進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か

米国がん学会(AACR)

ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メラノーマ患者の腫瘍に対し、標準的な約3カ月後ではなく、わずか1週間後に画像検査をしたところ、治療効果および無増悪生存期間(PFS)と一致する代謝変化が確認されたことが、米国がん学会(AACR)の学術誌Clinical Cancer Researchで発表された。

がん免疫療法は、多くの悪性腫瘍の標準治療を一変させてきたが、すべての患者に対して治療が奏効するわけではなく、治療により重篤な有害事象が発生することもある。免疫療法を受けた患者は一般的に、治療開始後3カ月前後で経過を観察するために画像検査を受けるが、より最近の臨床試験では3〜6週間後、場合によっては2週間程度で画像検査を行うことの有用性が検討されている。しかし、ペンシルバニア大学病院の放射線科准教授であるMichael D. Farwell医師は、さらに結果を早く観察できるかどうかを調べる研究を計画した。目標は、これらの治療を受けている患者の管理の指針となり、効果が期待できない患者の毒性を回避するための非侵襲的画像バイオマーカーを同定することだった。

Farwell氏らは、がんの検査法として最も一般的で容易に利用可能な18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)PET/CTを用いて、治療開始1週間後に腫瘍に代謝の変化が見られるかどうかで確認できるという仮説を立てた。患者に免疫療法が奏効すれば、活性化した免疫細胞が腫瘍に浸潤するため、スキャン画像では最初にFDG活性の上昇が見られると予想される。Farwell医師はこれを代謝フレア(MF)と呼んでいる。その後、腫瘍が治療に反応するにつれ、腫瘍細胞は死滅して安定した代謝段階に戻り、最後はFDG活性の低下を示す代謝的奏効(MR)で終わる。対照的に、治療に反応しない腫瘍を有する患者は、安定した代謝を維持したままと予想される。

「免疫療法に対する反応は非常に早く、3週間後に画像を撮ってもこのフレアを確認することは難しく、場合によっては既に終わっています。腫瘍が残っていないのです」とFarwell氏は説明した。「1週間後に画像検査を行うもう一つの利点は、かなり短い間隔で反応曲線を観察できることです。もっと長い間隔での経過観察では、非奏効例において腫瘍が成長する時間も長くなり、解析が複雑になります」

この仮説を検証するため、研究者らはペムブロリズマブ投与開始予定の進行メラノーマ患者21人を募集した。本試験では、患者は少なくとも1つの測定可能な病変を有し、抗PD-1療法または抗PD-L1療法による治療歴がないことが条件とされた。FDG PET/CT画像検査は、各患者の治療開始前4週間以内と、ペムブロリズマブ初回投与後約1週間に実施された。2人の患者が両方のスキャンを完了しなかったため、その結果は除外された。

各病変のFDG活性は、最大標準取り込み値(SUVMAX)を用いて測定された。本試験では、腫瘍のSUVMAXが70%を超えて増加したものをMFと定義し、腫瘍のSUVMAXが30%を超えて減少したものをMRと定義した。MFまたはMRは、治療が奏効した患者の55%(11人中6人)、および奏効しなかった患者の0%(8人中0人)で確認された。MFまたはMRは生存期間の延長とも相関し、MF-MR群では83%が全生存期間3年であったのに対し、代謝安定群では62%であった。さらに、PFSの中央値はMF-MR群で38カ月以上だったが、代謝安定群で2.8カ月だった。

Farwell氏らは、患者間で奏効の速度に不均一性があること、さらに同一患者においても病変間で不均一性があることを観察した。これはFarwell氏が今後の研究で取り組みを考えている課題である。さらに腫瘍はMF反応とMR反応の間に安定した代謝段階を通過するため、安定した代謝を示す腫瘍が実際には反応しているが、反応段階の間にあるのかどうかを識別することが鍵となる。Farwell氏によれば、その解決策として血液検査、CD8 PETスキャン、連続FDG PET/CT画像検査などを併用して研究に含めることで、経時的変化をより明確にすることが考えられるという。

「この結果は検証の必要がありますが、広く適用できる可能性があり、奏効している患者には治療の漸減や手術の回避、治療の漸増が必要な非奏効者の同定、治療が有効かどうかを検証するための第I相臨床試験に使用できる可能性があります」とFarwell氏は説明した。

本研究の限界としては、1施設での比較的小規模なサンプルであり、病勢が安定している患者が含まれていないことが挙げられる。また、治療前の患者の最初の画像検査から治療開始後の画像検査までの間隔にばらつきがあった。さらにPET/CTにおいて4つの異なるスキャナーが使用されており、SUV測定にばらつきがでた可能性もある。

本研究は以下の団体より資金提供を受けた。the Investigator Studies Program of Merck Sharp & Dohme LLC, ImaginAb, the National Cancer Institute of the National Institutes of Health (including the Specialized Program of Research Excellence (SPORE) in Skin Cancer), the RSNA Resident/Fellow Research Grant, the Tara Miller Melanoma Foundation, the Melanoma Research Alliance, the David and Hallee Adelman Immunotherapy Research Fund, the Parker Institute for Cancer Immunotherapy Bridge Scholar Award。Farwell氏はまた、Bristol Myers Squibb及び Carisma Therapeutics、Abcuro, Inc. から、本研究以外での個人への助成を受けたことを報告している。

  • 監訳 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)
  • 翻訳担当者 片瀬ケイ
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  • 原文掲載日 2024/01/24

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