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デュルバルマブ化学免疫療法とゲノム解析により胸膜中皮腫の生存期間が向上

免疫療法剤デュルバルマブ(イミフィンジ)と、化学療法剤ペメトレキセド(アリムタ)およびシスプラチン/カルボプラチンとの併用療法は、手術不能な、肺を覆う組織である中皮のがん、胸膜中皮腫の患者に新たな治療選択肢となる可能性が示された。本知見は、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターとブルームバーグ・キンメルがん免疫療法研究所による第2相臨床試験で明らかになった。

多施設共同試験であるPrE0505(NCT02899195)では、中皮腫患者55人を対象に、ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンと併用して、デュルバルマブの固定用量を3週間に1回静注し、最大6サイクル投与した。全患者の全生存期間中央値は20.4カ月で、過去に同様の患者で確認された12カ月を有意に上回った。また、中皮腫の種類として最も多い上皮型の患者では、生存期間は24.3カ月であった。化学療法にデュルバルマブを追加することで予期せぬ毒性が生じることはなかった。

これらの結果は、11月8日発行のNature Medicine誌に掲載された。

研究者らは、奏効した中皮腫腫瘍のゲノムおよび免疫学的特徴も調査した。その結果、免疫原性変異(腫瘍に対する免疫反応を引き起こす可能性のある、がん細胞の遺伝物質の変化)の数が多く、異常細胞を認識して破壊するT細胞のレパートリーが多い患者は、臨床転帰が良好となる可能性が高いことがわかった。網羅的な遺伝子レベルでの解析では、奏効した上皮型ではゲノムの不安定性が高いことが示された。さらに、特にDNA損傷修復に関わる遺伝子の変異があって、がんになりやすい患者は、長期生存する可能性が高かった。

「中皮腫は、まれで命に関わるがんであり、治療の選択肢は限られています」と、本研究の筆頭著者であるPatrick Forde氏(M.B.B.Ch. ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター胸部がん臨床研究プログラム・ディレクター、同大学医学部腫瘍学准教授)は言う。「PrE0505試験では、デュルバルマブとプラチナ製剤を併用することで有望な臨床効果が得られること、また、その効果は悪性胸膜中皮腫の複雑なゲノム背景によって左右されることが示されました」とForde氏は述べる。「上皮型悪性胸膜中皮腫患者の生存期間は2年を超え、今回の臨床試験に登録した上皮型悪性胸膜中皮腫患者の一部は、現在も腫瘍の進行がみられません」。

悪性胸膜中皮腫は毎年30,000人以上が罹患し、ほとんどの場合、命を落とす。中皮腫の大部分は、アスベストへの曝露とそれに伴う胸膜腔(肺を覆う2枚の胸膜の間にある空間)での慢性的な炎症が原因となっている。悪性胸膜中皮腫の半数以上は、DNA損傷修復に関わる遺伝子に変異があり、BAP1、NF2、CDKN2A、TP53、SETD2などの腫瘍抑制遺伝子の不活性化が悪性胸膜中皮腫の発症に関与していると考えられている。中皮腫は比較的変異数が少ないため、これまでは変異による免疫原性が低い腫瘍タイプと考えられてきた。

試験の共同筆頭著者であるValsamo Anagnostou氏(医学博士。ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター胸部腫瘍バイオリポジトリ・ディレクター、同大学医学部腫瘍学准教授)は、「今回の発見は、中皮腫患者に対する新しい有効な治療法の可能性を示唆するだけでなく、患者が奏効する理由を分子レベルで説明するものです」と述べている。「患者と腫瘍の両方のゲノムフットプリントに関連して、臨床効果を予測するような非常にユニークな特徴を発見しました。これらの特徴は、化学免疫療法に反応した中皮腫腫瘍にみられる、ゲノムの瘢痕化やゲノム全体のコピー数の変化に関係しています。さらに、がんになりやすい遺伝子に生殖細胞系列変異がある患者は、化学免疫療法がよく効く患者です。これらの発見はすべて、中皮腫の患者を治療するための新しい戦略につながる可能性があります」。

本試験の追跡期間中央値は24.2カ月で、生存している患者の推定割合は、6カ月後に87%、12カ月後に70%、24カ月後に44%であった。客観的奏効率、すなわち治療により腫瘍が有意に縮小した患者の割合は56.4%であった。

最も多く報告された有害事象は、主に低グレード(軽症~中等症レベル)のもので、疲労、吐き気、貧血などであった。本試験に登録したすべての患者は、化学療法とデュルバルマブの併用療法を1サイクル以上受け、48人(87%)の患者が6サイクルを完了した。

その結果、中皮腫腫瘍の組織型によって、全生存期間、無増悪生存期間(がんの進行または死亡までの期間)、奏効率に有意な差が認められた。上皮型腫瘍の患者は、非上皮型腫瘍の患者よりも高い奏効率を示した(66%対29%)。同様に、上皮型悪性胸膜中皮腫患者は、非上皮型悪性胸膜中皮腫患者に比べて、全生存期間が有意に長く(24.3カ月対9.2カ月)、無増悪生存期間も有意に長かった(8.2カ月対4.9カ月)。

免疫原性変異負荷が高い中皮腫腫瘍は、化学免疫療法に良好な反応を示し、特に上皮型グループではその傾向が強かった。治療が奏効した腫瘍では、がん細胞の遺伝物質の配列の変化に加えて、ゲノム全体の構造変化や相同組換え欠損のシグネチャー(がん細胞の損傷したDNAの修復機構の不具合を示す)がより顕著にみられた。また、DNA損傷修復に関わる遺伝子を含む、がんの素因となる遺伝子に生殖細胞系列の変異がある患者は、化学免疫療法により無増悪生存期間および全生存期間が有意に延長した。また、腫瘍微小環境(腫瘍を取り囲む正常な細胞や血管で構成され、免疫細胞を含み、がん細胞の増殖や転移に影響を及ぼす)を調べたところ、治療に反応した腫瘍の周囲には、T細胞と呼ばれる特定の免疫細胞集団が多く存在していることがわかった。

化学療法単独と比較した、デュルバルマブと化学療法の併用については、中皮腫患者の生物試料を用いた詳細なゲノム解析と併せて、国際的な第3相試験であるPrE0506/DREAM3R試験(NCT04334759)で検証が進められている。この臨床試験は、米国のPrECOGがスポンサーとなり、Forde氏と西オーストラリア大学のAnna Nowak氏(Ph.D., M.B.B.S.)が試験委員長、Anagnostou氏がトランスレーショナルリサーチリーダーを務めている。

共著者、研究助成の開示については記事原文を参照のこと。

翻訳青葉かお里

監修後藤 悌(呼吸器内科/国立がん研究センター)

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