COVID-19患者、がん進行が死亡リスク増加に関連(早期データ解析結果)

ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用投与にも、死亡リスク増加との顕著な関連性

ASCOの見解
「がん医療関係者は、COVID-19についてのデータ、とりわけがん患者への影響に関するものを緊急に必要としています。がん患者へのケアをいかに改善し、 COVID-19に関連する死亡や重症例をいかに減少するかが、最重要課題なのです。’COVID-19とがんコンソーシアム’(COVID-19 and Cancer Consortium:CCC19)のレジストリは、必要なデータの特定や収集を大規模に行うために速やかに組織された団体の好例です」と、ASCO会長Howard A.Burris III医師(FACP、 FASCO)は語る。

患者928人の解析結果から、がん患者がCOVID-19に罹患した場合、がんが進行状態にあることが単独で死亡リスク増加と関連していたことが判明した。CCC19レジストリのデータによると、ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用によるCOVID-19治療も死亡リスク増加と強く関連していた。レジストリには、COVID-19陽性患者のデータが収載されているが、そのうち約40%の患者に活動性がんが認められている。データは米国臨床腫瘍学会(ASCO)2020年次総会のバーチャル科学会議で発表される。

研究の概要
【主題】30日間の全死因死亡

【対象】COVID-19と診断されたがん患者525人

【結果】進行がん患者およびヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用投与を受けた患者の30日間の死亡リスクは、寛解患者/疾患の症状がない患者と比較して、それぞれ5.2倍および2.89倍であった。

【意義】この結果から、がんとCOVID-19との関連性への理解を深め、これらの疾患を有する患者のケアを改善していくことができる。

「これは初期の展開中のデータであり、今後、時間をかけて分析を行い、今回の知見を確認し、拡大する必要があります。現在、われわれは、一部のがん患者がSARS-CoV-2ウイルスに感染した理由についての情報を迅速に入手し、疾患の重症化や死亡に影響を与える要因を特定すべく取り組んでいます。また、COVID-19診断を受けたがん患者の治療に使用されている治療法の効果にも関心を持っています」と筆頭著者であるJeremy L.Warner医師(内科学・生物医学情報学准教授、バンダービルト大学医療センター(ナッシュビル))は述べた。

主要な結果
患者の13%(121人)が、COVID-19診断後30日以内に死亡した。複数のベースライン要因で部分的に調整した後、進行がん患者は、寛解患者または疾患の症状がない患者と比較して、30日以内に死亡する可能性が5.2倍高いことが判明した。

COVID-19治療のためのヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用投与は、いずれの薬剤も投与しなかった場合と比較して、30日以内の死亡リスクが2.89倍高かったが、薬剤を単剤投与した場合、いずれの薬剤でもリスクの有意な増加は認められなかった。ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用投与を受け、その後死亡した患者の傾向として、日常身体機能が若干低下していたこと、COVID-19診断前の2週間以内にがん治療を受けていたこと、血液型Rh陽性であること、ヒスパニック系以外の民族であること、ベースライン時にスタチン投与を受けていたことが挙げられる。

「これらは物議をかもすような結果ですが、処方理由による交絡が大きく、これらの薬剤のリスクや有用性を真に実証するためには慎重に計画した前向き研究が必要だと考えています」と同医師は語る。

また、日常生活動作能力の低下が認められる場合(ECOG[East Cooperative Oncology Group:米国東海岸がん臨床試験グループ]パフォーマンス・ステータス・スコア2以上)は、身体能力が高い場合(ECOGスコア0または1)と比較して、30日以内の死亡リスクが3.89倍高かった。30日経過時点の死亡リスクは、10歳ごとのどの年齢区分でもほぼ2倍(1.83倍)に増加した。安定状態で進行が認められないがん患者は、疾患の症状が認められない患者と比較して、死亡リスクは1.79倍高かった。男性は、女性より30日以内の死亡リスクが1.63倍高かった。さらに、元喫煙者は、非喫煙者と比較して、死亡リスクは1.6倍高かった。

臨床転帰に関する報告もあった。本分析の対象となった患者の半数(466人)が、COVID-19の発症後に入院した。全体として、全患者の14%が集中治療室に入院した。全患者の12%が人工呼吸器を、44%が追加酸素を要した。

本研究について
CCC19レジストリは、米国とカナダでは医療機関単位での参加、アルゼンチン、カナダ、欧州連合、米国、および英国では匿名個人での参加が可能となっている。

2020年4月16日現在、CCC19レジストリへの登録患者の半数が男性であった。登録患者の半数が白人、16%が黒人、16%がヒスパニック、15%が他の人種・民族であった。がんの種類で最も多いものが乳がん(21%)で、次いで前立腺がん(16%)、消化管がん(12%)、リンパ腫(11%)、胸部のがん(10%)であった。全体では、患者の43%に活動性(測定可能)のがんが認められ、39%ががんの治療を受けており、45%が寛解期にあった。

次のステップ
研究者は、このデータセットについてさらに分析を行い、レジストリへの患者登録が継続しているため、長期の追跡調査を予定している。

資金提供
資金の一部は、国立衛生研究所および米国がん協会から提供された。

翻訳担当者 松谷香織

監修 斎藤千恵子(薬学、毒性学/ロズウェルパ―クがんセンター 免疫療法部門)

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原文掲載日 

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