ダブラフェニブのFDA承認

商品名:Tafinlar

・BRAF V600E または BRAF V600K変異を有する切除不能または転移性メラノーマの治療としてdabrafenibとトラメチニブの併用療法を承認(2014年1月10日)

・BRAF V600E変異を有する切除不能または転移性メラノーマの治療としてダブラフェニブを承認(2013年5月29日)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。


BRAF V600E または BRAF V600K変異を有する切除不能または転移性メラノーマの治療としてdabrafenibとトラメチニブの併用療法を承認

2014年1月10日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDA承認の検査法によって検出されたBRAF V600E またはV600K変異を有する切除不能または転移性メラノーマ患者の治療として、トラメチニブ(Mekinist錠、グラクソ・スミスクライン社)とダブラフェニブ(Tafinlarカプセル剤、グラクソ・スミスクライン社)の併用療法を迅速承認しました。

トラメチニブは2013年、BRAF V600EまたはV600K変異陽性の切除不能または転移性メラノーマの治療に対し、単剤として承認を受けました。ダブラフェニブも同年、BRAF V600E変異陽性の切除不能または転移性メラノーマの治療に対し、単剤として承認を受けました。トラメチニブおよびダブラフェニブは、RAS/RAF/MEK/ERK経路の異なる2種のチロシンキナーゼを標的としています。

この併用療法の承認は、BRAF V600Eまたは V600K変異が認められ組織学的にIIIC期またはIV期のメラノーマと診断された患者162人を対象とした多施設共同、非盲検、ランダム化、実薬対照、用量範囲探索試験で持続的な客観的奏効が示されたことに基づくものでした。過去に受けた化学療法やインターロイキン-2による治療は1回のみ認められました。BRAF阻害薬またはMEK阻害薬の投与を過去に受けた患者は除外されました。

患者は以下3つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられました。

・1日1回トラメチニブ2mg+1日2回ダブラフェニブ150mgを経口投与する併用群(n=54)
・1日1回トラメチニブ1mg+1日2回ダブラフェニブ150mgを経口投与する併用群(n=54)
・1日2回ダブラフェニブ150mgを経口投与する単剤群(n=54)

被験者となった患者162人のうち、57%が男性で年齢中央値は53歳でした。全患者において治療前のECOG-PSが0または1であり、67%はM1c病期、81%は切除不能または転移性メラノーマに対する抗癌治療を過去に受けていませんでした。各施設、または中央での検査において、全患者にBRAF V600E変異(85%)またはV600K変異(15%)を有する腫瘍組織がみられました。

治験医師によって評価された客観的奏効率および奏効期間は、トラメチニブ2mg+ダブラフェニブ併用群ではそれぞれ76%(95% CI: 62~87)および10.5カ月(95% CI: 7~15)であったのに対し、ダブラフェニブ単剤群ではそれぞれ54%(95% CI: 40~67)および5.6カ月(95% CI: 5~7)でした。客観的奏効率は、BRAF V600変異のサブタイプであるV600EおよびV600Kによって層別化されたサブグループと同等でした。盲検的独立中央評価に基づいた客観的奏効率の解析結果は、治験医師による評価結果と一致していました。

皮膚扁平上皮癌(皮膚に発生する扁平上皮癌やケラトアカントーマなど)の発症率は、この試験の安全性の主要評価項目であり、トラメチニブ2mg+ダブラフェニブ併用群で7%(95% CI: 2~18)であったのに対し、ダブラフェニブ単剤群では19%(95% CI: 9~32)でした。

トラメチニブ+ダブラフェニブ併用群で最も多く(20%以上)みられた副作用は、発熱、悪寒、倦怠感、発疹、悪心、嘔吐、下痢、腹部痛、末梢性浮腫、咳嗽、頭痛、関節痛、寝汗、食欲不振、便秘、筋痛でした。最も多く(5%以上)みられたグレード3および4の有害事象は、急性腎不全、発熱、出血、背部痛でした。

トラメチニブ+ダブラフェニブ併用群でみられた重大な副作用は、出血、静脈血栓塞栓症、新たな原発性悪性腫瘍、重度の発熱、心筋症、重大な皮膚毒性、網膜色素上皮剥離などの眼疾患でした。

この迅速承認は、トラメチニブ+ダブラフェニブ併用療法の臨床的有益性を証明するため現在実施されているMEK115306試験の結果を条件としています。MEK115306試験は、BRAF V600EまたはV600K変異陽性の切除不能(IIIC期)または転移性(IV期)皮膚メラノーマ患者約340人を対象として、一次治療としてのダブラフェニブ+トラメチニブの併用とダブラフェニブ+プラセボの併用を比較している国際多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。主要評価項目は無増悪生存期間であり、全生存期間は重要な副次的評価項目です。

トラメチニブ+ダブラフェニブ併用療法の推奨投与量および投与スケジュールは、1日1回トラメチニブ2mg+1日2回ダブラフェニブ150mgを経口投与することであり、疾患進行または許容できない毒性がみられるまで続けられます。トラメチニブおよびダブラフェニブは、少なくとも食前1時間以上または食後2時間以上あけて投与する必要があります。トラメチニブの1日1回投与はダブラフェニブの1日2回投与のいずれかと同時に行うことが可能です。
******************
寺本瑞樹 訳
吉原 哲 (血液内科・コロンビア大学CCTI)監修 
******************


BRAF V600E変異を有する切除不能または転移性メラノーマの治療としてdabrafenibを承認

2013年5月29日、米国食品医薬品局(FDA)が承認した検査で検出されるBRAF V600E変異をもつ切除不能または転移性メラノーマ患者の治療薬としてダブラフェニブ(Tafinlar™カプセル、GlaxoSmithKline LLC社)をFDAは承認しました。
ダブラフェニブは腫瘍を促進させる潜在リスクがあるため、BRAF野生型の患者の治療には適応されません。
この承認と同時に、FDAはBRAF V600E変異を検出するためのTHxID BRAFアッセイ(bioMerieux, Inc社)を承認しました。

国際共同、多施設、ランダム化(3:1)、実薬対照、非盲検試験において無増悪生存期間(PFS)の改善効果が実証されたことに基づいてダブラフェニブは承認されました。
本試験では、中央化された検査に基づいてBRAF V600E変異陽性が確認され、以前に治療を受けたことがなく、組織学的に確認された切除不能ステージIIIあるいはIVのメラノーマを有する患者250人を登録しました。
患者は1日2回、経口投与のダブラフェニブ 150mg (n=187)、あるいは、3週間に1回、静脈内注射のダカルバジン 1000 mg/m2(n=63)に無作為に割り付けられました。
病状の進行が見られた場合は、ダカルバジン群に無作為に割り付けていた28人の患者にもダブラフェニブを投与しました。

試験に登録された250人の患者の内、60%は男性で、年齢の中央値は52歳、67%がECOG performance statusが0であり、66%がM1c(遠隔転移が見られる)に該当しました。

無作為に割り付けられたダカルバジン群と比較して、ダブラフェニブ群において、研究者により評価されるPFSの統計学的に有意な延長が示されました[HR 0.33 (95% CI: 0.20~0.54); p < 0.0001, stratified log-rank test]。
PFSの中央値はダブラフェニブ群で5.1ヵ月、ダカルバジン群で2.7ヵ月でした。
独立機関による盲検化をうけた中央判定に基づいたPFS解析結果は、研究者の結果と一致しました。
研究者評価の客観的奏効率はダブラフェニブ 群で完全奏効率3%を含む52%(95% CI: 45~59)であり、ダカルバジン群では17%(95% CI: 9~29)でした。
奏効期間の中央値は両治療群で約5ヵ月でした。
両治療群間で全生存期間に統計学的に有意な差は見られませんでした。
ダブラフェニブ群で最もよく見られた(20%以上の発生率)副作用は角化症、頭痛、発熱、関節痛、乳頭腫、脱毛症、手掌足底感覚異常症でした。

重大な副作用は新規の原発性皮膚癌(皮膚扁平上皮癌、新規の原発性メラノーマ、角化棘細胞腫)、入院を必要とする発熱性薬物反応、高血糖、ブドウ膜炎/虹彩炎でした。
これらの重大な潜在リスクを患者に知らせるMedication Guide付きでダブラフェニブは承認されました。

ダブラフェニブの推奨用量、用法は病状の進行あるいは許容できない毒性が見られるまでの150mg、1日2回投与になります。
ダブラフェニブは食事の1時間以上前、あるいは2時間以上後に服用するべきです。
BRAF 野生型のメラノーマ患者では腫瘍促進の潜在リスクがあるため、ダブラフェニブの投与を開始する前にBRAF V600E変異の存在を確認することが必要です。

******************
下野龍太郎 訳
野長瀬  祥兼(腫瘍内科・近畿大学医学部付属病院)監修 
******************

この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

皮膚がんに関連する記事

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認の画像

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocy...
進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測かの画像

進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か

米国がん学会(AACR)ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メ...
MDアンダーソンによるASCO2023発表の画像

MDアンダーソンによるASCO2023発表

MDアンダーソンがんセンター(MDA)急性リンパ性白血病(ALL)、大腸がん、メラノーマ、EGFRおよびKRAS変異に対する新規治療、消化器がんにおける人種的格差の縮小を特集
テキサス大...
軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効の画像

軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効

MDアンダーソンがんセンター
髄腔内および静脈内への同時投与により一部の患者の転帰が改善
髄腔内(IT)の免疫療法(髄液に直接投与)と静脈内(IV)の免疫療法を行う革新的な方法は、安全であり、かつ、転移性黒色腫(メラノーマ)に起因する軟髄膜疾患(LMD)患者の生存率を上昇させることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者による第1/1b相試験の中間解析によって認められた。