児童虐待が癌の発症リスクに関連

キャンサーコンサルタンツ
2009年5月

身体的虐待を受けた児童は、後年になって癌を発症するリスクが高くなる可能性があるとカナダの研究者らが発表した。この結果はCancer誌2009年5月26日号の早期電子版に掲載された。

児童期の虐待は、成人期における慢性的な健康問題と関連付けられてきたが、児童虐待を経験した人における癌リスクについて考察した研究はほとんどなかった。唯一、1998年に発表された研究において、関連の可能性が示されていた。[1]

研究者らは、児童虐待と後年の癌リスクとの関連をさらに詳しく調べるために、2005年のカナダ地域健康調査(Canadian Community Health Survey)の情報の一部について評価した。[2]この情報は13,092人の回答から得られたものである。

本分析は、身体的虐待にのみ焦点をあてて行われた。児童期および10代の年齢区分において「身近な人から身体的虐待を受けたことがあるか」という設問に対し「はい」と答えた調査参加者を、児童期に身体的な虐待を受けたことがあるとみなした。

児童期の被虐待歴と癌リスクの両方に関連する可能性のある他の要素について考慮するため、年齢、人種、性別、児童期のストレス因子(親の離婚や非就労など)や成人期の健康行動(喫煙、アルコール摂取、身体活動、肥満など)、また成人期においての家計所得といった情報も収集した。

・参加者のうち7.4%が児童期に身体的虐待を受けたことが示された。

・年齢、人種、性別、児童期のストレス因子や、成人期の健康行動および家計所得といった要素を考慮しても、児童期に身体的虐待を受けた人は、虐待を受けなかった人よりも癌を発症する可能性が47%高かった。

調査では癌の種類について情報収集していなかったため、身体的虐待と癌との関連が癌の種類によって異なるのかどうかは評価できなかった。

コメント:この研究の結果は予備的なものであるが、身体的な虐待を受けた児童が後年になり癌を発症するリスクが増す可能性があることを示唆している。身体的虐待が癌リスクに影響を及ぼす過程は不明確で、追加的な調査が必要である。

参考文献
[1] Felitti V, Anda R, Nordenberg D, et al. Relationship of childhood abuse and household dysfunction to many of the leading causes of death in adults: the adverse childhood experiences (ACE) study. Am J Prev Med. 1998; 14: 245-258.
[2] Fuller-Thomson E, Brennenstuhl S. Making a link between childhood physical abuse and cancer: Results from a regional representative survey. Cancer [early online publication]. May 26, 2009.


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翻訳担当者 岡田 章代

監修 橋本 仁(獣医学)

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