2007/01/09号◆特集記事「費やされる時間は癌患者にとって重い負担となる」

同号原文

米国国立がん研究所(NCI) キャンサーブレティン2007年01月09日号(Volume 4 / Number 2)
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特集記事

費やされる時間は癌患者にとって重い負担となる

癌の負担を計算することは、特に癌治療のために失われた患者の時間などの非医療的費用を考慮した場合、単純なことではない。1月3日発行のJournal of the National Cancer Institute(JNCI)に掲載された試験によると、2005年に癌治療のために失われた時間的価値は、診断後初年では約23億ドルと推定された。この推定値は、2005年における新規癌患者100万人が移動、待機、受診に費やした多くの時間、および賃金中央値時給15.23ドルに基づいている。

本試験の執筆責任者であり、NCIのDivision of Cancer Control and Population Sciences(DCCPS)(癌コントロールおよび人口科学部門)の疫学者でもあるRobin Yabroff医師は、「われわれの知る限り、最も一般的な癌医療機関の11施設について、癌治療の全コースにわたって患者の時間的な純費用を推定したのは、この試験が初めてである」と述べている。同医師らは、臨床的に関連する3つの治療段階(診断後初年、終末年、初年から終末年の間の時間を含む維持期あるいはモニタリング期)を区別する治療段階アプローチを使用した。

診断後初年における患者の総消費時間は、腫瘍の発症部位によって異なると判明した。スクリーニング受診、早期発見、効果的な治療が可能な癌(乳癌、前立腺癌、皮膚癌など)の多くでは、疾患の後期で診断されることが多い肺癌、卵巣癌、胃癌よりも、消費時間が少ない。発症部位によるこれらの相違は、終末年でも(多少、相違の程度が小さくなるが)同様である。

米国食品医薬品局のLarry G. Kessler医師およびFred Hutchinson Cancer CenterのScott D. Ramsey医師は、「研究者および政策立案者は、時間的費用が癌の経済的総負担の非常に現実的かつ人的な構成要素であることを忘れている傾向にある」と付随論評にて述べている。

本試験では、1995年~2001年にSEER癌登録に登録した65歳以上の癌患者76万人以上からのメディケア請求を基に、患者が受けた治療(入院、画像診断手技、来院、救急外来、化学療法、放射線療法、緊急手術など)の程度および種類を確定した。また、可能な場合は規定の手段を用いて、各種医療行為に必要とされる時間を推定した。

また、条件をマッチさせた非癌患者のメディケア登録者100万人以上について、治療の程度および種類をカテゴリーごとに推定した。癌患者の消費時間から同登録者の消費時間を引くと、癌を原因とする負担が導き出される。

しかし、Yabroff医師は、これらの推定では米国において癌治療を受けるために患者が費やした実際の時間が明らかに少なく見積もられていることを強調し、「65歳以上の個人における治療および推定時間を評価したに過ぎず、若年患者の消費時間を少なく見積もっていると考える」と述べている。

Kessler医師とRamsey医師も同意見であり、若年患者は集中的な治療を受ける傾向があること、および健康な若年者は医療にかける時間と費用が少ないため、若年患者の相対的負担が増加することを指摘している。また、この解析では、治療を受けるための自宅における待機時間、治療からの回復時間、および家族や看護者による消費時間が除外されている。

Yabroff医師は、「米国において癌治療を受けるために患者が費やす時間は、相当な時間であるが、この推定値は癌による負担のただ1つの要素しか表していない。直接的な医療費に加え、その他の要素(生活の質および癌で早期死亡したために失われた生産力など)が癌負担について理解する上で重要である」と述べている。

翻訳担当者 斉藤芳子 、、

監修 平 栄(放射線腫瘍科)

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