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ビタミンD3サプリメントはがんの進行と死亡リスク低下に関連か

ビタミンD3のサプリメントを摂取している適正体重の健常な人では、進行がんと診断されるリスクが低いことが新しい研究で示された。

研究者らは、約26,000 人が参加したランダム化比較試験の二次分析データにおいて、 D3サプリメントを摂取した参加者では、平均5.3年間のフォローアップ追跡期間中、転移がんや致死的ながんのリスク減少が認められた、とJAMA Network Open誌で報告している。

「さまざまな患者群の二次分析の結果、試験開始時にがんがなかった人がビタミンDを1日に2,000 IU摂取することにより、進行がんの発症リスクが全体で17%低下、BMI(肥満度指数)25未満の人々では38%低下したことがわかりました」とPaulette Chandler医師は述べた。同医師は本研究の筆頭著者であり、ブリガム&ウィメンズがんセンター予防医学部門の疫学者、ハーバード大学医学大学院医学部助教である。「体重過多や肥満の参加者に有意なリスク減少はみられませんでした」。

この論文は、ビタミンDがどのようにがんリスクを減らしうるかの作用機序については解明していないと Chandler医師は述べた。「しかしながら、われわれは17の異なるがんでリスク減少を確認しました」と彼女は補足した。「そして、それはビタミンD値によるのではありません。ほとんどの参加者では試験開始時にビタミンDは正常値であり、がんリスク減少効果はビタミンDの数値とは無関係でした」。

ビタミンDはナチュラルキラー細胞を活性化することで免疫機能を調節する可能性があり、そのことは他の研究でも示唆されているとChandler医師は述べている。

Chandler医師は、BMIが25以上の人に効果が認められないことについて、肥満ががんリスクに与える影響と関連している可能性を示唆している。「肥満でリスクが増加するがん種が13種類あります」と彼女は述べた。「このことは肥満の増加に対処することの重要性を強調しています」。

ビタミンD3の補充が進行がんのリスクに影響を与えうるかどうかを調べるためにChandler医師らは、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、2×2要因でデザインされたVITAL試験(ビタミンD・オメガ3試験)のために収集されたデータを分析した。

VITAL試験は、当初、2つのサプリメントによるがんと心血管疾患(CVD)の予防効果を検討するためにデザインされ、ベースライン時50 歳以上の男性と55 歳以上の女性から成る25,871人が参加した。参加者は、ビタミンD3、(海洋性)オメガ3脂肪酸、その両方、両方のプラセボの投与を受けるようにランダムに割り付けられた。

試験の参加資格は、開始時に(メラノーマを除く)がん、または心血管疾患の既往歴がないことであった。その他の除外基準には、腎不全または透析、肝硬変、高カルシウム血症の既往歴、または参加が困難となるような重篤な状態が含まれた。

すべての参加者には、ランダム化の前に3カ月間の導入期間を設けた。介入期間の中央値は5.3年(範囲:3.8~6.1年)であった。試験開始当初の血液サンプルは導入期間中に採取された。

がんの発生率には群間で有意差は認められなかったが、プラセボ群と比較してビタミンD群に割り付けられた参加者で進行がん(転移がんまたは致死的ながん)が有意に少なかった。進行がんを発症したのは、ビタミンD投与群では12,927人のうち226人(1.7%)であったのに対して、プラセボ投与群では12,944人のうち274人(2.1%)で、ハザード比(HR)は0.83であった。

研究者らがBMIによって結果を層別化すると、BMI<25のビタミンD投与群でさらに大きなリスク減少が認められた(HR:0.62)が、BMI≧25の参加者に有意なリスク減少は認められなかった。

「がん予防試験の『聖杯(至高の目標)』は、忍容性が高く、長時間作用や遅効性がなく、がんの死亡を減少させる薬やサプリメントです」とCharles Shapiro医師は述べた。彼は、マウントサイナイ・アイカーン病院(ニューヨーク・シティ)の内科学教授、トランスレーショナル乳がん研究部長、がんサバイバーシップ部長である。 「ビタミンD3は『聖杯』のサプリメントでしょうか?(本研究によれば)可能性はあります」。

それでもShapiro医師は、次のように警告している。まず、最初の試験ではがん発生への影響がみとめられなかったが、それはビタミンD3ががんの発生に影響するのではなく、がんの進行にのみ影響を与えるためである可能性がある、と述べる。

「さらに、がんの転移や死亡の減少が認められたのは、適正体重指数である個人でのみでした」とShapiro医師は電子メールで述べた。「体重過多や肥満の参加者では、がん転移や死亡の有意な減少がみられませんでした」。

また、Shapiro医師は「これにはもっともらしい説明もあります。すなわち、 BMI高値は炎症を誘発するとともに、脂溶性ビタミンD3 の吸収を妨げます」と述べた。彼は今回の研究には関与していない。

「ビタミンD3サプリメントは、最も注目を集めるサプリメントとしての準備が整ったと言えるでしょうか?」Shapiro医師は続ける。「今回の二次分析からは、私はそうは思いません。しかし、ビタミンD3を補充して体内のビタミンD3値を維持することは、骨の健康と骨量減少の抑制のために不可欠です」。

引用:JAMA Network Open誌、2020年11月18日オンライン版

翻訳山本哲靖

監修大野 智(補完代替医療、免疫療法/島根大学・臨床研究センター)

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