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新型コロナワクチンとがん患者さんについてQ&A

  • 2021年3月16日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

 

Steven Pergam医師との質疑応答

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がん治療を受けている多くの人々は、COVID-19ワクチンのいずれかの接種を受けるべきかどうかを考えている。Steven Pergam医師(フレッド・ハッチンソンがん研究センターワクチン・感染症部門、シアトル)は全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)が設けた委員会の共同代表者であった。同委員会は最近、がん患者のCOVID-19ワクチン接種に関する勧告を発表した。この質疑応答の中で、Pergam医師はがん患者やがんサバイバーが抱くワクチンに対する一部の疑問に関して述べている。
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米国疾病管理予防センター(CDC)、NCCNによる勧告、他のがん関連団体は、がん患者はワクチン接種の優先順位が高い集団だと述べています。それはなぜですか。

私たちは皆、重度のCOVID-19合併症リスクが最も高い人々にワクチンを接種したいと考えています。またデータから、がん患者はそのリスクが高いことが示されています。こうした人々に極めて効果の高いワクチンを提供することは、人命を救うために重要なことです。

積極的ながん治療を受けている患者で、予防接種を受けてはいけない人はいますか。

幹細胞移植を受けたばかりの患者やCAR-T細胞療法を受けた患者は、通常、免疫抑制療法を受けているため、治療終了後3カ月以上経過するまでCOVID-19ワクチン接種を延期することを推奨します。これは、免疫抑制療法を受けている患者が、免疫が最も抑制されている時期に(他の)ワクチンを接種してもあまり効果が得られないというデータに基づいています。

積極的化学療法を受けている患者のデータはやや不明瞭です。しかし、さらに強力な強化療法を受ける患者(例えば、白血病の初回治療を開始しようとしている患者)には、細胞数の回復までワクチン接種を遅らせることを推奨します。

主にこの2つの患者集団に関して、少なくとも初めのうちはCOVID-19ワクチン接種を遅らせるべきという意見が一致していると考えます。

また、サバイバーや積極的ながん治療を受けていない人に、予防接種を受けてはいけない理由はありますか。

時期次第で答えが変わると思います。(入手できる)ワクチンの量はどのくらいか。ワクチンの量が無制限なら、誰もが接種を受けるべきです。しかし、ワクチン配分に関する問題が出てくると、それは困難になります。

しかし、多数のがんサバイバーが免疫不全であることは疑いの余地がないので、その多くが高リスク集団と考えています。また、がんサバイバーは高齢で心疾患、腎機能障害、または肺機能障害などの他の併存疾患が認められる傾向があるため、COVID-19が重症化するリスクがあります。以上の理由から、ワクチン接種が推奨されます。

また、がんと診断されたばかりの人や、パンデミックにより治療を延期している人など、近々治療を受ける可能性のある人はどうでしょうか。

NCCNの委員会で議論された方向性は、がん患者へのワクチン接種を妨げる内容のガイドラインを作成しないようにする、ということです。「適切な時期」のためにガイドラインに特別な意味合いを持たせようとし始めると、多くの患者がワクチン接種を受けないことになりかねません。したがって、ワクチン接種は受けられるときに受けておくことが最善の方法です。

それでも、いくつかの注意点があります。幹細胞移植を受けている患者や白血病の寛解導入療法を受けている患者には、接種を遅らせるよう勧めます。また、手術を間近に控えているがん患者は手術後1週間まではワクチン接種を待つべきでしょう。ワクチン接種で可能性のある副作用(例えば発熱)によって手術が延期になることは望ましくありません。

いくつか特別な注意点があるものの、われわれはできるだけ制限を設けないようにしました。

研究者らはワクチンががん患者に及ぼす有効性に関するデータを収集していますか。

骨髄移植を受けた患者におけるワクチンの有効性に関心を持っている研究グループは多いです。また、CLLやCMLなどの血液がん患者は長期間にわたり免疫不全に陥りやすいので、このような患者を調べているグループもあります。誰もがこのような患者はCOVID-19ワクチンにどう反応するのかという疑問に対する答えを知りたがっています。

多くの解析が必要になるでしょう。特定のがんを有する患者、ならびに特定の化学療法や治療レジメンを受けている患者におけるワクチンの有効性に関する研究を行ってほしいです。

がん患者やがんサバイバーがCOVID-19ワクチンによる予防効果が一般の人よりも低いという指摘はありますか。

一般集団において感染兆候を発現する症候性COVID-19に対する防御率は95%(ファイザー社とモデルナ社のワクチンによる)とされていますが、他のワクチンのデータを参考にした場合、がん患者やサバイバーではこの数値に達しない可能性が高いと考えます。95%より低くなるでしょう。しかし仮に防御率が50%だとしても、COVID-19ワクチンを接種するメリットは大きいでしょう。

また、インフルエンザワクチンと同様に、感染予防だけが目的ではなく、感染症の合併症の予防も目的としています。これらのCOVID-19ワクチンは一次感染を予防できないかもしれませんが、第3相試験において一般集団でみられたように、がん患者でもCOVID-19を発症したり、入院したりすることを防げると期待しています。非常に有用な波及効果が他にあるかもしれません。

がん患者の介護者はどうですか?彼らのワクチン接種を優先すべきですか。

この質問はもっと重要視されるべきです。ワクチン戦略に関して考えた場合、がん患者がCOVID-19ワクチンにあまり反応しないと仮定すると、がん患者を守るための最善の方法の1つは、反応の良い人にワクチンを接種することであるのは自明です。つまり一緒に時を過ごす人なら誰でもいいのです。したがって、介護者、家族、または、がん患者と親密な関係にある人は誰でも、ワクチン接種が重要です。

なぜなら、第一にCOVID-19ワクチンは介護者が感染兆候を発現するリスクを減少させますし、症状が出現した患者は周囲の人に新型コロナウイルスを感染させる可能性が高いことを示すデータがあるからです。

また第二に、ワクチン接種によって感染が防げるかどうかを評価する研究は現在も進行中ですが、利用可能なワクチンが感染を防ぐだろうと期待しているからです。もしこれが事実なら、介護者や家族がワクチン接種を受けることは本当に助けになります。なぜならこのコクーン効果、すなわち、がん患者の周囲の親しい人々にワクチンを接種することで、さらに防御できるからです。

がん患者やがんサバイバーが予防接種を受けないことを選ぶ適応はありますか。

現時点では不明です。供給連鎖の問題があったため、がん患者はワクチン接種を受け始めたばかりです。がん患者の中には躊躇する人もいると思いますが、一般の人以上に慎重になる必要はありません。がん患者は(COVID-19が重症化する)リスクを知っているからこそ、ワクチンを受け入れてほしいと思います。

私が言えることは、地元の(シアトル地域の)医療機関では、がん患者がワクチン接種を切望していることです。医師は患者から入荷時期や接種時期に関する問い合わせの電話を多く受けているので、大変な思いをしています。患者はリスクを知っており、自分の身を守る機会と捉えています。その認識は素晴らしいことです。そして私はそれが持続するよう願っています。

これからの数カ月間で、予防接種への取り組みはどのように変化していきますか。

誰もが気付いていることの1つは、COVID-19ワクチンのガイドラインが時間とともに変化することです。また、それには理由が2つあります。1つ目は、より多くのデータが利用可能になるためです。小規模研究でも、非常に有益な情報を提供できます。2つ目は、より多くのワクチンが販売される、つまり、ジョンソン・エンド・ジョンソン社とアストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンが間もなく販売されるかもしれないことです…。また、現在臨床試験中のノババックス社製品などのタンパク質サブユニットワクチンがあります。

他のワクチンにより、より多くの人々が接種を受けられるようになると期待します。一方で、がん患者により適した特定のワクチンがあるかもしれないので、より多くのデータを確認する必要があります。

米国がん研究所(NCI)、米国国立衛生研究所(NIH)、他の資金提供機関がこのような研究を支援することを大いに期待します。がん患者に最も有効なワクチンを選択し、接種対象者や接種時期の決定を促すことは非常に重要です。私たちは患者を防御する方法をできるだけ理解するために、医療提供者にとって実用的で有用な臨床試験を考案しているところです。今後もパンデミックに対処し、新型コロナウイルスから患者を防御し続けるためには、このことが非常に重要です。

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がん患者とがんサバイバーのためのCOVID-19ワクチン接種の情報(すべて英語)

NCIのCOVID-19情報ページ

米国疾病管理予防センター

米国臨床腫瘍学会

全米総合がん情報ネットワーク

米国血液学会/米国移植・細胞治療学会

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翻訳渡邊 岳

監修廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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原文掲載日

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