がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加

シームレス試験の増加はFDAの承認を受けているがん治療薬数の増加に比例している

シームレス・アプローチを取り入れたがんの早期臨床試験は、第1、2、および3相による計画で定義した従来の臨床試験アプローチと異なる。その数は増加し続けており、大部分のシームレス試験から得たデータは2014年以降に発表されている。この知見は、10月26~30日の間に開催されたAACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics(AACR-NCI-EORTC共催 がん分子標的治療国際会議)で発表された研究により判明した。

「従来の第1、2、および3相試験を行う代わりに、シームレス試験は複数の試験を組み合わせています。そしてその中間データ結果を取り入れ、それに基づき展開させています」、とオハイオにあるクリーブランドクリニック実験的治療学特別研究員であるPedro Barata医師(科学修士)は述べた。「シームレス・アプローチを取り込んだ初めてヒトに投与する第1相試験は、数百人の患者を登録する大規模な拡大コホート(患者群)を複数用いており、速やかに展開できる柔軟性を有しています。これにより薬剤開発過程にかかる時間が短縮できやすいのです」、ともBarata医師は述べた。

過去数十年の間、さらに有効な治療薬が開発されるとともに、バイオマーカーの発見により患者選択の技術が向上しました。そのため、薬剤開発過程を早めることが求められてきているのです、とBarata医師は説明した。その結果、検証した治療薬について早期承認を得るために、有効性に関する暫定的なシグナルおよび十分なデータを得ることができる創造的な試験デザインが拡充されてきました。

シームレス・デザインに基づいた早期臨床試験は拡大し続けていますが、その浸透傾向、臨床デザイン、および特徴は曖昧です、とBarata医師は認めた。Barata医師の研究チームは、多施設共同試験を実施した。この試験では、米国食品医薬品局(FDA)による迅速承認プログラムに組み入れられたシームレス試験で検証した薬品数を計測し、これによりシームレス試験の要素および成功率の評価を目的とした。

研究チームは、2010~2017年の間に米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された臨床試験の抄録を全て検討した。シームレス試験の定義は、患者100人以上を登録した何らかの早期臨床試験とされている。特定された第1/ 2相試験1,786件のうち、3%(51件)がシームレス試験であった。しかし、シームレス試験は全登録患者の15%を占めていた。シームレス試験は、拡大コホートを最大13コホート有し、そのシームレス試験65%から得られたデータは2014年以降に発表されている。

全体では、50の新規治験薬がシームレス・アプローチを用いた早期臨床試験で検証されていた。その治験薬の中には分子標的薬、免疫療法薬、抗体薬物複合体、および化学療法薬などがあり、単剤療法あるいは併用療法として検証されている。

データから、FDAがシームレス試験で検証した8つの治療薬(16%)を迅速審査により承認し、現在9つ目となる治療薬の優先審査を承認していることが判明した。ヒトでの試験を行った抗がん薬の5%のみが最終的にFDA承認を受けることが推定されています。したがって、本知見によりシームレス・アプローチで検証した薬剤の成功率がより高いことが確認できたと考えます」、とBarata医師は述べた。

また、研究チームは、シームレス試験51件のうち29の研究が公表されており、そのうち69%が拡大コホートの症例数を算出するための統計学的解析を予定していないことを認めた。

「事前に計画された統計計画がない場合は、いかなる場合もデータの価値は限定的となります。なぜならば単に結果を叙述しているだけであり、さらなる検証を要するからです」、とBarata医師は述べた。「試験ごとの数多くの非ランダム化コホートおよび複数回の修正による試験デザインの改変がなされることで、これらのシームレス研究は第2、3相試験と比較して偽陽性/偽陰性率が高くなります。したがって、データの妥当性および解釈に影響が及ぶのです」

シームレス試験でFDA承認が早まることにより抗がん剤が速やかに利用可能となる。しかし、Barata医師は次のように注意を促した。このシームレス・アプローチおよびその転帰の質を向上するためには、安全性モニタリングシステムが欠如していること、頻繁になされるプロトコル改変に関して製薬企業、試験担当医師、および規制当局との間の情報伝達において課題があること、およびデータの品質の維持や試験デザインに関連する統計学的完全性に限界がある可能性、これらに起因する回避可能なリスクに患者と医薬品開発企業をさらしてしまう可能性があるなどの懸念に取り組まねばならない。

本試験の主な限界として、後ろ向きの性質であること、1カ国の国内会議から得た研究結果を組み入れていること、および試験情報の利用が限られていること(会議の抄録を検討)、ならびに試験プロトコルが不完全であることなどが挙げられる。

Barata医師には申告すべき利益相反はない。

翻訳担当者 三浦恵子

監修 東光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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