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Moxetumomab Pasudotox、有毛細胞白血病の新たな選択肢

  • 2018年7月4日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

有毛細胞白血病(HCL)はまれな白血病であるが、HCL患者に新たな治療選択肢が近日中にもたらされる可能性が、第3相国際共同臨床試験により明らかになった。本試験では、それ以前の治療後にHCLが再発/進行した患者を対象としたが、対象患者の4分の3で毒素を主成分とした製剤であるmoxetumomab pasudotox (Moxe)を用いた治療が奏効した。

 

患者80人中33人(41%)で治療中にHCLが完全に消失した。6カ月にわたる追跡調査後も33人の患者の70%超でHCLの再発が認められなかった。本試験結果は、シカゴで6月2日に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

 

「Moxeは再発性/難治性HCL患者の選択肢となります。Moxeを用いればさらなる化学療法を受ける必要がなくなりますし、長期転帰が改善する可能性もあります」と、この試験の責任者であるNCIがん研究センター(CCR)のRobert Kreitman医師は述べた。

 

毒素を標的に誘導する     

Moxeは免疫毒素と呼ばれる薬剤の1種である。

 

Moxeは、緑膿菌が産生する天然の毒素の断片であり、遺伝子操作によって担体分子に融合させる。この担体分子は、モノクローナル抗体の一部分であり、CD22と呼ばれるたんぱく質を認識する。CD22は、HCL細胞に豊富に存在する。この抗体がCD22を認識し、CD22を有する細胞に結合すると、この毒素が細胞内に取り込まれ、細胞を死滅させる。

 

Moxeは、当初、CCRの分子生物学研究室のIra Pastan医師が率いるチームが開発した。当チームには、CCRのDavid FitzGerald博士も参加している。後に、アストラゼネカ社の子会社であるMedImmuneにMoxeの商業的開発ライセンス供与を行った。

 

第 1 相試験では再発性/難治性HCL患者49人を対象とした。試験では、Moxeの安全性が期待ができ、有効である可能性が認められた。Moxeを最高用量での投与を受けた患者33人のうち、60%超で完全奏効(既存の検査で、腫瘍の徴候の消失が確認されること)が認められた。この完全奏効は平均3年超持続した。

 

これらの結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)は当研究チームに第 1 相試験から、直接、第 3 相国際試験に進むことを許可した。この国際試験はMedImmuneがスポンサーであった。

 

微小残存病変を根絶する

再発性/難治性HCLに対してFDAに承認された薬剤はないため、当第 3 相試験は単一群試験となった。試験では全参加者にMoxeを投与した。

 

当試験では14カ国からの参加者80人を対象とした。この80人のHCLに対する治療歴は、平均して3レジメンであった。本試験中、参加者は6カ月にわたりMoxe投与を最大6サイクル受けることができた。

 

Moxeによる治療サイクルを繰り返すと、微小残存病変が根絶する、とKreitma医師は説明する。微小残存病変とは、骨髄の深部に少量の腫瘍細胞が潜んで、標準的化学療法による死滅を回避している状態を指す。

 

「微小残存病変がHCL再発の原因と考えています。微小残存病変のためにHCLが何度も再発するのです」、とKreitman医師は述べた。「微小残存病変を根絶できれば、HCL患者に対する長期成績が改善すると感じています。」

 

治療では最高6サイクルの投与を受けることができたが、その6サイクルに至る前に微小残存病変のエビデンスが認められず完全寛解を示した試験参加者では治療を早期終了した。

 

17カ月にわたる追跡調査の後、試験参加者の80%で血液学的寛解が認められた。つまり、血液細胞が許容レベルに復したということだ。患者の40%超でMoxe治療による完全奏効が認められた、と研究チームは報告した。それらの患者の大半では微小残存病変のエビデンスが認められなかった。

 

Moxeによる副作用はほとんどが軽度であった。副作用は、悪心、手足の腫脹、頭痛、発熱などであった。研究チームは、患者において蓄積毒性を全く認めなかった。これは重要なことだ、とKreitman医師は述べた。蓄積毒性とは、治療が長引くほど副作用が悪化する、という状態を指す。

 

「微小残存病変を根絶したいのですが、そうするには十分な長さの治療サイクルを行う必要があるため、この研究結果の様に蓄積毒性が全くないことは重要です」とKreitman医師は説明した。

 

骨髄の幹細胞は赤血球と白血球を産生するが、HCL治療のための化学療法剤とは異なり、Moxeは骨髄の幹細胞に永続的なダメージをもたらさない。

 

Moxeの次の方向性

HCL細胞は表面上にCD22を大量に発現するため、理論上、Moxeによる治療で全患者が完全寛解を示すのだ、とKreitman医師は説明する。しかしながら、各患者がMoxeによる治療上の利益を得られるかどうかは複数の因子が影響してくる。

 

たとえば、HCL診断前に緑膿菌に曝露した患者は緑膿菌と緑膿菌が産生する毒素に対する抗体をすでに持っている。これらの抗体はMoxeがHCL細胞に到達する前にMoxeを認識し、不活性化する。

 

しかしながら、緑膿菌感染によるMoxe不活性化のみが治療抵抗性の原因ではない。試験中、研究チームはMoxeに対する抗体について患者を検査した。その結果、抗体を有する多くの患者はMoxeに対して良好な反応を依然として示した。これは特に、患者の抗体レベルが低い場合に当てはまる、とKreitman医師は述べた。Pastan医師の研究室のKreitman医師率いる研究チームは、Moxeが奏効しないHCL患者が一部いるが、その背景の理解に努めた。

 

それ以外のPastan医師の研究室スタッフはHCL以外の白血病においてMoxeを検証している。B細胞性急性リンパ性白血病小児患者を対象とした臨床試験でMoxeの検証が最近行われた。Moxeに対する抵抗性はすぐに発生したが、この抵抗性を克服するためにMoxeと他の薬剤を組み合わせた治療法を追求している。

 

また、HCL治療の早期段階にMoxeを利用すれば有益である可能性がある、とPastan医師は述べた。

 

クラドリビンは現在のところHCL治療の第一選択薬となっています。クラドリビンのように患者の骨髄に毒性をもたらさない薬剤が使えると良いな、と思います」とPastan医師は述べた。

翻訳三浦 恵子

監修喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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