブロリズマブ群ではそれぞれ74%および68%であり、イピリムマブ群では58%であった。また、PD-L1陽性腫瘍とPD-L1陰性腫瘍をはじめ、事前に設定されたグループを対象に実施されたサブセット解析では、いずれもイピリムマブ群よりもペンブロリズマブ群の予後の方が優れていた。

薬剤による有害事象はイピリムマブ群(20%)よりペンブロリズマブ群(12%)の方が少なかった。

「このような結果は、ペンブロリズマブのイピリムマブに対する有益性があらかじめ想定していた以上のものであったことを示しています。世界の医薬品規制当局が転移性メラノーマの一次治療としてのペンブロリズマブの承認に向かって速やかに行動を起こされることを望んでいます」とRibas博士は言う。「われわれは、メラノーマ患者の治療の目覚ましい進歩に貢献できたと思います」と博士は付け加える。「がん治療のための免疫系の利用法に関して、われわれの考えが20年前に非常に大きく変化しました。現在、ペンブロリズマブを用いた治療法が患者に有用であるという明らかな証拠があります」。

共著者がこの結果がヨーロッパで実施される治療に影響を及ぼすことを期待

この試験の主任研究者でフランスのパリ国立がんセンター(the Institut Gustave-Roussy)の皮膚科学部門長のCaroline Robert医学博士は言う。「イピリムマブによる治療が成功しなかった後の利用拡大計画に基づく場合を除いて、ペンブロリズマブは、ヨーロッパでは未だに販売されていません。ペンブロリズマブがヨーロッパで転移性メラノーマ患者の一次治療薬となることが待ち望まれており、この結果がその過程を加速させることを望んでいます」。

この研究はMerck社から資金援助を受けた。Ribas博士はMerck社のコンサルタントであり、博士の研究所には報酬が支払われている。また、Robert博士は、Merck Sharp & DohmeMSD)社、Bristol-Myers Squibb社、Roche社、ノバルティス社、グラクソ・スミスクライン社およびアムジェン社の臨時コンサルタントでもあり、各社から報酬が支払われている。

翻訳担当者 木村素子

監修 野長瀬 祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

皮膚がんに関連する記事

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認の画像

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocy...
進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測かの画像

進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か

米国がん学会(AACR)ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メ...
MDアンダーソンによるASCO2023発表の画像

MDアンダーソンによるASCO2023発表

MDアンダーソンがんセンター(MDA)急性リンパ性白血病(ALL)、大腸がん、メラノーマ、EGFRおよびKRAS変異に対する新規治療、消化器がんにおける人種的格差の縮小を特集
テキサス大...
軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効の画像

軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効

MDアンダーソンがんセンター
髄腔内および静脈内への同時投与により一部の患者の転帰が改善
髄腔内(IT)の免疫療法(髄液に直接投与)と静脈内(IV)の免疫療法を行う革新的な方法は、安全であり、かつ、転移性黒色腫(メラノーマ)に起因する軟髄膜疾患(LMD)患者の生存率を上昇させることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者による第1/1b相試験の中間解析によって認められた。