癌対策と国際医療プログラム

NCIニュースノート

発展途上国における非感染性疾患に関するハイレベルな国連会議が開催されるのに伴い、米国国立癌研究所(NCI)所長のHarold Varmus医師とNCIに所属するEdward L. Trimble医師は、「国際医療プログラムへの癌対策の組み入れ(Integrating Cancer Control into Global Health)」というタイトルでScience Translational Medicine誌に論評を発表した。論評では、間近に迫ったNCIのグローバルヘルスセンターの設立(Trimble氏が指揮)について大きく取り上げられている。同センターは、NCIや目的を同じくする大勢の潜在的な協力者らによる研究活動を通じて、全世界の癌に対する取り組みを促すため、研究プログラムの開発の調整を図る。こうした取り組みの一部は、近年なされた感染性疾患に対する国際医療プログラムの成功に基づいている。癌は基本的に高齢者により多く見られる疾患の一つであり、発展途上国では、人口増加、高齢化に加え、肥満やタバコ、アルコールの摂取等の危険因子の保有率増加に伴って癌人口が増加しているため、この取り組みは特に緊急を要している。例えば2008年には、全世界で800万人近くが癌によって死亡し、このうち約2/3は発展途上国が占めている。2030年までに総力を挙げて取り組まなければ、癌による死亡者数は1,300万人を超え、うち70%近くを発展途上国が占める可能性がある。

著者らは、国際医療に対する従来のアプローチと、非感染性疾患と闘うために必要とされるアプローチの差は必ずしもはっきりしていないと述べている。例えば、発展途上国で発症する致死的な癌の1/4近くは、ウイルス(HPVによる子宮頸癌など)、細菌および寄生虫の感染に起因する。また、タバコおよびアルコール依存をコントロールするための行動変容を伴う予防戦略は、多面的で長期にわたる健康上の利益をもたらし、概してコストがかからないとも述べている。このほか、癌治療とは、安価な抗癌剤や簡単な手術にとどまるものではなく、症状を抑えるための鎮痛剤や制吐剤、その他緩和ケアのための治療法も含むものであると指摘する。最後にVarmus氏とTrimble氏は、NCIの新しいグローバルヘルスセンターは、NCIが中心となる機関ではなく、世界中の人々や国々にのしかかる癌の重荷を減らすための共同的な取り組みを促進する機関であると結論付けた。論評はこちらを参照のこと。

翻訳担当者 濱田 希

監修 林 正樹 (血液・腫瘍)

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