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多くの進行性腎臓がん患者で手術が不要に

ASCOの見解

「この研究のおかげで、多数の進行性腎臓がん患者が不要な手術と、それにしばしば随伴する多くの深刻な副作用を回避できます。今回の研究結果によって、転移性腎臓がんと診断された患者さんの治療は劇的に変化するでしょう」と、ASCOの専門委員Sumanta K. Pal医師は言う。

 

ランダム化第3相試験によって、多くの進行性腎臓がん患者が、生存期間を短縮することなく腎臓を切除する手術(腎摘除術)を避けられることが明らかになった。全生存期間中央値は、分子標的療法であるスニチニブ(商品名:スーテント)のみを受けた患者では18.4カ月、それに対して現在の標準治療である手術+術後にスニチニブを受けた患者では13.9カ月であった。

 

これらの結果はASCOプレナリーセッションで発表される予定である。ASCOプレナリーセッションでは、2018年ASCO(米国臨床腫瘍学会)年次総会の一環として、5,800以上の抄録の中から、患者のケアに非常に大きな影響を与えると考えられる4つの試験に注目する。

 

「現在まで、初回診断時に転移がある腎臓がんの患者には腎摘除術が標準治療だと考えられてきました。こういったケースは世界的にみて全腎臓がんのおよそ20%を占めています」と、筆頭著者であり、フランスのパリにあるパリ第5大学ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院泌尿器科の泌尿器科医でもあるArnaud Mejean医師は述べた。「私達の研究は、この分子標的療法の時代に手術の必要性に初めて疑問を投げかけ、ある特定の腎臓がん患者にとって手術はもはや標準治療ではないことを明確に示しました」。

 

腎摘除術は、患者を失血、感染、肺塞栓、心臓障害などの合併症のリスクにさらす上に、進行性腎臓がん患者に対する薬物療法を何週間か遅らせる。場合によっては、この遅延の間に腫瘍が急速に増悪し、全身療法を始める時間がなくなってしまうことがある。

 

この試験について

Carmena試験では、同時性転移性腎細胞がん(mRCC)、つまり腎臓がんと最初に診断された時には既に転移が存在していた患者450人を登録した。推定4~5万人が毎年このタイプのがんと診断されている1,2

 

患者は、手術に続いてスニチニブを投与する群か、スニチニブ単独投与の群かに無作為に割り付けられた。手術併用群では、術後の回復のため、手術から4~6週後にスニチニブ投与を開始した。

 

主な結果

患者の追跡期間中央値は50.9カ月であった。スニチニブ単独での生存期間は、手術とスニチニブ併用群と比較して短くなかった。この結果は試験集団全体(生存期間中央値:手術無し18.4カ月、手術有り13.9カ月)だけでなく、予後中等度のサブグループ(手術無し23.4カ月、手術有り19カ月)、予後不良のサブグループ(手術無し13.3カ月、手術有り10.2カ月)に対しても当てはまった。

 

この生存期間中央値の差は、スニチニブ単独の方が有用性が大きいことを示唆している。しかし、本試験は、ある治療が他と比べて優れていると証明するためにデザインされたわけではなく、これで結論づけられるものではない、とMejean医師は指摘する。

 

治療に対する奏効率(腫瘍の縮小)は、2群間で同等で(27.4%と29.1%)、腫瘍が増悪するまでの期間の中央値は、スニチニブ単独での治療を受けた患者の方が、手術を併用した患者と比較して若干長かった(8.3カ月と7.2カ月)。臨床的有用性は、スニチニブ単独で治療した患者では47.9%、手術とスニチニブを併用した患者では36.6%で認められた。

 

転移が1カ所のみであるなど全身療法が必要ではない患者にとっては、腎臓の手術は依然としてゴールドスタンダードであると著者らは述べる。この試験にこのような患者は含まれていない。

 

次の段階

今回の試験で、一部の患者はスニチニブ単独治療に非常に良い奏効が得られ、全身療法終了後に手術を行った。研究者らは、このような患者の転帰を、別のサブグループの患者と共に継続して追跡する予定である。本試験で収集した腫瘍組織のゲノム研究は進行中である。

 

本研究はPHRC(仏政府の臨床研究に対する補助金)から資金援助を受けた。

 

今回の試験を表で見る

疾病名 転移性腎臓がん
試験相、試験タイプ  第3相、ランダム化試験
試験に参加した患者数 450人
試験した介入法 手術の後スニチニブ(標準治療)対スニチニブ単独
主要な結果

生存期間中央値:

標準治療13.9カ月、スニチニブ単独18.4カ月

副次的な結果

無増悪生存期間中央値:

標準治療8.3カ月、スニチニブ単独7.2カ月

 

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参考記事

腎臓がんについて
分子標的療法について知りたい時
がんの手術とは?

参考文献

1. Ferlay J, Shin HR, Bray F, Forman D, Mathers C, Parkin DM. GLOBOCAN 2008 v2.0, Cancer Incidence and Mortality Worldwide: IARC CancerBase No. 10 [Internet]. Lyon, France: International Agency for Research on Cancer; 2010. Available from: http://globocan.iarc.fr. Accessed July 16, 2013.

2. The epidemiology of renal cell carcinoma. Ljungberg B1, Campbell SCChoi HYJacqmin DLee JEWeikert SKiemeney LAEur Urol. 2011 Oct;60(4):615-21.

 

翻訳平沢沙枝

監修榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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原文掲載日

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