アスピリンは女性における悪性黒色腫のリスクを軽減する

キャンサーコンサルタンツ

Cancer[1]にて発表された試験結果によると、定期的にアスピリンを摂取する女性は悪性黒色腫の発現リスクが軽減される。さらには、アスピリンを摂取する期間が長ければ長いほど、リスクがさらに減少する。

毎年100万人以上の新規皮膚癌の診断の中に、およそ68,000人の悪性黒色腫患者が含まれており、アメリカでは、毎年8,000人以上が悪性黒色腫により死亡している。悪性黒色腫が危険なのは、他の種類の皮膚癌と比較しても、体の他の部位へ広がる傾向が強いこと(転移)である。悪性黒色腫の治療法は進歩してきてはいるが、それでもなお本疾患のコントロールは難しい。結果として、悪性黒色腫の予防がいまだに重要な目標である。

これまでの研究から、NSAIDが腫瘍に対して防御的な効果をもつ可能性が示唆されており、近年の研究ではアスピリンの常用が癌の発生率と死亡率に寄与していることがわかったが[2]、NSAIDが悪性黒色腫のリスクに及ぼす影響には整合性が認められなかった。

研究者らは、女性の健康イニシアチブ(WHI)の観察研究(OS)のデータを解析し、アスピリンとアスピリン以外のNSAIDの使用についても、50歳から79歳で閉経後の59,806人の女性を対象として比較した。

平均12年の追跡期間中央値において、548人の女性で悪性黒色腫が確認された。試験解析によりアスピリンを定期的に摂取している女性において、悪性黒色腫のリスクが、非アスピリン使用者と比較して21%少ないことが示唆された。アスピリンの防御的効果の上昇は時間的相関性があった。本研究者によれば、1年で11%のリスク減少、1年から4年で21%のリスク減少があり、5年以上では30%にも及ぶことがわかった。アスピリン以外のNSAIDの使用は悪性黒色腫のリスク減少に寄与していなかった。

本研究者は、閉経後の女性における定期的なアスピリン摂取は悪性黒色腫のリスクを著明に減少すると結論づけた。また、研究者らはアスピリンが悪性黒色腫の発現に対して化学的予防効果を持つ可能性があるとの仮説をたてた。更なる研究が必要とされる。

参考文献:

[1] Gamba CA, Swetter SM, Stefanick ML, et al. Aspirin is associated with lower melanoma risk among postmenopausal Caucasian women. Cancer. Published early online March 11, 2013: DOI: 10.1002/cncr.27817.
[2] Rothwell PM, Price JF, Fowkes FGR et al. Short-term effects of daily aspirin on cancer incidence, mortality, and non-vascular death: analysis of the time course of risks and benefits n 51 randomised controlled trials. Lancet. Early online publication March 21, 2012.


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翻訳担当者 藤平あや

監修 東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院・総合内科)

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