がん患者の介護者の多くは負担に対応しきれていないとの報告

新たな研究によると、がん患者を介護する家族の多くが想定する介護の課題に対し、準備が十分でなく、終末期ケアについてインフォームド・ディシジョン(詳細な説明を受けた上での決断)を行うための援助が必要であると感じている。

「われわれの研究により、多くのがん介護者が高い精神的ストレスを感じていることがわかりました」と、米国国立がん研究所がん対策と人口科学部門の医療供給調査プログラム(Healthcare Delivery Research Program)のErin Kent氏(博士)は述べた。「多くの介護者は、心の準備や医療・看護作業の訓練が十分でないと感じながら務めを果たさなければならないのです」。

これらの作業には創傷包帯の交換、注入ポートの取り扱い、および患者が複雑なレジメンどおりの服薬の確保も含まれるとKent氏は説明した。彼女は今月、サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会緩和ケアシンポジウムでthe study findingsExit Disclaimerを発表した。

米国には280万人のがん介護者がいる

がん介護者は非常に多忙であるため、介護者の経験に関する特定のデータ収集は困難であったとKent氏は述べた。

この問題に対処するために、彼女らは米国介護連合が実施した一年ごとの調査データを利用した。2015年の調査データによれば、米国で280万人が、がんに罹患した家族や友人に対してインフォーマルケア(無報酬で介護すること)を行うと推定される。

がん患者の介護者は、がん以外の患者の介護者よりも一週間あたりの介護時間が長い(32.9時間対23.9時間)、と研究者らは明かした。また、一週間あたりの介護時間と入浴や食事など日常生活の介助レベルを測定したところ、がん介護者は、がん以外の患者の介護者よりも”負荷が大きい”状況の患者を介護していると報告する傾向にあった(62%対38%)。

多くの介護者が、診断後すぐに複雑な治療を受けると決心した近親者を援助するよう求められている、とKent氏は述べた。「ケアがどのように移り変わっていくのかが予測できず、緊迫することがよくあります」と彼女は付け加えた。

研究者らはまた、がん介護者のほうが医療従事者と相談し、患者に代わって主張する傾向にあることも明らかにした(がん介護者62%対がん以外の介護者49%)。

医療提供者の関与に関係なく、がん以外の介護者の2倍近くのがん介護者が、終末期の判断に際して支援と情報を求めていると報告した(40%対21%)。

患者と介護者の相互依存

「本研究は患者家族に注目している点で重要です」と、University of Michigan School of NursingのLaurel Northouse氏(博士、公認看護師)は話した。彼女は本研究には関与しなかった。

「われわれはがん患者が安心して過ごすために介護者が不可欠であるとわかっています」と、Northouse氏は続けた。「介護者の支援に割り当てられる医療資源はほとんどありません。研究者として、われわれは介護者に必要不可欠なものを特定し、介護に取り入れていかねばなりません」。

本研究の目的はがん介護者の本質をより深く知り、がん介護者とがん以外の患者の介護者との共通点と相違点を特定することであった。

「もちろん、本研究はがん以外の介護者の課題を軽視しようとしているのではなく、がん介護者の経験を強調し、介護者が行う作業すべてに対する関心を高め、介護を行うにあたって準備が十分でないと感じないようになることを意図しています」とKent氏は話した。

今回の新たな知見により、どのポイントで医療提供者と臨床医が介護者に介入してその幸福を評価すべきかをより理解するために、さらなる研究が必要であると強調されている、とKent氏は加えた。

「患者と介護者は相互依存しています」、とNorthouse氏は述べた。がん介護者が経験する熾烈さが介護者の精神的苦痛を引き起こし、それは同様に、患者の健康にも影響しうるのです」と彼女は付け加えた。

「がん介護者はすぐにも情報と支援を必要としています」と、Northouse氏は続けた。「介護者が必要とする支援を手にするまでに時間がかかることがあまりにも多すぎます。介護者は事態を理解できていると思うかもしれませんが、この研究では、がん介護者は情報を必要としており、どのようにして高品質なケアを提供すればいいのか自信がないと話していることを示しています」。

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翻訳担当者 日ノ下 満里

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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