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小児MATCH試験では予想以上の頻度で治療標的遺伝子変異を検出

ASCOの見解
「現在、私たちはがんを患う多数の子供たちを治療していますが、その多くはより良い治療を必要としています。本研究の結果により、小児がん治療は高精度医療時代に一歩近づくことでしょう。小児がんにおいて標的可能な遺伝子変異が非常に多く存在することがわかった今、私たちは成功率を上げる絶好の機会を迎えています」と、ASCO会長のMonica M. Bertagnolli医学博士(FACS、FASCO)は述べた。

2017年にアメリカ国立がん研究所(NCI)米国小児腫瘍学グループによる治療選択のための小児の分子解析試験(NCI-COG Pediatric MATCH試験)が開始された時点では、難治性がん(治療に反応しないがん)に罹患した小児、青年、および若年成人の腫瘍の遺伝子解析により試験参加者の10%で試験的な標的治療に適合する遺伝子変異を検出できると推測されていた。
スクリーニングを受けた400人以上の患者を対象とした中間解析では、適合率が有意に高く、試験参加者の24%が本試験で調査される少なくとも1種類の薬剤を使用した治療の候補となった。本研究の最新結果は、 シカゴで開催される2019年ASCO年次総会で発表される予定である。

試験開始時に推測された10%という適合率は、難治性小児がんではなく、小児がんの初回診断を受けた患者に焦点をあてた小児科の特定疾患研究の知見や、NCI-MATCH試験など成人が対象の類似する試験の知見に基づくものであった。

「我々の研究は治療抵抗性のがんを患う小児、青年、若年成人のための全国的な分子スクリーニング試験を開発できることを示しています」。
「全米の小児がん患者の標的治療へのアクセスを拡大することは我々の主な目標のひとつですが、それに手が届くところまできていることを本試験の早期結果は示唆しています」と、米国小児腫瘍学グループ(COG)の研究代表者でありテキサス州ヒューストンのベイラー医科大学の小児腫瘍学准教授であるWill Parsons医学博士は述べた。

また、「我々は小児、青年、若年成人のがんの理解および治療における官民連携の価値を強調した本試験の早期結果に勇気づけられています」。
「Pediatric MATCH試験は、NCI、COG、米国食品医薬品局、製薬会社、その他の主要な小児がん研究のステークホルダーの積極的な協力に基づいて行われています」と、NCI臨床研究科のがん治療評価プログラムの小児固形がん診療科長でありNCI研究代表者であるNita Seibel医学博士は述べた。

高精度医療の治療アプローチは小児がん患者の日常的な治療には取り入れられてこなかったが、Pediatric MATCHなどの試験を通し、現在研究が行われている。現在、小児がんの治療で承認されている標的治療は少数にとどまっている。それに対し、成人のがんでは150の標的治療が米国内で承認されている。これらの理由によりASCOは本年、「小児がんの高精度医療研究と治療アプローチの拡大」を最優先すべき研究に指定した[1]。

本研究について
NCI-COG Pediatric MATCH試験は、初の全国規模の小児がん高精度医療の臨床試験であり、標準療法に反応しなかった小児がん患者を対象としている。この研究では、各患者のがんにおける特定の遺伝子変異を見つけ、(がんの種類に関係なく)それらの遺伝子変異を標的とした薬剤を患者に割り当て、治療の影響を評価する。試験参加者はまずスクリーニングプロトコルに登録される。スクリーニングでは、腫瘍の遺伝子解析が行われ、遺伝子変異と標的治療の関連を示す過去のエビデンスに基づいて、治療に適合する遺伝子変異が特定される。試験参加者において適合する組み合わせが見いだされた場合、それ対応したPediatric MATCH(Pediatric MATCH)第II相臨床試験への登録の申し出が患者に対して行われる。現在は、Pediatric MATCH試験の一環として10種類の標的治療が研究対象となっている。

2018年末現在、本研究には1〜21歳まで(中央値13歳)の422人の小児、青年、および若年成人が登録されており、COGに参加している米国内の約100の医療機関の患者が含まれている。試験参加者には、脳腫瘍の患者101人(24%)、他の固形腫瘍の患者300人(71%)、免疫系に影響を及ぼす希な疾患であるリンパ腫または組織球性疾患の患者21人(5%)が含まれている。本研究の調査対象である10種類の標的治療のいずれかに適合する遺伝子変異を特定するため、390人の患者の腫瘍検体が提供され、160種類以上の遺伝子のDNAおよびRNAシーケンシングが行われた。対象となった標的治療の以下の通りであり、その多くは初めて小児を対象として調査される。
larotrectinib[ラロトレクチニブ]: NTRKを標的とする
erdafitinib[エルダフィチニブ] : FGFRを標的とする
tazemetostat[タゼメトスタット] : EZH2および他のSWI / SNF複合体遺伝子を標的とする
LY3023414 : PI3K / MTOR経路を標的とする
selumetinib[セルメチニブ]: MAPK経路を標的とする
ensartinib[エンサルチニブ] : ALKまたはROS1を標的とする
vemurafenib[ベムラフェニブ] : BRAFを標的とする
olaparib[オラパリブ] : DNA損傷修復の欠陥を標的とする
palbociclib[パルボシクリブ]: 細胞周期遺伝子を標的とする
ulixertinib[ウリキセチニブ] : MAPK経路を標的とする

主な研究結果
腫瘍の解析は、357人の患者(92%)について行われた。試験で使用された10種類の薬剤のいずれかの標的となる遺伝子変異(変異、融合、遺伝子コピー数の変化)は、112人の患者(29%)で特定され、そのうち95人の患者(24%)は本試験で受けることのできる10種類の治療の対象となった。2018年末現在、39人の患者(10%)がPediatric MATCH試験の臨床試験に参加しているが、今後さらに適合する患者が治療を受けることができる。

標的遺伝子変異は、脳腫瘍の患者の40%以上、他のがん(脳腫瘍以外の固形腫瘍、リンパ腫、および組織球性疾患)の患者の25%以上で検出され、小児の腫瘍のスクリーニングが一般的ながんと希少ながんの両方において有効であることが示された。また、本研究では年齢の低い患者(12歳未満)とより年齢の高い子供、青年および若年成人との間に標的検出率の有意差は見られなかった。

Pediatric MATCH試験で検出された標的遺伝子変異には多様ながん遺伝子が含まれていた。RAS遺伝子変異が16人と最も多く見られ、続いてBRAF変異または融合が14人、SMARCB1の突然変異または欠失が14人、NF1変異11人が検出されるとともに、10人未満の患者で見られる遺伝子変異が多数検出された。

次のステップ
各腫瘍で特定された遺伝子変異が遺伝性のものであり、患者とその家族が追加的な遺伝子検査を受ける必要があるか否かを調査するため、腫瘍検体に加え血液試料の遺伝子シーケンシングも本研究の一環として行われている。これらの結果は、がんリスク、追加の遺伝子検査の必要性、がん予防のためのスクリーニングの戦略について医師が家族に情報提供する際に役立つ可能性がある。

Pediatric MATCH試験では、少なくとも1,000人の患者を登録する予定である。薬物療法を適用できる患者数をさらに増やすため、試験担当医師は本試験の標的治療の追加を継続する予定である。現在は追加として4種類の薬剤のプロトコルを開発中である。本試験の将来的な適応拡大戦略としては、薬剤の併用療法や免疫療法の調査、最適な分子解析の計画と患者の治療群への割り当てが含まれる可能性がある。

本研究は国立衛生研究所の一部である国立がん研究所から資金提供を受けている。

試験の概要
研究対象:小児、青少年および若年成人のがん患者を対象とし、患者に適合する分子標的治療を探す目的での腫瘍スクリーニング使用に関する評価。
試験の種類:腫瘍スクリーニングのプロトコルと多施設共同第2相臨床試験
登録患者:422人
治療内容:10種類の分子標的治療の標的となり得る160種類以上の遺伝子の変異を検査するための腫瘍シーケンシング
主な知見:腫瘍シーケンシングを受けた患者のうち24%が本臨床試験で行われる標的治療の候補である
副次的知見:腫瘍シーケンシングを受けた患者の10%が本臨床試験で行われる標的治療をすでに受けている

アブストラクト全文はこちら

[1]ASCO: Nine Research Priorities to Accelerate Progress Against Cancer. https://www.asco.org/research-progress/reports-studies/clinical-cancer-advances-2019/nine-research-priorities-accelerate

翻訳髙橋多恵

監修髙濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学奈良病院)

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原文掲載日

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