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1回の血液検査で8種のがんをスクリーニング

最も一般的ながんを早期発見するための優れた新たな枠組み

1回の血液検査で8種の一般的ながんをスクリーニングし、がん部位の特定に役立つ手法を、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らが開発した。

 

CancerSEEKと呼ばれるこの検査は、血中における8種のがんタンパク質の量を調べると同時に、血中循環DNAによってがん遺伝子変異の存在を調べるもので、非侵襲的で優れた多項目検査である。この検査の目的は、米国でのがん死亡数の60%超を占める8種の一般的ながんのスクリーニングである。この検査が対象とするがんのうち5種については、現在のところ検診方法がない。

 

「早期発見のために選択バイオマーカーを併用すれば、がんの検診方法を変える可能性があります。これは、がん治療で薬剤を併用するのと同じ根拠に基づいています」と、主席著者で腫瘍学・病理学教授のNickolas Papadopoulos博士は述べている。

この知見は、2018年1月18日にScience誌電子版に掲載された。

 

「循環腫瘍DNA変異は、非常に特異的ながんマーカーとなり得ます。この固有の特異性を利用するために、大多数のがんにおいて少なくとも1つの変異を検出することができる小型で丈夫なパネルの開発に努めました」と、ジョンズホプキンス大学医学部医学博士課程の学生で、この論文の筆頭著者であるJoshua Cohen氏は言う。「実際、偽陽性結果を最小限に抑え、かつそのようなスクリーニング検査を安価にするには、変異パネルを小さくすることが不可欠です」。

 

研究者らは当初、数百個の遺伝子と40個のタンパク質マーカーを調査し、その数を16個の遺伝子断片と8個のタンパク質に絞り込んだ。この分子検査はがんのスクリーニングのみを目的としているため、治療対象とする標的を同定するために多数のがんドライバー遺伝子を分析するような他の分子検査とは異なる、と研究者らは指摘している。

 

本研究では、検査のがん特異性は99%を超えた。「特異性が非常に高いことが重要でした。偽陽性が出ると、患者に不必要で侵襲的な精密検査や処置を受けてもらい、がんの存在を確認する場合があるからです」と腫瘍学教授でLudwig Centerの共同所長であるKenneth Kinzler博士は述べている。この検査を812人の健常対照群に使用したところ、偽陽性はわずか7件であった。

 

ステージ1~3の非転移性の卵巣がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、食道がん、大腸がん、肺がん、乳がんの患者1,005人を対象として、この検査について評価した。総合感度(すなわち、がんの検出力)の中央値は70%で、卵巣がんでは98%と高く、乳がんでは33%と低かった。スクリーニング検査がない5種のがん(卵巣がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、食道がん)については、感度が69%~98%であった。

 

「この分類法の新規性は、さまざまなDNA変異が観察される可能性と、複数のタンパク質の量を組み合わせて最終決定を行うという点です」と、アルゴリズムを開発した腫瘍学・生物統計学准教授のCristian Tomasetti博士は言う。「この手法のもう1つの新しい点は、機械学習を使用することで、患者の83%において、この検査で腫瘍の位置を少数の解剖学的部位にまで正確に特定できることです」。

 

この検査はあらゆるがんを検出するわけではないが、通常であれば発見されない可能性が高い多くのがんを同定する。「今日最も有望ながん治療の多くは、ごく少数のがん患者にしか利益がありません。われわれは、そこを重要な突破口と考えています。がんの早期発見を進展させようとするなら、まずはより現実的に見て、すべてのがんを発見できる検査がないことを認識しなければなりません」と、Ludwig Centerの共同所長、Clayton Professor of Oncology、およびハワード・ヒューズ医学研究所の研究者であるBert Vogelstein医師は述べている。

 

CancerSEEK検査で用いた検査対象に的を絞るために、研究チームは、がんに関する遺伝子の設計図が初めて作成されたジョンズホプキンスのLudwig Centerでの30年以上にわたるがん遺伝学研究で得られたデータや、他の多くの機関のデータを集めた。

 

CancerSEEK検査で評価するのに最適なDNA塩基数を正確に決定するため、研究者らは収穫逓減に基づく方法を用いた。「分析するDNA塩基が多くなればなるほど、発見できる変異は増えますが、最終的には収穫逓減点に達します」とCohen氏は説明する。「この収穫逓減点を反映するように検査を設計し、がんの検出に有用だったDNAマーカーを選択し、利益がなかったDNAマーカーを除外しました」。その結果、選択性の高いDNAマーカーを用いた比較的小型のパネルとなった。

 

「この検査は、がん研究の焦点を後期疾患から早期疾患に変える次のステップとなり、長期的にはがん死亡を減少させるのに重要になると考えています」とVogelstein医師は述べている。

 

CancerSEEKは非侵襲性で、基本的には、通常の血液検査と同時にプライマリケア従事者が実施できる。「これは患者に大きな影響を及ぼす可能性があります。早期発見により、患者の転帰を改善するための選択肢が広がります。手術のみで治癒できるくらい十分早期にがんが発見されれば最善ですが、手術のみでは治癒できないがんでも、あまり進行していない疾患であれば、全身療法への反応がより良好になります」と、医学部准教授(外科・放射線科)、消化器病学臨床部長、およびMultidisciplinary Pancreatic Cyst Program(集学的膵囊胞プログラム)の責任者であるAnne Marie Lennon医学博士は述べている。

 

研究者らは、ある検査をがん検診で日常的に使用するには、すでに使用されている1種だけのがんスクリーニング検査(大腸内視鏡検査など)と同等か、それ以下のコストでなければならないと考えており、最終的にはCancerSEEK検査を500ドル未満にすることを目指している。

 

CancerSEEKについて、より大規模な研究が現在進行中である。

 

Cohen氏、Papadopoulos博士、Lennon医学博士、Tomasetti博士、Kinzler博士、Vogelstein医師に加え、他の共著者 は以下のとおりである。Lu Li, Yuxuan Wang, Christopher Thorburn, Bahman Afsari, Ludmila Danilova, Christopher Douville, Ammar Javed, Fay Wong, Austin Mattox, Ralph Hruban, Christopher Wolfgang, Michael Goggins, Marco Dal Molin, Tian-Li Wang, Richard Roden, Alison Klein, Janine Ptak, Lisa Dobbyn, Joy Schaefer, Natalie Silliman, Maria Popoli, Joshua Vogelstein, James Browne, Robert Schoen, Randall Brand, Jeanne Tie, Peter Gibbs, Hui-Li Wong, Aaron Mansfield, Jin Jen, Samir Hanash, Massimo Falconi, Peter Allen, Shibin Zhou, Chetan Bettegowda and Luis Diaz

 

本研究は、以下の団体の支援を受けた。the Lustgarten Foundation for Pancreatic Cancer Research, the Virginia and D.K. Ludwig Fund for Cancer Research, The Commonwealth Fund, the John Templeton Foundation, the Clinomics Program, Mayo Clinic Center for Individualized Medicine, the Mayo Clinic Biobank, the Sol Goldman Center for Pancreatic Cancer Research, The Michael Rolfe Pancreatic Cancer Research Foundation, the Benjamin Baker Scholarship, the Gray Foundation, the Early Detection Research Network, Susan Wojcicki and Dennis Troper, the Marcus Foundation, the Conrad N. Hilton Foundation, the Howard Hughes Medical Institute, and National Institutes of Health Grants P50-CA62924, P50-CA102701, CA06973, GM-07309, and U01CA152753.

 

利益相反: Nickolas Papadopoulos博士、Shibin Zhou医学博士 、Kenneth Kinzler博士、Luis Diaz氏、およびBert Vogelstein医師は、Personal Genome Diagnostics社およびPapGene社の創立者である。Vogelstein医師とKinzler博士はSysmex-Inostics社の科学諮問委員、Vogelstein医師はExelixis GP社の科学諮問委員である。これらの企業等は、ジョンズホプキンス大学から技術ライセンスを受けており、Papadopoulos博士、Kinzler博士、Diaz氏、およびVogelstein医師は、株主資本やライセンス使用料を得ている。これらの合意条件は、ジョンズホプキンス大学の利益相反に関する方針に従って管理されている。

 

この論文のコピーや詳細については、下記のScience Press Package のサイトで、オンラインで閲覧できる。http://www.eurekalert.org/jrnls/sci
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概略図

https://www.hopkinsmedicine.org/sebin/f/h/70F08CBA6A6AB9AFA3BDDB79748A9A13.jpg

概略図の訳
ctDNA & タンパク質バイオマーカー
タンパク質バイオマーカー
がんが検出されたか
はい
いいえ
組織部位の特定

翻訳福原 慎吾

監修北丸 綾子(分子生物学)

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原文掲載日

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