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CAR-T細胞療法の神経系副作用リスクと低リン血症

キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の神経系副作用の発症率および重症度は低リン血症(血液中のリン酸塩濃度が低い)を発症した患者の方が高いという結果が、米国がん学会の学会誌であるCancer Immunology Research誌に発表された。

CAR-T細胞療法に関連する神経毒性は免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)として知られ、輸注患者の約50%が発症する。症状としては錯乱、譫妄、失語症、運動機能障害、傾眠などがある。重症例ではけいれんや昏睡など生命を脅かす事象が生じる場合がある。

「現在ICANSの治療法は支持療法やステロイドに限られていますが、これらは非特異的療法で、それ自体に副作用があります。ですからICANSの発症を予測できれば医師にとって極めて有用な手段になります」と、当研究の筆頭著者でありUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)デイヴィッド・ゲフィン医科大学院の小児科(血液学/腫瘍学)および微生物・免疫・分子遺伝学科の常勤助教授であるTheodore Scott Nowicki医学博士は述べた。

著者らは以前に、CAR-T細胞療法を受けた患者の血中リン酸塩濃度が細胞輸注後に著しく低下した例を認めていた。注目すべきことに、この作用のタイミングは患者のICANS発症時期と重なっていた。Nowicki氏は、低リン血症とICANSの神経学的症状は似ていると説明する。

この研究でNowicki氏らは、低リン血症とICANS発症との関係と、リン酸塩濃度低下の背景にあるメカニズムを調べた。

研究者らは、CD19抗原を発現しているリンパ腫細胞とCD19標的CAR-T細胞を共培養し、リンパ腫細胞の殺傷が培養媒体内のリン酸塩濃度の低下に関連していることを発見した。さらに、CAR-T細胞は、リンパ腫細胞と共培養すると、単独で培養した場合よりも有意に多くのリン酸塩を消費することがわかった。

CAR-T細胞によるリン酸塩消費の増加は、CD19抗原認識後のCAR-T細胞の活性化(サイトカイン放出の増加によって示される)と、リン酸塩に依存する代謝活性の上昇に相関していた。これらの結果は、CAR-T細胞を介した細胞殺傷により代謝需要が高まり、患者に低リン血症を誘発する可能性があることを示している。

この仮説を検証するために、著者らはUCLAでCD19標的CAR-T細胞療法を受けたB細胞悪性腫瘍患者77人の臨床コホートの後ろ向き解析を実施した。

このコホートでは、患者の30%がICANSを発症し、約60%が低リン血症(血清リン酸塩濃度が2 mg/dL未満と定義)を発症した。カリウムおよびマグネシウムの血清中濃度も患者のそれぞれ52%および72%で低かったが、ICANSと有意に関連していたのはリン酸塩濃度の低下のみであり、ICANSを発症した患者のほとんど(91%)には低リン血症もみられた。また、患者のリン酸塩濃度はCAR-T細胞輸注から5日後に最低値を示したが、これはICANS発症までの期間の中央値に一致していた。

「低リン血症を発症した患者の中にはICANSを発症しなかった人もいましたが、ICANS患者は決まって重度の低リン血症を発症していました。また、リン酸塩濃度が低い患者では、低リン血症の重症度が、発症したICANSの重症度に相関していました」とNowicki氏は話した。

低リン血症を発症した患者と発症しなかった患者との間でICANSの重症度に有意差は認められなかった。しかし、リン酸塩濃度が低い患者は、リン酸塩濃度が正常範囲内の患者に比較してICANSの罹患期間が有意に長かった。

「今後他の研究において、より大規模な集団を対象とした試験やメタアナリシスが可能になれば、重症度の変動をより高い精度で検出できるでしょう」とNowicki氏は続けた。

これらの知見は、CAR-T細胞療法を受けているがん患者のICANS発現を監視する上で重要な意味をもつ可能性がある。「医師は、CAR-T細胞製剤を受けている患者が定期的に検査を受ける血清リン酸塩値を利用して、ICANSの発現リスクが高くなる時期を予測できるでしょう」とNowicki氏は述べた。

著者らによれば、この研究の主な制限は、低リン血症が実際にICANSを引き起こすかどうかを前向きに研究できないことであった。「これは今後解決しなければならない重要な問題だと思います。私たちのグループではこの関連性について積極的に研究を続けています。それが確認されれば、細胞療法を受けている患者のICANSを管理する上で重要な意義をもたらすことになるでしょう」とNowicki氏は語った。

本研究は米国国立衛生研究所および米国国立がん研究所から資金提供を受けた。また、UCLA Clinical and Translational Science Institute、ジョンソンがんセンター、およびUCLAのEli and Edythe Broad Center of Regenerative Medicine and Stem Cell Researchから学内助成金を受けた。

Nowicki氏はAllogene Therapeutics社、PACT Pharma社、およびAdaptive Biotechnologies社のコンサルタントとして謝礼金を受け取っていることを報告している。

監訳:佐々木裕哉(血液内科/筑波大学)

翻訳担当者角坂功

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