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ASCOアドバンス・オブ・ザ・イヤーは希少がん治療における進歩

ASCOは医療の進歩に関する報告書にて、がんコミュニティ向けに最優先研究課題を初めて発表し、政府資金の影響を強調した。

ここ1年の主要な研究の進歩によって、希少で、治療が難しいがん患者に対して新しい治療の選択肢がもたらされた。これらの功績を認め、米国臨床腫瘍学会(ASCO)ではアドバンス・オブ・ザ・イヤーとして「Progress in Treating Rare Cancers(希少がん治療における進歩)」を選んだ。この前進にはずみをつけるため、ASCOはさらに、がん医療の進歩を加速させる最優先研究課題(Research Priorities)リストを初めて発表した。これらをはじめとするがん研究に関する画期的出来事は、本日発表されたASCO年次報告書Clinical Cancer Advances(がん治療の進歩に関する年次報告書)に掲載されている。

「わずか1年の間に、これほど大きな進歩が特に希少がんに関してみられたことに興奮しています。米国におけるがん症例が今後10年で約3分の1増加し始めることを考えると、命を救う研究を進め続けなければなりません」と、FACS(米国外科学会フェロー)、FASCO(米国臨床腫瘍学会フェロー)でもあるASCO会長のMonica Bertagnolli医師は述べた。「米国政府の資金投資は、進歩の継続にとって重要な役割を果たします。それは希少がんであれ、一般的ながんであれ同じです。これから数年間、がん研究への政府資金援助を優先させる必要があります。米国国民が頼りにしています」。

アドバンス・オブ・ザ・イヤー:希少がん治療における進歩

米国で毎年がんと診断されたすべての患者のうち、約20%が希少がんであるが、その治療の進歩は一般的ながん種の治療に後れをとってきた。しかし、この1年間、5つの希少がんにおける研究および規制当局の成果は非常に顕著であり、ASCOのアドバンス・オブ・ザ・イヤーの勝因となった。
未分化甲状腺がん(ATC): FDAはこのタイプの甲状腺がんに対する治療をほぼ50年ぶりに承認した。その治療とは、BRAF変異を有するATC患者を対象とした、ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)とトラメチニブ(商品名:メキニスト)を併用する分子標的療法である。この治療法により、試験参加者の3分の2以上において腫瘍の縮小が認められた。
デスモイド腫瘍: ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)は、この希少肉腫の患者の無増悪生存期間を延長させる最初の治療となった。
前腸、中腸および後腸の神経内分泌腫瘍: FDAはルテチウム177ドタテート(商品名:ルタセラ)を承認した。本剤は標的放射能を腫瘍細胞に送達する。ソマトスタチン受容体陽性の中腸がん患者を対象とした試験では、本剤により疾患進行または死亡のリスクが79%低下したことが示された。
子宮漿液性がん: トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)は、最も進行の早い子宮体がんのひとつである、HER2陽性の子宮漿液性がんの進行を遅延させたことが示された。
腱滑膜巨細胞腫: 関節で発症するこの希少がんに対する最初の有望な治療薬ペキシダルチニブの研究で、患者の約40%において奏効が示された。

この進歩は、がんの臨床研究に対して数十年継続された米国政府からの支援なしでは成し得なかった。米国国立衛生研究所(NIH)の支援を受け、現在も進行中である複数の先進的研究は、希少がんに関する重要な見識をもたらし、またアドバンス・オブ・ザ・イヤーで紹介された5つの研究のうち3つは、米国政府から資金提供を受けたものである。

がんに対する医療の進歩を進めるための9つの最優先研究課題

ASCOは今後のがん研究で注力すべき特定分野を初めて指定した。順不同で列挙されたこれらの最優先課題は、きわめて重要でありながら依然としてニーズが満たされていない分野や、臨床的意思決定を大きく改善することができる知識格差がみられる分野を表している。ASCOが指定する最優先研究課題は以下のとおり:
1.  免疫療法に対する反応がさらに予測される戦略を特定する。
2.  術後(アジュバント)療法で利益を受ける患者集団を特定する。
3.  細胞治療の技術革新を固形腫瘍にも落とし込む。
4.  小児がん患者を対象としたプレシジョンメディシン(precision medicine)の研究および治療のアプローチを増やす。
5.  高齢者のがん患者に対するケアを最適化させる。
6.  がんの臨床試験への公平なアクセスを増やす。
7.  がん治療による長期的影響を減らす。
8.  肥満、および肥満ががんの発症率や転帰に与える影響を減らす。
9.  前がん病変の特定および治療の戦略を特定する。

「これらの優先課題は、次世代のがん治療法を探し、がんが患者の生活に与える影響を減らすためのわれわれの展望を反映しています」と、FACP(米国内科学会フェロー)、FSCT、FASCOでもあるASCO副会長および最高医学責任者のRichard L. Schilsky医師は述べた。「がんの予防からサバイバーシップにおよぶ、これらの最優先課題は、進歩が最も必要とされる分野や最も有望な分野を特定するねらいがあります」。

政府が研究に資金提供する理由

この半世紀の間、米国政府の研究投資は、最も重要ながんの予防および治療における進歩の多くの原動力となった。報告書「Clinical Cancer Advances 2019」に掲載された医療進歩の3分の1近くが、NIHその他の政府当局による資金提供を受けたものである。米国政府による資金提供を受けた研究はまた、何十億ドルもの新たな経済活動をもたらし、何十万もの雇用を支えた。ASCOの2018年National Cancer Opinion Survey(米国がん世論調査)によると、アメリカ国民の67%は、米国政府ががんの治療法と治癒法の探究のためにより多くの資金を使うべきであり、たとえそれが増税や赤字拡大になろうとも必要であるとしている。

ここ3年の間、NIHおよび米国国立がん研究所(NCI)に向けた米国連邦議会からの資金援助が増えているが、NCIの予算は数年停滞していたため景気後退前のレベルにようやく到達しつつあるところで、NCIは新たな研究提案のごく一部にしか資金支援できていない。

「Clinical Cancer Advances」は現在第14版であるが、asco.org/CCAおよびJournal of Clinical Oncologyで公表されている。
今年の報告書に掲載されている上位(約20%)進歩の中には、ASCOの基金であるConquer Cancer(がん撲滅基金)により実現したものや、腫瘍学の研究にキャリアを積み続けて助成金を受けた過去の研究者が主導したものも含まれる。Conquer Cancerは、いかなる場所でも、いかなるがん患者にとっても利益となる、がんのあらゆる面の研究に資金を提供する。

翻訳瀧井希純

監修東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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