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誘導爆弾タイプのウィルスによる脳腫瘍免疫療法の有望性

臨床試験において、再発膠芽腫患者の20%が3年間の延命を得た

最も多く致死的な脳腫瘍を攻撃するよう遺伝子操作された感冒ウィルスにより、再発膠芽腫患者の20%が3年以上の延命を得た、という第1相臨床試験の結果をテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームがJournal of Clinical Oncology誌に発表した。

 

この変異アデノウィルスは、Delta-24-RGDあるいはDNX-2401と呼ばれており、手術および手術以外の治療後に再発を呈した膠芽腫患者25人の腫瘍に対して1回直接注入された。再発膠芽腫患者群の生存期間中央値は、通常、6カ月である。

 

「この試験で長期生存したのは5人でした。そのうち3人では完全寛解が持続しました。このことは膠芽腫に関する臨床試験としては目覚ましい成果です」、と筆頭著者で脳神経外科教授であるFrederick Lang医師は述べた。「多くの第1相試験では状態が良好な患者が1人出るかどうかというところですので、当試験からは貴重な結果が得られました。ですが、われわれはこの非常に困難なこの疾患についての試験結果を常に注意深くみています」。

 

毒性はごくわずかであり、患者2人が治療関連の重篤度の低い副作用を呈した。用量漸増したのちにウィルスの成しうる最高濃度に至ったが、用量制限副作用は認められなかった。患者18人(72%)でなんらかの腫瘍縮小が認められた。全生存期間中央値は 9.5 カ月であった。

 

患者12人に試験期間の別のタイミングで標的化ウィルスによる術前治療を行い、腫瘍を外科的に切除し、その患者の画像と切除腫瘍を分析した。今回の試験で認められた長期的な奏効は、標的化ウィルスが元来備える腫瘍を殺すメカニズムと、その結果として生じる免疫反応との両方に起因する、と研究チームは考えた。

 

ウィルスの攻撃が免疫反応を誘発する

「DNX-2401ががん細胞に特異的に感染し、感染細胞内で増殖して細胞を殺したのちに腫瘍全域で細胞から細胞に伝播して破壊的な波を起こすように設計しました」、と統括著者でDNX-2401共同開発者、および神経腫瘍学教授であるJuan Fueyo医師は述べた。「今回の前臨床試験で予測されたように、臨床試験ではこのことが起こることが示されました。また、ウィルス感染後に膠芽腫に対する免疫反応が引き起こされ、これにより強力な効果が生じたことが示されました」。

 

患者3人で認められた完全奏効では、治療1カ月後の時点での画像検査により、炎症および免疫活動が生じた後に、さらに腫瘍のサイズが95%以上縮小するまで腫瘍が安定して縮小した、という現象が認められた。

 

「これら長期的奏効を示した患者においては、ウィルスが、細胞を殺し、免疫系に向けて複数の抗原標的を作りました。これにより腫瘍の免疫系に対する防護を打ち破ったのです」、とDNX-2401共同開発者、および神経腫瘍学准教授であるCandelaria Gomez-Manzano医師は述べた。「その後、これらの腫瘍は完全に破壊されます」。

 

膠芽腫は、通常免疫系の注意を引き付けず、侵入物および異常細胞を攻撃するT細胞、白血球の攻撃をほぼ受けない。

 

この研究では、1カ月以内に免疫系がウィルスを排除したことが示されたが、完全奏効を示した患者において腫瘍サイズの縮小が1年以上持続したことが示された。この試験の第2段階で外科的に切除した腫瘍を分析したところ、腫瘍内での広範な細胞死およびT細胞の侵入が認められた。

 

腫瘍は検出されず、初期有害作用はほとんど認められず、患者は、放射線照射や化学治療などの強い副作用を伴う今回用いた治療法以外の治療を現在受けていないことから、患者のQOLは良好である、と研究チームは述べた。

 

しかし、およそ3~4年後の時点で、完全奏効を示した患者3人すべてで再発が認められ、最終的には死亡した。患者2人では、再発した腫瘍は膠肉腫であり、原発の膠芽腫とは本質的に異なるものであった。患者3人すべては治療後4.8年以上生存し、2人の無増悪生存期間は42.5カ月と36.4カ月であった。

 

「膠芽腫を永続的に再発させない方法を解明し、強い反応が認められなかった残りの80%以上に対する治療の効果を増大させるためにも研究しないといけません」、とFueyo医師は述べた。研究チームは、免疫反応を刺激するウィルスに新たな因子を複数追加するための研究を現在行っている。

 

DNAtrix社のリーダーシップの下、DNX-2401とそれ以外の治療法を組み合わせて反応を増大させる事を目的とした臨床研究が開始されている

 

DNAtrix社は、承認申請薬を更に開発する目的でFueyo医師、Gomez-Candelaria医師らが設立したヒューストンにある会社である。Fueyo医師、Gomez-Candelaria医師、およびMDアンダーソンはDNAtrix社の株主であり、同社にライセンス契約されている知的所有権を所有している。また、Lang医師はDNX-2401の特許所持者である。

 

上記利害関係はMDアンダーソンの利益相反の方針に従って管理されている。DNAtrix社の計画についてはこちらを参照のこと。MDアンダーソンの研究チームは、本試験以外で、DNAtrix社が助成する臨床試験を主導していない。

 

DNAtrix社が開始している臨床試験の1つでは、DNX-2401と免疫チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブを組み合わせて、この組み合わせが免疫反応を保護し、増強させるかどうかを確認している。ペムブロリズマブは市販名キートルーダとして知られている。

 

Fueyo医師、Gomez-Candelaria医師、およびLang医師は、当初、膠芽腫に選択的に侵入させる目的でDelta-24 RGDと呼ばれる腫瘍溶解性ウィルスを開発した。

 

Delta-24 RGDは、その後、DNATrix社によりDNX-2401と改名され、通常ウィルス感染に対して防護を行う網膜芽腫タンパクが脳腫瘍で欠損、ありは機能欠損を示すという事実を利用し、ウィルスが正常細胞ではなく膠芽腫に対してより容易に侵入できるよう改変された。E1Aと呼ばれるタンパク質は通常、アデノウィルスが網膜芽腫の防護を乗り越えるために利用するが、正常細胞をさらに保護するために、研究チームはE1Aの作用を無効化した。

 

Fueyo医師、Gomez-Candelaria医師、およびLang医師の共著者は以下のとおりである:Charles Conrad, M.D., W.K. Alfred Yung, M.D., of Neuro-Oncology; Raymond Sawaya, M.D., Jeffrey Weinberg, M.D., Sujit Prabhu, M.D., Ganesh Rao, M.D., Joy Gumin, or Neurosurgery; Gregory Fuller, M.D., Ph.D., and Kenneth Aldape, M.D., of Pathology; Luis Vence, Ph.D., of Immunology; Ignacio Wistuba, M.D., Pamela Villalobos and Jaime Rodriguez-Canales, M.D., of Translational Molecular Pathology; Clemens Dirven, M.D., Ph.D., of Erasmus University Medical Center, Rotterdam, the Netherlands; Sonia Tejada, M.D., Ph.D., Ricardo Valle, M.D., Ph.D., and Marta Alonso, Ph.D., of Clinica Universidad de Navarra, Pamplona, Spain; and Brett Ewald, Ph.D., Joanna Peterkin, M.D., and Frank Tufaro, Ph.D., of DNAtrix, Houston.

 

本試験はDNATrix社の支援を受けた。本試験は以下より研究助成を受けた:米国国立がん研究所Research Excellence (SPORE) 助成金の特別プログラム (P50 CA127001)、The Marcus Foundation、 The Broach Foundation for Brain Cancer Research、the Elias Family Fund、Dr. Marnie Rose Foundation、 the Will Power Foundation、the J.P. Harris Brain Tumor Research Fund、 および MDアンダーソンの Glioblastoma Moon Shot( 膠芽腫ムーンショットは、MDアンダーソンのムーンショットプログラムの一環である。ムーンショットプログラムは、科学的発見に基づきがん予防、検出、治療における向上の促進を目的としている)。

翻訳三浦 恵子

監修西川 亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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