癌診療改革および患者の転帰の向上に向けた学習医療システム、CancerLinQ™の開発にASCOが正式に着手

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Aaron.Tallent@asco.org

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、患者によりよい転帰をもたらす癌診療の高い品質と価値を実現するため、画期的な医療情報技術(HIT)イニシアチブとして完全版CancerLinQ™システムの開発に着手したと本日発表した。これはワシントンDCのロナルド・レーガン・ビルディング・アンド・インターナショナル・トレードセンターで開催された“Data to Knowledge to Action: Building New Partnerships” (データを知識から行動へ:新しいパートナーシップ構築)というホワイトハウス大統領府科学技術政策室のイベントで発表された。

その開発プロセスはいくつかの段階を経て公開する予定で、これまで以上に強力な一連の医師向け質向上ツールを連続的に発表する。2015年初めには最初の一部が利用できる予定である。CancerLinQ™原型が無事完成したことにより、ASCOが完全版に着手した。これは医療情報技術(HIT)に基づくlearning health system(医療習得システム)の実現の可能性を示すものである。

ASCO会長のClifford A. Hudis医師・米国内科学会名誉上級会員(Fellow of American College of Physicians:FACP)は、「ASCOにより完成したこのシステムの原型を見ると、癌診療におけるlearning health systemが可能である事に疑う余地はありません」との見解を示し、「現在、完全版システムが開発進行中であり、この先18カ月の間に、よりよく洗練された患者治療に向けてわれわれがさらに貢献していくことができると信じます。また、CancerLinQ™が完成する頃には、癌診療に革命をもたらし、他の疾患領域の医療にとってモデルとなるでしょう」と述べた。

たった8カ月で完成したCancerLinQ™は、全米の癌診療所から提供された乳癌患者の170,000以上の匿名化された診療情報を含んでいる。それは、learning health systemの主要な構成要素が全て実現可能なことを示しており、完全版システムの開発に向けてASCOを導くこととなった。

CancerLinQ™の最初のコンポーネントは、ASCOの質の高い癌診療推進活動(QOPI®)を基に次世代の品質マネジメントを提供することを中心とする。今後のコンポーネントは、継続的な学習サイクルを形成するためのより効果的な品質向上ツール、臨床上の意思決定のリアルタイムの支援、何千もの患者の治療経験の分析を含む予定である。ASCOは、完全版システムのための機能面の要件を現在明確にしているところで、2014年初めには提案依頼書(RFP)を提示するとしている。

ASCOはConquer Cancer Foundationを通し、CancerLinQ™の経済的な援助を継続して求めている。現在までに、この基金は同意を得た主要なものとして$7.8 millionを集めており、これには以下の寛大な寄贈が含まれる(アムジェン社、 Chan Soon-Shiong Family 財団、Genentech BioOncolog社、Helsinn Therapeutics (US), Inc.社、イーラー・リリー・アンド・カンパニー社、ノバルティス・オンコロジー社、 Susan G. Komen団体、と数々の個人支援者のRaj Mantena薬剤師、Thomas G. Roberts, Jr.医師、Susan M. DaSilva, ナース・プラクティショナー)。

ASCOは諮問委員会を設置した。

ASCOは本日、Amy P. Abernethy医学博士, 米国内科学会名誉上級会員(Fellow of American College of Physicians:FACP)を品質機構内で新たなCancerLinQ™諮問委員会の会長とし、その機構は多面的な取り組みを行う革新的品質向上プログラムに専念するACRP関連機構である。諮問委員会は、幅広い範囲の関連分野のリーダーから構成され、腫瘍学・健康アウトカム学・疫学・HITを含む。この委員会は、開発から全行程のデザインや導入にわたるまでの助言を行う。

Abernethy医師は、腫瘍内科医で緩和医療医であり、Duke University Schools of Medicine and Nursingの終身准教授、Duke Center for Learning Health Care (CLHC) in the Duke Clinical Research Institute部長、Duke Cancer Care Research Program (DCCRP) in the Duke Cancer Institute部長を務めている。330を超える出版物を持ち、Abernethy医師は国際的に認められた、患者中心癌治療の保険医療サービス研究・提供の専門家である。

Abernethy医師は、「CancerLinQ™には癌に対するわれわれの理解と治療方法を変えてしまう可能性が本当にある」、と述べ、「癌についてそれぞれを学ぶことにより、すべての患者に対しての癌診療の質を向上できるプロジェクトに参加できることを楽しみにしている」とも述べた。

CancerLinQ™を開発し導入するのに、より多くの考え方を提供するため、外部の助言者からなる付加的な各部門特有の小委員会も構成している。将来的には、技術諮問小委員会と共に、患者医師間の諮問小員会を含める予定である。

CancerLinQ™は、ASCOのConquer Cancer Foundation によって支えられており、Institute for Qualityのプロジェクトである。

翻訳担当者 松川みれい

監修 関屋昇(薬学)

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