ダナファーバー、米国臨床腫瘍学会(ASCO2019)にて70件超の研究知見を発表

• これらの試験は60を超えるダナファーバーがん研究所の研究チームの業績を代表するものである
• 研究者3人は、学会最高の名誉であるASCO特別賞の受賞者である

ダナファーバーがん研究所の研究者らは、シカゴで5月31日~6月4日に開催される2019年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で70件を超える研究試験を発表する。ASCOは世界最大の臨床がん研究集会であり、世界中から30,000人を超える腫瘍専門医が参加する。

ダナファーバーがん研究所が主導する60を超えるさまざまな研究チームによる最新のがん研究知見は、「あらゆる患者をケアし、あらゆる患者から学ぶ」という2019年のASCOのテーマに沿ったものである。これらの知見は乳がん、肺がん、多発性骨髄腫、肉腫、白血病をはじめとするさまざまな領域における新たな治療や診断の進歩を示している。

著者:Paul G. Richardson医師
標題:再発/不応性多発性骨髄腫(RRMM)患者を対象に、イサツキシマブ + ポマリドミド + 低用量デキサメタゾンをポマリドミド + 低用量デキサメタゾンと比較する第3相ランダム化非盲検多施設共同試験
アブストラクト#8004
セッション日時:6月2日(日)午前9時45分~午後12時45分。血液悪性腫瘍-形質細胞疾患。発表時刻:午前10時57分。
ダナファーバーがん研究所の研究者が主導する第3相臨床試験では、再発・治療抵抗性多発性骨髄腫患者でモノクローナル抗体であるイサツキシマブをポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンと併用することにより、無増悪生存期間を有意に延長できることが示された。患者307人が参加したこの試験では追跡期間中央値11.6カ月の時点で、3剤併用群の無増悪生存期間中央値が11.5カ月であったのに対し、ポマリドミド + デキサメタゾンによる標準治療群では6.5カ月であった。3剤併用群で認められた奏効率60.4%も、標準治療群の35.3%をはるかに上回っていた。3剤併用による副作用は管理可能なものであったと研究者らは報告した。

著者:Otto Metzger Filho医師
標題:T-DM1 + ペルツズマブによる術前化学療法に対する反応の予測因子としてのHER2不均一性:前向き臨床試験の結果
アブストラクト#502
セッション日時:6月3日(月)午前9時45分~午後12時45分。乳がん-局所/領域/術後化学療法。発表時刻:午前10時9分。
乳がんの抗HER2療法への反応にHER2不均一性が及ぼす影響を調査するようデザインされた最初の臨床試験を実施した。HER2不均一性とは、1つの腫瘍内にHER2増幅レベルが異なる2つ以上の異なる細胞クローンが存在することと定義される。HER2陽性乳がんと診断された患者の抗HER2標的療法への反応に、HER2不均一性が影響を及ぼすか否かは不明である。この疑問を解明するため、ステージ2およびステージ3のHER2陽性乳がん患者を対象としてトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)とペルツズマブを術前に投与する試験を実施した。米国病理学会の定義に基づき不均一性を評価したところ、評価可能患者の10%でHER2不均一性が認められた。本試験は、HER2不均一性と術前化学療法後の病理学的完全奏効(pCR)との有意な関連性が示されたことにより主要エンドポイントに達した。HER2不均一に分類された症例では病理学的完全奏効は認められなかった。

著者:Lynda M. Vrooman医師
標題:小児期急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫におけるペグアスパラガーゼ(pegaspargase)とカラスパルガーゼペゴル(calaspargase pegol)の有効性と毒性:DFCI 11-001試験の結果
アブストラクト#10006
セッション日時:5月31日(金)午後2時45分~午後5時45分。小児腫瘍学I。
ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センターの研究者らが主導する多施設共同臨床試験は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の新規治療薬に対する米国食品医薬品局(FDA)の承認取得に貢献した。急性リンパ芽球性白血病と新たに診断された患者を対象とした本ランダム化比較試験では、体内での長期活性を目的として設計された新規のペグ化アスパラギナーゼ製剤であるcalaspargase pegol(カラスパルガーゼペゴル)の有効性と毒性を、標準治療薬であるpegaspargase(ペグアスパラガーゼ)と比較した。標準治療のように2週ごとに投与するのではなく3週ごとに投与したところ、カラスパルガーゼペゴルにより同等の全生存期間、無イベント生存期間および安全性プロファイルが得られた。2018年12月、米国食品医薬品局は急性リンパ芽球性白血病の小児および若年成人患者の治療薬としてカラスパルガーゼペゴルを承認した。

著者:Sarah Abou Alaiwi医師
標題:チェックポイント阻害剤(ICI)を投与したがん患者(pts)におけるpolybromo-associated baf(PBAF)複合体変異と全生存期間(OS)の関連性
アブストラクト
#103
セッション日時:6月1日(土)午前8時~午前9時30分。チェックポイント阻害の微調整:反応バイオマーカーと抵抗性バイオマーカー。
遺伝子調節に関与し腫瘍抑制因子であることが示唆される「哺乳類SWI/SNF複合体」のサブユニットの遺伝子変異は、ヒト悪性腫瘍の約20%で認められる。本試験ではチェックポイント阻害剤を投与した固形がん患者684人を対象に、哺乳類SWI/SNF複合体遺伝子変異が臨床転帰と関連するか否かを検討した。予備分析ではこれらの患者において、PBAFとして知られる哺乳類SWI/SNF複合体のサブコンプレックスの変異と全生存期間の延長との相関性が示唆された。より大規模な患者コホートを対象に、6つの哺乳類SWI/SNF遺伝子の変異とその他の臨床転帰変数について検討した最新の分析を発表する。

著者:Pasi A. Janne医師、博士
標題:U3-1402の安全性と予備的抗腫瘍活性:上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)抵抗性EGFR変異(EGFRm)非小細胞肺がん(NSCLC)におけるHER3抗体薬物複合体
アブストラクト#9010
セッション日時:5月31日(金)午後1時~午後2時30分。EGFRとROS1:抵抗性を標的に。
EGFR遺伝子変異を有する転移性または手術不能非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした第1相試験では、抗体とトポイソメラーゼ阻害剤からなる薬物複合体は安全であると判断され、その抗腫瘍活性が示されたことをダナファーバーがん研究所の研究者らが報告する。本試験には腫瘍中の上皮細胞増殖因子受容体タンパク質を標的とした薬剤による治療後にがんの悪化が認められた患者15人が参加した。U3-1402として知られる薬物複合体には、EGFR変異肺がんの大半でその発現が認められるHER3タンパク質を標的とする抗体が含まれる。トポイソメラーゼI阻害剤と結合したこの抗体により、阻害剤は直接腫瘍細胞に送達されそこで毒素として作用する。評価可能な患者13人のうち、1人を除く全患者で腫瘍縮小が認められ、この治療による一連の副作用は管理可能なものであった。

著者:Andrew J. Wagner医師、博士
標題:進行悪性血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)におけるABI-009[アルブミン懸濁型(nab)-シロリムス]:非盲検第2相登録試験であるAMPECT試験での予備的有効性、安全性および変異ステータス
アブストラクト#11005
セッション日時:6月3日(月)午前8時~午前11時。肉腫。発表時刻:午前9時24分。
承認された治療法がないまれな悪性度の高い肉腫である悪性血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)を対象とした最初の前向き臨床試験において、新規化合物により参加患者のほぼ半数で奏効が得られ、副作用は管理可能なものであったことをダナファーバーがん研究所の研究者らが報告する。この化合物は、悪性血管周囲類上皮細胞腫瘍で発現することが多いmTORタンパク質の阻害剤であるABI-009である。AMPECT試験と称される本試験に参加した患者31人のうち、13人(42%)で本剤による部分奏効が認められ、若干の病変縮小がみられた。35%で安定が、23%で疾患の悪化が認められた。部分奏効例の69%は効果が持続しており、患者5人は治療後1年間を超えて、2人は2年間を超えてもベネフィットが得られている。TSC2遺伝子変異のある腫瘍を有する患者の方が、TSC2またはTSC1変異のない患者よりもはるかに治療に対する効果が得られるようであった。最も多くみられたグレード3(重度)の副作用は粘膜炎および貧血であった。

ダナファーバーの研究者3人は学会最高の名誉であるASCOの特別賞の受賞者でもある。
Robert J. Mayer[医師、ASCOフェロー(FASCO)、ダナファーバーがん研究所学務部副部長、ブリガム&ウィメンズ病院上級医師兼ハーバード大学医学部Stephen B. Kay内科教授]はDistinguished Achievement Awardの受賞者であり、授与は6月2日(日)午後1時に行われる。
Ann H. Partridge[医師、公衆衛生学修士、ASCOフェロー、ダナファーバーがん研究所腫瘍内科副部長、成人サバイバープログラム(Adult Survivorship Program)および若年乳がん女性プログラム(Program for Young Women with Breast Cancer)責任者、ハーバード大学医学部内科教授]は、Ellen L. Stovall Award and Lecture for Advancement of Cancer Survivorship Careの受賞者であり、授与は6月3日(月)午前11時30分に行われる。
Judy E. Garber[医師、公衆衛生学修士、ASCOフェロー、ダナファーバーがん研究所Susan F. Smith Chair兼がん遺伝学・予防部門長、ハーバード大学医学部内科教授]は、ASCO-American Cancer Society Award and Lectureの受賞者であり、授与は6月3日(月)午後1時15分に行われる。

翻訳担当者 石塚かおり

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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