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mFOLFIRINOX化学療法が膵臓がん患者の生存期間をゲムシタビンより20カ月近く延長

ASCOの見解

「膵臓がんは病勢進行の早いがんとして知られており、一般的には予後不良である。そのため、新たな治療レジメンが膵臓がん患者の生存期間を有意に延長したというのは大きな勝利である」とASCOエキスパートのAndrew Epstein医師は語った。

 

第3相ランダム化比較試験において、手術で膵臓がんを切除した患者が4種類の薬剤を含むレジメンであるmFOLFIRINOX(オキサリプラチン、ロイコボリン、イリノテカン、5-フルオロウラシル)による化学療法を受けたところ、現在の標準治療であるゲムシタビン(商品名:ジェムザール)を受けた患者と比較して、中央値で生存期間が20カ月延長し、がんが再発しない期間は9カ月延長した。

 

この研究は本日行われる記者会見で取り上げられることになっており、2018米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表されることになっている。

 

「われわれが行った臨床試験で初めて、FOLFIRINOXによる補助化学療法が標準治療のゲムシタビンを超える大きな利益を示し、膵臓がん患者がより長生きできるようになることを示しました」と、筆頭著者のThierry Conroy医師は言った。Thierry医師は腫瘍内科医であり、フランスのUNICANCER総合がんセンターのひとつであるInstitut de Cancerologie de Lorraine(ナンシー市)のディレクターである。「また、この臨床試験を計画したときの予想を上回る良い結果が出たことも励みになりました」。

 

膵臓がん手術の後にゲムシタビンによる補助化学療法を行うと、手術単独と比べて有意に生存期間を延長できるばかりでなく、治癒(患者が健康を取り戻し、おそらく膵臓がんが再発しないであろう状態を指す)した患者を増やすことができる(5年経過の時点で、ゲムシタビン療法で21%、手術単独では10%)。これまで10年間、ゲムシタビン療法が補助化学療法の標準治療となっている。

 

研究について

PRODIGE24/CCTG PA.6臨床試験は、転移がなく、腫瘍をすべて、または、ほぼすべて切除した(手術後に外科医がみてもがん細胞は視認できないが、微小な腫瘍細胞が残っているかもしれない状態)膵臓腺がん(PDAC)患者を対象とした。膵臓腺がんは膵臓がんの中で最も多い種類で、全症例の90%を占める。手術が可能なのは膵臓がん患者全体のわずか10~20%である。米国では、2018年に55,400人が膵臓がんと診断されると推定されている。

 

術後3~12週間後、フランスとカナダの493人の患者が無作為にゲムシタビンかmFOLFIRINOXに割り付けられ、それぞれ6カ月間治療を続けた。mFOLFIRINOXレジメンは、オキサリプラチン(商品名:Eloxatin 日本ではエルプラット)、ロイコボリン(フォリン酸)、イリノテカン(商品名:Camptosar 日本ではカンプト)、5-フルオロウラシル(商品名:adrucil 日本では5-FU)の4剤を組み合わせた化学療法である。非常に似ているレジメンが、転移のある膵臓がん患者向けの一次治療としてすでに使われている。この臨床試験では、FOLFIRINOXが膵臓がんの早い段階でも有益であることが示された。

 

主な知見

中間値で33.6カ月の追跡時点で、膵臓がんが再発していない期間の中間値(無病生存期間)はゲムシタビン群(12.8カ月)よりもmFOLFIRINOX群(21.6カ月)の方が断然長く、全生存期間の中央値もmFOLFIRINOX群の方が断然長かった(mFOLFIRINOX群で54.4カ月に対し、ゲムシタビン群では35.0カ月)。mFOLFIRINOXの利益は患者集団の全てにおいて確認された。また、mFOLFIRINOXは、転移が出現するまでの期間も著しく延長した(中央値で30.4カ月。ゲムシタビンの場合は17.0カ月)。

 

全体として、ゲムシタビン群(53%)に比べてmFOLFIRINOX群(76%)の方が重度の副作用(主に血液毒性)が多かったが、その副作用も管理可能だったと著者らは言う。治療関連死もゲムシタビン群で1例発生したが、mFOLFIRINOX群では発生しなかった。

 

副作用の種類は両群で異なっていた。ゲムシタビン群でもっとも多かった副作用は頭痛、発熱、感冒様症状、浮腫、白血球低下だった。一方、mFOLFIRINOX群に多かった副作用は下痢、悪心、嘔吐、倦怠感だった。なお、発熱性好中球減少症(発熱と白血球低下を特徴とする危険な合併症)のリスクについては、両群とも違いはなかった。

 

虚血性心疾患歴がある患者にはいずれのレジメンもリスクを伴うが、mFOLFIRINOXの場合はより顕著である。補助化学療法を開始する前に心臓の基礎疾患を評価する必要がある。これは、手術や化学療法を受けるがん患者に対してルーチンで行う予防措置である。

 

次の段階

次の段階は化学療法を行うタイミングを探ることである。手術前に化学療法を受けた方が(術前化学療法)、腫瘍を縮小させ、検知できない微小な転移巣を破壊し、手術で完全に腫瘍を取り除くことができる可能性を高めて、患者にとって有益かもしれない。Conroy医師は、mFOLFIRINOXが術前化学療法の有力候補になりそうだ、と述べた。他の方法としては、術前に化学療法のサイクルの半分を受けてもらい、術後に残りの半分を受けてもらう治療法がある(周術期化学療法)。現在これらの治療法を評価する臨床試験がすでに行われている。

 

フランスのパリにあるUNICANCERがスポンサーである今回の臨床試験は、フランスのInstitut National du Cancer、French national Ligue against cancer、カナダがん協会、およびカナダのチャリティーサイクリングイベントである「7 days in May」から資金提供を受けた。

 

臨床試験の概要

疾患 膵臓がん
臨床試験のフェーズと種類 第3相、ランダム化比較試験
患者数 493人
研究対象 mFOLFIRINOXによる補助化学療法 とゲムシタビンによる補助化学療法(標準治療)との比較
主な知見 無病生存期間の中央値がmFOLFIRINOXで21.6カ月だったのに対し、ゲムシタビンでは 12.8カ月だった
副次的な知見 全生存期間の中央値がmFOLFIRINOXでは54.4カ月だったのに対し、ゲムシタビンでは35 カ月だった

 

抄録全文はこちら(英語のみ)

参考資料:
膵臓がんについて(英語のみ)
化学療法を理解する (英語のみ)

 

翻訳関口百合

監修中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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原文掲載日

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