2010/06/15号◆特集記事「新治験薬イピリムマブにより進行黒色腫の生存率が改善」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/06/15号◆特集記事「新治験薬イピリムマブにより進行黒色腫の生存率が改善」

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2010/06/15号◆特集記事「新治験薬イピリムマブにより進行黒色腫の生存率が改善」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年6月15日号(Volume 7 / Number 12)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇
新治験薬イピリムマブにより進行黒色腫の生存率が改善

免疫系を標的とする試験段階の治療薬ipilimumab(イピリムマブ)により、進行黒色腫(メラノーマ)患者の生存期間が現在予測される期間より延長となった。この結果は、他の治療を受けても疾患が進行した進行黒色腫患者において生存率改善が初めて認められた大規模ランダム化臨床試験から得られた。

イピリムマブ投与患者では、黒色腫に対していくらか活性が示された試験段階の治療ワクチンを投与した患者と比べ、生存期間が約4カ月間延長した。生存期間の中央値は、イピリムマブ投与患者では10.1カ月、一方、ワクチン投与患者では6.4カ月であった。シカゴで今月初めに行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会における報告によると、この差は、統計学的に有意であり、進行黒色腫に対する有効な治療選択肢がないことを考えれば患者にとって臨床的意義は大きい。

同総会の本会議において、ロサンゼルスにあるエンジェルスクリニックおよびリサーチ研究所の主要試験責任医師Dr. Steven O’Day氏は、「われわれはついにこの疾患に関する良い知らせを得ることとなりました」と述べた。さらに、本試験は患者にとっての重要な進歩と癌における免疫療法の発展を示すものであると付け加えている。

676人の患者を対象とした本試験では、3群、すなわちイピリムマブ単独投与群、イピリムマブ+試験用ワクチン(黒色腫細胞上の抗原gp 100を標的とする)併用投与群およびワクチン単独投与群における結果を比較した。意外なことに、イピリムマブにワクチンを併用しても患者の生存期間は延長しなかった。実際は、イピリムマブ群の全生存期間中央値は併用群よりもわずかに延長
した。

試験結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌電子版に6月6日付で掲載され、審査のためにFDAに提出される予定である。同時に、多くの患者がこの試験段階の治療薬に興味を抱くであろうと考えられる。O’Day氏によると、イピリムマブは、例外的使用(または救済使用:compassionate use)プログラムを介して一部の医療センターにて患者に提供されることになっている(ASCOおよびFDAは、医師が同プログラムを参照しやすくなるように新しい電子版情報最近掲載した。同プログラムでは、臨床試験参加対象以外の重篤な疾患を有する患者に対して試験段階の治療薬を提供している)。

患者の大半は診断後1年以内に死亡するとされる転移性黒色腫において、研究者らは比較的長期間のベネフィットを示す良好なデータが示されたと注目している。イピリムマブ群では、1年生存率および2年生存率はそれぞれ、46%および24%であった。一方、研究者の報告によると、最近行われた黒色腫対象の試験における1年生存率は22%〜38%であった。

ペンシルベニア大学にて患者を治療しているが本試験には参加していないDr. Lynn Schuchter氏は、「われわれが受け持つ黒色腫患者にとって、これは非常に前向きな状況です。この試験によって一歩前進することになります」と述べた。

副作用の大半は管理可能であるが、イピリムマブが「強力な薬」であることをO’Day氏は警告する。免疫系は、刺激されると健康な組織を攻撃する場合があり、発疹や大腸炎(大腸の炎症)などの合併症が引き起こされることや死に至ることもある。副作用の可能性について患者に説明する必要があり、総合的なチームで患者をモニタリングすべきである。

NEJMに掲載された記事によると、「有害事象は、重症になる場合、長期に持続する場合、またはその両者の場合がありますが、大半は適切な治療で回復します」。これは、イピリムマブや他の免疫療法に関する進行中の試験のデータと一致する。こう述べるのは、NCI癌研究センターのDr. James Gulley氏であり、癌に対する治療用ワクチンの臨床試験を複数主導している。ASCO総会において、同氏の研究チームは、進行前立腺癌患者を対象として異なる試験用ワクチンとイピリムマブを比較する第1相試験の結果を報告した。

Gulley氏は「癌の免疫療法にとって重要な年となりました」と述べ、初の癌治療ワクチンsipuleucel-T(プロベンジ[Provenge])が前立腺癌を対象として最近承認されたことを指摘した。黒色腫対象のイピリムマブ試験や治療用ワクチンに関する最近の試験における良好な成績に伴い、癌に対する免疫治療のアプローチについて企業や大学の研究者から注目が集まるであろうと同氏は予測する。

イピリムマブについての新たな発見は、その作用機序である。免疫細胞は体内の組織そのものを攻撃しないように制御されているが、同剤はその制御機能を解除することにより、免疫系に黒色腫細胞を攻撃させる。抗体であるイピリムマブは、CTLA4とよばれるT細胞表面上の分子に結合することで、この免疫系の制御の解除を行う。

本会議における試験の議論では、H.リー・モーフィットがんセンターおよびリサーチ研究所のDr. Vernon Sondak氏が、本剤について「黒色腫の長く暗いトンネルの先に見えた光」と表現した。Sondak氏によると、転移性黒色腫における生存率の改善は30年間報告されたことがなく、同疾患に対する最も新しい薬剤インターロイキン-2(IL-2)が承認されたのは10年以上も前のことであった。

しかし、Sondak氏はまたイピリムマブについて解明すべき点が多く残っていることを警告した。例えば、同剤の最善の使用方法、単独投与にすべきかまたは他の治療との併用にすべきかどうかという点、初回治療として使用すべきか二次治療として使用すべきかという点について、今後の試験で検討していく必要がある。

また、本剤および他の免疫療法が有用となる可能性のある患者を特定するためのマーカーが必要となる。Gulley氏は「これは100万ドルの価値があるほどの問題で、すべての人がマーカーを探しているのです」と述べた。同氏の研究グループは、免疫療法を受ける患者での全生存率と関連するバイオマーカーについてレトロスペクティブ調査を行っているが、癌の免疫療法に関する効果指標として使用可能と証明されたマーカーはまだない。

本試験には参加していないNCI癌治療・診断部門のDr. Claudio Dansky Ullmann 氏によると、試験の対照群のためにgp 100を選択したことに疑問を抱く研究者もいる。なぜならば、同ワクチン単独では黒色腫に対する活性がほとんど認められていないからである。しかし、この病態において、確立したまたはより好ましい標準治療の対照薬は実際にはないと同氏は付け加えた。

NCI共同研究グループとして黒色腫対象の試験を監督するDr. Dansky Ullmann氏によると、NCIにはイピリムマブ単独で、または他の免疫療法との併用療法、ひいては標的薬などの併用も視野に入れ、検証可能なさまざまな臨床試験の方法があるという。また、本試験で使用されたイピリムマブの用量は今後の試験で使用されるであろう用量と比較すると比較的低いと考えられるため、さらに良好な結果が得られる可能性がある、と同氏は指摘している。

イピリムマブは、BRAF阻害剤(PLX4032)などの分子標的薬と併用される可能性が高い。進行黒色腫患者を対象とした初期相の臨床試験では、患者の70%でこの薬剤の効果が認められたが、効果の大部分は6〜8カ月しか持続しなかった。一方O’Day氏によると、イピリムマブの効果が認められたのは患者の約20〜30%であったが、その効果にはより持続性が認められた。確かに数年前は、このように黒色腫に対して併用療法を考慮することすらできなかった。O’Day 氏は、黒色腫の治療における最近の進歩の一因が本疾患の生態やその遺伝子学的経路に関する理解の深まりにあると考えている。「現在、免疫療法の全体的な分野に道が開かれつつあります。私は、暗闇から光へと移行していると感じます」と、同氏は述べた。

—Edward R. Winstead

NEJMに掲載されたもう1つの記事:
黒色腫に対する標的薬と免疫療法の併用
非臨床試験の結果から、PLX4032などのBRAF阻害剤を用いた標的療法とイピリムマブやIL-2 などの免疫療法を併用することにより一部の黒色腫患者で効果が上がることが示唆されている。本試験では、標的薬を用いて黒色腫細胞を治療するとその細胞が免疫療法に対してより影響を受けやすくなると仮定した。また、研究者らによると、これは黒色腫腫瘍抗原の増加によって起こる可能性が示れた。黒色腫腫瘍抗原は標的療法による治療後に最高100倍に増加し、この増加により免疫療法に対する腫瘍の感受性がさらに増加した。

マサチューセッツ総合病院の試験責任研究者Dr. Jennifer Wargo氏は「この試験は臨床前実験だが、黒色腫患者を治療するために標的療法と免疫療法を併用する根拠が得られた」と述べている。Wargo 氏によると、患者を対象として結果を検証するためにさらなる試験が行われており、本試験に基づいて臨床試験が計画されている。この所見は、Cancer Research 電子版に本日付けで掲載された。

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齊藤 芳子 訳
辻村 信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)監修

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