[ 記事 ]

リキッドバイオプシーはステージ2大腸がん術後療法の必要性の判断に有用

ASCOの見解

「リキッドバイオプシーは治療法を決定する際の有用なツールとなる可能性があります。今回の研究結果から、ステージ2の大腸がんの患者のうち術後化学療法で効果を得られる患者と、追加治療を省略できる患者を、無再発生存率を低下させることなくさらに細かく判別できるようになるかもしれない」とASCOエキスパートのCathy Eng医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べている。

新たな研究結果が米国臨床腫瘍学会年次総会2022(ASCO22)で発表された。この研究では、 ステージ2の大腸がんの患者で、血液中のがんのDNA(血中循環腫瘍DNA、ctDNAとも)が存在しなかった患者は、無再発生存率が低下することなく術後化学療法を省略できた。逆に、術後に血中循環腫瘍DNAが存在する患者については化学療法を受けた場合の再発率が低く、術後の化学療法による生存率の向上が示唆された。

試験要旨

【目的】血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を大腸がん術後治療の指針とする。

【対象者】オーストラリアおよびニュージーランドにおける治癒切除を行ったステージ2の大腸がん患者455人(直腸がん患者を含む)。

【結果】

・ctDNAを指標とした群では、術後化学療法を受けた患者は標準管理群と比べ少なかった(ctDNA指標群15.3%、標準管理群27.9%)。標準管理は腫瘍の病期、評価したリンパ節の数、腫瘍の腸壁穿孔の有無など、従来の基準によって行われた。

・術後化学療法を受けた患者のうちctDNAを指標とした患者には、標準管理の患者と比較してオキサリプラチン(販売名:エルプラット)がフルオロピリミジンよりも高頻度に投与された(ctDNA指標群62.2%、標準管理群9.8%)。

・ctDNAが陽性で術後化学療法を受けた患者は、3年無再発生存率が86%であった。

【意義】本試験の結果は、大腸がんステージ2の患者における術後化学療法の使用を決定する際に役立つ。

******

主な知見

ステージ2の大腸がんに対する現在の標準治療ではctDNAを指標として術後化学療法を行うアプローチはないが、ランダム化第2相DYNAMIC試験の結果では、術後化学療法を受けた患者数が少ないにもかかわらず、ctDNA指標群と標準管理群では無再発生存率が同等であることが証明された。

ctDNA指標群では、ctDNAの検査結果が陽性の患者は術後化学療法を受けたが、陰性の患者は受けなかった。術後化学療法を必要とする患者の総数は標準管理の場合と比較してほぼ半数となった(ctDNA指標群15.3%、標準管理群27.9%)。術後化学療法を受けた患者のうち、ctDNAを指標とした患者には、標準管理の患者と比較してオキサリプラチンがフルオロピリミジンよりも高頻度に投与された(ctDNA指標群62.2%、標準管理群9.8%)。

 ctDNA陰性で術後化学療法を受けなかった患者は再発のリスクが非常に低かった(7.5%)。再発リスクと関わる臨床的特徴を持たないctDNA陰性患者(3.3%)や腫瘍が腸管壁漿膜まで到達しているものの穿孔に至らなかったctDNA陰性患者(5.8%)では再発のリスクがさらに低かった。

術後化学療法を受けたctDNA陽性の患者は3年無再発生存率が86%であった。2年無再発生存率はctDNA評価による管理で93.5%、標準管理で92.4%と同等であり、3年無再発生存率はctDNA評価による管理で91.7%、標準管理で92.4%とやはり同等であった。術後化学療法を行わなかった場合、ctDNA陰性患者の3年無再発生存率は低リスク群で96.7%、高リスク群で85.1%であった。

「これまでのデータでは、術後にctDNAが陽性となった患者は、追加治療を行わない場合に再発リスクが非常に高くなると示唆されています。そのため今回のDYNAMIC試験の結果は非常に心強いものです。今回の結果で、ctDNA陽性患者には術後の治療でオキサリプラチンベースのレジメンなどの化学療法がかなり有用だということがわかりました」と、筆頭著者のJeanne Tie医師(Walter and Eliza Hall Institute of Medical ResearchおよびPeter MacCallum Cancer Center准教授、オーストラリア、ビクトリア州)は述べている。

2022年に米国で新たに診断される大腸がん患者数は約151,030人と予測されており、この疾患で52,580人が死亡すると推定されている。

ctDNAは術後の微小転移病変(微小残存病変ともいう)を検出できるため、より正確に再発リスクを予測し術後療法の対象となる患者を選択することが可能となる。本試験は、大腸がんの術後療法の指標としてctDNAを利用するはじめての試験である。

 試験について

第2相DYNAMIC試験では、オーストラリアとニュージーランドの455人の患者が、ctDNAを指標とする化学療法と、従来の基準(腫瘍の病期、評価したリンパ節数、腫瘍の腸壁穿孔の有無など)により臨床医が判断する標準管理のいずれかに無作為に振り分けられた。

追跡期間中央値は37カ月。ctDNAを指標とした管理では、術後4週間または7週間のいずれかの時点でctDNAが陽性の場合にオキサリプラチンまたはフルオロピリミジンの化学療法による治療を行った。ctDNA陰性の患者には術後の化学療法は行わなかった。2群間で同等または悪化しないかどうかについて2年無再発生存率が主要評価項目として評価された。主要な副次的評価項目は術後の化学療法の使用状況であった。すべての患者を3カ月毎に2年間、その後6カ月毎に3年間追跡し、がんの再発について評価した。

また、本試験では、手術前に化学放射線療法を受けなかったステージ2の直腸がんも一部含まれており、これらのがんは一般的に結腸がんと同様に治療された。

 次のステップ

この試験では、ctDNAの陽性患者と陰性患者を治療群と無治療群に無作為に割り付けられていなかった。無作為割り付けが行われていれば各群における治療の影響の有無に関してより明確な証拠が得られたと思われる。現在ランダム化試験が検討されている。

本試験はオーストラリア国立保健医療研究評議会(オーストラリア政府の主要法定機関)、Virginia and Ludwig Fund for Cancer Research、Marcus Foundation、および米国国立衛生研究所(NIH)から資金提供を受けた。

日本語記事監修:中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)

翻訳担当者白濱紀子

原文を見る

原文掲載日

【免責事項】

当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

関連記事