メラノーマ治療薬vemurafenib、一部の患者で二次性皮膚癌発生を促進

キャンサーコンサルタンツ

Zelboraf(vemurafenib)は、BRAF遺伝子変異を有する進行したメラノーマ患者の治療結果を改善するが、同時に一部の患者において扁平上皮癌の増殖を促進する。これらの二次性発癌の原因を検討する試験が、New England Journal of Medicine誌で発表された。この知見は、二次性皮膚癌発生のリスクを低下させる一方、メラノーマに対してZelborafの効果を維持する治療につながる可能性がある。

毎年、100万以上の皮膚癌の新しい診断のうち、およそ68,000人がメラノーマである。米国では、8,000人以上が、毎年、メラノーマで死亡する。メラノーマは、他の皮膚癌よりも、身体の他の部位まで拡大(転移)しやすいことから非常に危険である。

より個別的かつ有効な癌治療を提供するために、多くの研究は、癌細胞の増殖または生存に関係する特異的な経路を決定することに集中してきた。BRAF遺伝子が細胞増殖に何らかの役割を果たすことが知られているが、いくつかの癌においても、BRAFの変異がよくみられる。進行期メラノーマの約半分は、V600Eとして知られる特異的なBRAF変異を有する。Zelborafは、この変異遺伝子によって生じるタンパク質の作用を阻止することにより、細胞増殖を阻害する。

ZelborafのようなBRAF阻害薬で治療された患者は、二次性皮膚扁平上皮癌を発症する率が高いことが報告されている。この理由を解明するために、研究者は、Zelborafで治療中に扁平上皮癌を発症したメラノーマ患者から採取した腫瘍サンプルを調べた。

  • 二次性扁平上皮癌のおよそ60%に、RAS遺伝子の変異があった。これらRAS変異は、以前に日光曝露によって起きた皮膚損傷の結果であると考えられる。Zelborafは、既にRAS変異を有していた皮膚細胞に生じた扁平上皮癌の増殖を促進するように見える。

現在、研究者は、Zelborafともう1種類の薬剤を併用することを検討している。目標は、二次性皮膚癌の発生を減少させながら、メラノーマに対するZelborafの効果を維持することである。

参考文献:
Su F, Viros A, Milagre C et al. RAS mutations in cutaneous squamous-cell carcinomas in patients treated with BRAF inhibitors. New England Journal of Medicine. 2012;366:207-15.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 有田香名美

監修 廣田 裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

皮膚がんに関連する記事

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認の画像

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocy...
進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測かの画像

進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か

米国がん学会(AACR)ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メ...
MDアンダーソンによるASCO2023発表の画像

MDアンダーソンによるASCO2023発表

MDアンダーソンがんセンター(MDA)急性リンパ性白血病(ALL)、大腸がん、メラノーマ、EGFRおよびKRAS変異に対する新規治療、消化器がんにおける人種的格差の縮小を特集
テキサス大...
軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効の画像

軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効

MDアンダーソンがんセンター
髄腔内および静脈内への同時投与により一部の患者の転帰が改善
髄腔内(IT)の免疫療法(髄液に直接投与)と静脈内(IV)の免疫療法を行う革新的な方法は、安全であり、かつ、転移性黒色腫(メラノーマ)に起因する軟髄膜疾患(LMD)患者の生存率を上昇させることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者による第1/1b相試験の中間解析によって認められた。