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小児中枢神経系がんにEntrectinibが奏効

Entrectinib[エヌトレクチニブ]が特定の遺伝子融合を有する中枢神経系がんなどの小児・青年期患者に奏効

ASCOの見解

「分子標的がん治療薬については、成人を対象とした研究に比べて、小児を対象とした研究はわずかしかありませんでした。今回のデータはごく初期段階のもので、さらに研究を続ける必要がありますが、小児がんには腫瘍のタイプや部位よりも腫瘍遺伝学に基づいた一次治療が極めて有効である可能性を示唆しています」と、FACS(米国外科学会フェロー)、FASCO(米国臨床腫瘍学会フェロー)でもあるASCO会長のMonica M. Bertagnolli医師は述べた。

希少な中枢神経系腫瘍、神経芽腫、またはその他の固形腫瘍を有する4.9カ月から20歳までの患者29人を対象とした第1/1B相試験において、評価可能な患者28人のうち12人に、新たな標的治療薬であるエヌトレクチニブによる奏効がみられた。この治療法が奏効した小児患者12人のうち11人がNTRK1/2/3、ROS1、またはALKの遺伝子融合を有し、1人がALK変異を有していた。本研究は近々シカゴで開催される2019年ASCO年次総会で発表される予定である。

「今回の結果は、他の従来の治療法が奏効しなかった致死的小児がん患者にも大いに有益である可能性を示しています。迅速で持続的な一定の奏効がみられたのは大変喜ばしいことです」と、テネシー州メンフィスのセント・ジュード小児研究病院の小児神経腫瘍医である著者Giles W. Robinson医師は述べている。「この初期知見は、特定の遺伝子融合を有する腫瘍患者に対してこの治療法が大いに有望であることを示唆しています」。

エヌトレクチニブは経口薬であり、中枢神経系(CNS)にも浸透してNTRK1/2/3、ROS1、およびALKの遺伝子変異に関連するタンパク質経路を阻害することにより、がん細胞死を促進する。他の薬剤が通常は単一の変異に対してのみ有効であるのに対して、エヌトレクチニブは複数の変異を標的としており、作用範囲が広いという点で同じクラスの他の薬剤とは異なる。

試験について

2018年10月31日時点でSTARTRK-NG臨床試験には中枢神経系腫瘍、神経芽腫、またはその他の固形腫瘍を有する4.9カ月から20歳まで(年齢中央値7歳)の患者29人が登録された。中枢神経系腫瘍を有する患者の大半は腫瘍除去手術の後に放射線治療を受けていた。

第1相試験は至適投与法の評価を目的として設計されており、腫瘍にNTRK1/2/3、ROS1、およびALKの遺伝子変異がみられた患者を集中的に調べるために拡大された。全体では登録した29人の患者のうち12人の腫瘍にNTRK1/2/3、ROS1、またはALK遺伝子の融合または変異がみられた。

完全奏効は、腫瘍の完全消失および神経学的改善または安定と定義した。部分奏効は、固形腫瘍については30%以上の腫瘍縮小、中枢神経系腫瘍については50%以上の腫瘍縮小、および神経学的安定とした。病勢進行は、固形腫瘍については20%以上の腫瘍増大、中枢神経系腫瘍については25%以上の腫瘍増大、または神経学的状態の悪化とした。病勢安定は、がんが進行も退縮もせず変化がみられないことと定義した。

主要な知見

治療期間中央値281日において、計12人の患者にエヌトレクチニブによる客観的奏効(腫瘍の縮小または消失)がみられた。奏効までの期間の中央値は57日で、いずれも400 mg/m2(体表面積あたりミリグラム)以上の用量で奏効が得られた。エヌトレクチニブの標的となる変異を持たない患者には奏効がみられなかった。

各患者の奏効とそれに対応する変異データを以下に示す。
・中枢神経系腫瘍:評価可能な中枢神経系腫瘍を有する患者5人のうち、全員に客観的奏効がみられた。完全奏効が1人(ETV6-NTRK3遺伝子融合)、部分奏効が4人(うち3人でTPR-NTRK1、EEF1G-ROS1、EML1-NTRK2の遺伝子融合を確認、1人が未確認のGOPC-ROS1遺伝子融合)であった。残る1人の中枢神経系腫瘍患者については未評価である(KANK1-NTRK2遺伝子融合)。
・頭蓋外腫瘍:頭蓋外腫瘍(中枢神経系の外側に発生する固形腫瘍)を有する患者6人に客観的奏効がみられた。完全奏効が1人(DCTN1-ALK遺伝子融合)、部分奏効が5人(TFG1-ROS1、EML4-NTRK3、KIF5B-ALK遺伝子融合が1人ずつ、ETV6-NTRK3遺伝子融合が2人)であった。がんの種類は、炎症性筋線維芽細胞腫瘍が3人、乳児線維肉腫が2人、黒色腫が1人であった。
・神経芽腫:1人の患者が完全奏効となった(ALK F1174L変異)。

Robinson医師によれば、エヌトレクチニブの忍容性は良好であり、薬効消失期間や毒性限度到達時間はまだ研究されていないようである。

小児に対するエヌトレクチニブの推奨用量は1日1回550 mg/m2であった。顕著な副作用としては、疲労、クレアチニン値の上昇、味覚消失に至った味覚異常があった。さらに高用量では肺水腫を発症して肺に水がたまった患者が1人いた。まれな副作用として体重増加が1人にみられたが、がんの治療薬ではあまりみられないことである。これらの副作用から、投与量を400 mg/m2に減じた。

次の段階
本臨床試験への登録は継続中である。エヌトレクチニブの有効性の立証を目的とする第2相試験の募集が間もなく開始される。研究者らは、投与中および投与後の長期的副作用および奏効持続期間も見極めたいとしている。

本研究はF. Hoffman-La Roche Ltd.社から資金提供を受けた。研究のデザインおよび実施についてはAlex’s Lemonade Stand Center of Excellenceからも支援を受けた。

 

試験の概要

研究対象 

TrkA/B/C、ROS1、およびALKキナーゼの経路に変異を持つ中枢神経系腫瘍および再発固形腫瘍を有する小児および青年期患者における分子標的療法に対する反応

試験の種類

1/1B相臨床試験

登録患者

第1相および第1B相において29人

治療内容 

エヌトレクチニブ

主な知見

特定のキナーゼ経路に変異を有する試験参加者の全員に完全奏効または部分奏効がみられた。

副次的知見

特に悪性度の高い中枢神経系腫瘍において有望な結果が得られた。

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翻訳角坂功

監修山崎知子(頭頸部・甲状腺・歯科/宮城県立がんセンター 頭頸部内科)

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原文掲載日

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