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低用量IL-2が慢性移植片対宿主病に有効であることが明らかに

免疫シグナル伝達たんぱく質インターロイキン2(IL-2)は、幹細胞移植に続いて起こる慢性移植片対宿主病を発症した患者に安全かつ有効であり、小規模研究において特に小児に有効であることが、ダナ・ファーバーがん研究所の研究者によって報告された。

 

移植後患者に対するIL-2使用の先駆者であるダナ・ファーバー研究者らは、アトランタで開催された第59回米国血液学会(ASH)年次総会で、関連する4つの演題を発表した。IL-2は、免疫系の白血球細胞の活性化を調節するシグナル伝達分子であり、免疫(身体の感染と闘う手助けをすること)、および免疫寛容(身体を自身の防御攻撃から守ること)の重要な役割を果たしている。後者の状況において、IL-2は、免疫活性化によって起きた炎症反応を抑制する制御性T細胞(もしくは、Treg細胞)という白血球細胞の産生と活性化を刺激する。

 

移植片対宿主病(GVHD)は、移植ドナー由来の免疫細胞が皮膚、消化管、肝臓、肺などレシピエントの正常組織を攻撃して損傷する一般的な合併症であるが、重症化する場合もある。慢性GVHDの標準治療はステロイド薬などであるが、ステロイド薬は重篤な副作用をもたらす。

 

IL-2は炎症を減衰させるTreg細胞の産生を促進することから、ダナ・ファーバーがん研究所成人幹細胞移植プログラムの上級医師であるJohn Koreth医学博士は、「当研究所ではIL-2を移植後に使用しており、これまでに第1相および2相試験で100人以上の患者を治療しました」と言う。「ASHでは、これらの慢性GVHDを対象とした試験を数件報告しています。標準治療による効果が得られなかった小児患者において非常に劇的な奏効率が得られた試験についても報告している。

 

要約No.3248

Koreth氏が言及した試験は、ダナ・ファーバー/ボストン小児がんおよび血液疾患センターのJennifer Whangbo博士が主導する第1相試験である。この試験では、ステロイド治療が奏効しなかった10人の成人および8人の小児(5~22歳)慢性GVHD患者を対象とした。患者はIL-2の連日皮下投与を8週間にわたって受けた。

 

8週間の時点で、小児患者では8人のうち7人(88%)で臨床的効果が得られたが、成人患者で臨床効果が得られたのは8人中わずか1人(13%)であった。 8人の小児患者は、最長120週間までIL-2療法を続けた。

 

「進行したステロイド抵抗性の慢性GVHDを有する小児患者において、低用量IL-2が安全であり、高い臨床奏効を示すことを初めて実証しました」と、Koreth氏とダナ・ファーバー血液腫瘍部門長のRobert J. Soiffer医師は言う。

 

Whangbo氏は、小児患者では成人よりも投与量が低かったにもかかわらず、なぜIL-2療法が奏効したかについてはまだ明らかではないとしながらも、 小児および成人コホート間で胸腺機能とT細胞受容体(TCR)の多様性を比較する研究を進めていると語った。

 

要約No.74

別の研究では、IL-2の低用量投与により、移植された外来性免疫系がレシピエントの正常組織を攻撃するのではなく、それらに寛容を示すよう微調整されるという分子的詳細について検討した。慢性GVHDに関与するのは免疫T細胞だけではない。免疫T細胞とは種類の異なる免疫防御因子であるB細胞もその一つである。 B細胞活性は濾胞性ヘルパーT細胞(TFH細胞)という、B細胞をレシピエント患者の正常組織に対して誘導する細胞と、濾胞性制御性T細胞(TFR細胞)という、B細胞応答を抑制する細胞によって調節される。

 

ダナ・ファーバーのYusuke Kamihara博士が主導したこの研究では、ステロイド抵抗性の慢性GVHD患者の血液循環におけるTFHおよびTFR細胞に対するIL-2療法の効果を検討した。その結果、低用量のIL-2を連日投与することで、有害なTFH細胞と関連タンパク質を同時に抑制しながら、免疫抑制TFR細胞と関連タンパク質が選択的に活性化することが認められた。IL-2のこの選択的機能は、「低用量IL-2療法が慢性GVHD患者のB細胞性寛容とT細胞性寛容を促進するメカニズムをもたらす」と研究者らは述べた。

 

本研究は、ダナ・ファーバーConnell and O’Reilly Families Cell Manipulation Core FacilityのエグゼクティブディレクターであるSoiffer氏とJerome Ritz氏を筆頭著者とする。

 

要約No.511

別の研究では、移植レシピエントにIL-2を投与する前に元のドナーからの新鮮なTreg細胞を投与することで慢性GVHDに対するIL-2療法の効果がより高まるという仮説を検討した。過去の研究では、低用量IL-2を単独投与した場合、慢性GVHD患者の50〜60%において臨床的改善がもたらされた。研究者らは、新鮮なTreg細胞の投与を追加することで、奏効率を上げることができると示唆した。

 

この第1相試験では、ステロイド抵抗性の慢性GVHDを有する移植患者25人にTreg細胞を細胞数を漸増させて投与し、その後IL-2を8週間連日投与した。 8週間の時点で、臨床効果は56%に見られ、完全奏効と部分奏効率の合計は16%であった。6カ月間で患者へのステロイド投与量中央値は半減した。投与された新鮮なドナーTreg細胞の持続性、TCRの多様性および長期結果への影響を検討する基礎研究が現在進行中である。

 

ダナ・ファーバーConnell and O’Reilly Families Cell Manipulation Core Facilityのアソシエイト・メディカル・ディレクターで、免疫エフェクター細胞治療プログラムのテクニカル・ディレクターを務めるSarah Nikiforow医学博士と、本研究の筆頭著者であるKoreth氏が率いる研究チームは、Treg細胞とIL-2の併用投与は安全であり、ステロイド抵抗性の慢性GVHDに対して臨床的有効性を有し、これはIL-2単独投与による十分な効果が得られなかった患者にも同様であったと結論づけた。

 

Koreth氏とSoiffer氏は、ステロイド抵抗性の慢性GVHD患者を対象に、低用量IL-2療法とECP(対外循環式光化学療法)を併用する第2相試験を実施した。計25人の患者が週2回のECPセッションを16週間受け、9〜16週目にIL-2を連日投与した。

 

最初、ECP単独治療中に免疫抑制Treg細胞および他の細胞の減少を認めた。 IL-2治療を開始すると、Treg細胞は平均5倍上昇した。研究では、患者の60%に部分奏効を認めたが、「ECPとIL-2による全体としての臨床的有効性は、低用量IL-2単独投与と比べて、顕著な改善を示さなかった」と結論づけた。

翻訳ステップアップ!チーム

監修吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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