扶養する子どもの存在が、進行癌患者のより積極的な延命治療を求める動機付けとなる

扶養する子どもの存在が、進行癌患者のより積極的な延命治療を求める動機付けとなる

*この要約には抄録にはない最新データが記載されています

子を持つ進行癌患者42人を対象とした試験的研究から、子どもの存在が治療の意思決定において重要な要因になるとの結果が示された。子どもの存在が治療決定にどう影響するか聞いたところ、大多数の患者(64%)が、おもに子どもとより長く過ごしたいとの思いから、延命治療を求める動機付けになると答えた。少数の患者(15%)は、治療の際の優先事項として親としての役割を継続できることを挙げ、12%の患者は、遠方にセカンドオピニオンを求めることや長期入院が必要な治療を受けることよりも、家族のもとで治療を受けることの方が重要であると答えた。本研究で明らかになった親として生きる事の悩みに鑑み、本研究の対象患者集団に相当する患者層に対してさらに研究を進めることになりそうだ。

「多くの心理社会的な要因が、患者の癌治療の決定に影響を及ぼしています。子どもを扶養している癌患者にとっては、治療の際の優先事項を腫瘍医と相談することが大切です。医師が、子を持つ親にとって家庭での親としての役割がどれ程重要かなど、気づかない場合もあるからです。」と語るのは、本研究の主著者を務めたノースカロライナ大学チャペルヒル校(所在地:ノースカロライナ州)博士課程学生のDevon Check氏である。「本研究が、子どもを持つ患者と意思決定を共有する際の腫瘍医の一助、さらには治療計画と、家庭での役割分担など患者の優先事項との調整を図ることを促す一助になればと考えています」。

これまでの研究では、子どもを扶養している進行癌患者は、子どものいない患者よりも積極的治療を希望するケースが多いことが示されていた。扶養する子を持つ患者のみを対象とした本研究は、積極的治療の動機付け以外にも、緩和医療やホスピスの選好も含めた治療選好に子どもの存在が影響するか、またどの程度影響するかを患者に率直に尋ねた初の研究である。また、初めて質的手法を用い、意思決定に影響を及ぼす微妙に相異なる要因を明らかにすることができた。

研究者らは、18歳未満の子を持つ転移性癌患者42人に聞き取り調査を実施した。患者の平均年齢は44歳、子どもの平均年齢は12歳であった。緩和医療およびホスピスの選好を尋ねたところ、52%がホスピス利用に関心を示した。このうち、多くがホスピスを家族の支援リソースと考えていた。それ以外の患者は、自分の死が子どもに与える影響を考慮して、在宅ホスピスケアよりも施設でのホスピスケアに特に関心があるとした。緩和医療は終末医療であると一部の患者は考えているものの、24%の患者は、癌治療と並行して緩和医療を受けることに関心があると答えた。

本研究は身体機能レベルも異なり、癌種も多様な患者を対象にしているが、研究結果を他の患者集団に広げて解釈することはできない。しかし、研究者らはこれらの初期データを踏まえ、親としてのあり方や子育て全般の悩みおよび進行癌の治療に関する医療上の意思決定の関連性を検討する目的で、すでにより規模の大きな研究を計画している。

翻訳担当者 菊池明美

監修 東 光久(天理よろず相談所病院 血液癌・腫瘍内科領域担当)

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