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がん臨床試験から離脱した患者には特別な配慮やケアが必要

がん臨床試験から離脱する患者は、強い症状や激しい感情を経験したり、死が差し迫り選択肢がほとんどないことを意識する可能性があることが、新たな研究により明らかになった。

がんの臨床試験離脱に関する聞き取り調査に同意した患者20人の回答を分析したところ、次の5つのテーマが明らかになった。臨床試験後の予後の認識、治療に関する話し合いの目標、感情対処、有害事象の負担、専門家の信頼とサポートである。さらにサブテーマとしては、後悔/振り返り、次の治療開始への焦り、治療の利益と負担の比較などがあったとの報告がJAMA Network Open誌に掲載された。

フィラデルフィアにあるペンシルバニア大学看護学研究科およびペレルマン医学研究科の内科外科看護学Lillian S. Brunner寄付基金教授、看護学教授、医療倫理・医療政策教授である本研究筆頭著者Connie M. Ulrich氏は、次のように語った。「がん患者は、利益を期待してがん臨床試験に参加します。私たち研究者や生命倫理学者などは、がん疾患に関する知識を深め、がんの負担を軽減できる将来の治療法を開発するため、患者の参加を高く評価しています」。

「同時に、患者がこうした臨床試験から離脱する際には、終末期を含めた次のステップに進めるよう患者とその家族を支援する必要があります。臨床試験後のケアは、臨床試験前の参加募集活動と同様に重要ですが、患者の試験離脱を責任をもって進めることへの理解不足は深刻です。臨床試験から離脱させられたり、自ら離脱した患者は、受けた恩恵の少なさに失望したり、参加を後悔したりする可能性があるからです」と、Ulrich氏は電子メールで述べた。

現状では、「これらの患者のがん臨床試験からの移行を倫理的に進め、人生の困難な時期にある患者と介護する家族を支援するための方針、最善の措置、コミュニケーション戦略に関する指針が不足しています」とも述べている。

Ulrich氏は、今回の研究がこれら患者ケアの指針として役立つことを期待している。

「臨床試験に参加するすべてのがん患者は、科学に貢献しているという点で、尊敬に値します。その尊敬のあかしとして、臨床研究チームはがん患者やその家族と試験離脱体験やこの重要な移行期に提供されるケアの質について話し合うなど、対話と研究を一層多くしなければなりません。次のステップ(アドバンス・ケア・プランニング、終末期、医療行為に対する各地域社会でのサポート、別の臨床試験の参加可能性)に関する難しい議論が必要であれば、早期に開始して継続しなければなりません」と語っている。

臨床試験から離脱するがん患者の経験を探るために、Ulrich氏らのチームは、消化管がんまたは泌尿器がん、血液・リンパ系悪性疾患、肺がん、乳がんまたは卵巣がんの4カテゴリーのいずれかでがんと診断された成人患者20人を登録し、聞き取り調査を行った。

聞き取り調査で浮かび上がったテーマの一つとして、試験離脱により生じた感情があった。ある患者は、臨床試験から外されたときの落胆について語った。「70%の減少は、本当に嬉しかった。副作用もなかったし、とにかくものすごく嬉しかった。主治医もとても喜んでくれた。その後、超音波スキャンを受けたら、確か首に進行中の新たな結節が1つか2つあるという結果が出たのです。本試験のプロトコルには、新たな結節が見つかったら、試験から除外されると記載されています。これって、試験のプロトコルと患者の利益が相反していますよね。なぜならば、私が利益を得たことは明白であり、記録によると(私のがんは)70%減少して、自分で感じられる副作用や結節もなかったのです。結節はどれもとても小さくて、触って感じることができないくらいかなり内部にできたものだったのです」。

もう一つのテーマは、試験を振り返ったときの感想、場合によっては後悔である。以下、振り返って試験参加は間違いであったと考える患者の話である。「これからの半年間は、好きなように飛行機に乗れず旅行もできない。残りの人生が台無しになったようなものです。失望と怒りを覚えています。自分が思い描いた夏じゃなくなったというのが本音です。治療は終わりました。これから元気になるはずです。気分も良かったんです。そして、このへんな薬を飲み始めたら、突然、副反応が出てきちゃって、今度は肺塞栓症(PE)が発現し、これから6カ月くらい、血液希釈剤を飲み続けなければならなくなって、空手もできなくなってしまった。正気を保つためのことはすべてできなくなってしまったのです」。

本研究は非常に興味深いものであると、UPMC Hillman Cancer Center患者通院地域研究部門アソシエイトディレクターであり、ピッツバーグ大学看護学研究科看護学教授でもあるMargaret Quinn Rosenzweig氏は語った。

「本研究が焦点を当てた患者集団は、非常に重要であるのにほぼ認識されていない患者、臨床試験に参加することに同意したにもかかわらず、疾患の進行や毒性のために臨床試験を中止せざるを得ない患者です。臨床試験は、希望を与える素晴らしい治療選択肢の一つであると考えられます。多くの場合、これら臨床試験は、従来の治療法では疾患コントロールに効果がない患者に参加が提案されます。本研究論文では、臨床試験中止が意味するところに気づいた患者の不安が見事に記載されています。患者たちは、自分の疾患の状態や『次に何が来るのか』についての明確なカウンセリングを受けられず、怯えて、途方に暮れている感じを訴えています」と、電子メールで述べている。

Rosenzweig氏は、このことを現場で実感しているという。

「臨床試験への参加には、特に、これまでの治療や疾患の進行に失望していた患者にとっては大きな希望があります。臨床試験を中止しなければならない場合、患者や家族は非常に失望し、意気消沈してしまうこともあります。試験中止の理由が疾患の進行であれば、すぐに治療が必要になることがわかり、即時に不安を覚える患者もいます。試験中止の理由が毒性であれば、生じた毒性からの回復という負担がさらにのしかかります。患者が臨床試験後に別の治療法に進むことを選択した場合、その治療法では効果がほとんど期待できないのではないかと不安を感じることもあります」。

原典:https://bit.ly/3saUQnB JAMA Network Open誌オンライン版 2021年8月11日

翻訳平 千鶴

監修太田真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた 院長)

原文掲載日

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