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男性の妊よう性へ治療がおよぼす影響とその温存

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男性の妊よう性へ治療がおよぼす影響とその温存

Cancer.NET (ASCO患者向けサイト)

2016年3月 Cancer.Net編集委員会承認

多くのがん治療が妊よう性に影響を及ぼします。この影響は、一時的な場合も永続的な場合もあります。妊よう性とは、子どもを作ることができる状態です。子どもを作ることができない状態が不妊です。

 

治療開始前に、治療があなたの妊よう性に及ぼす影響について担当の医療チームと話をしてください。また、妊よう性を温存するための選択肢についても尋ねてみてください。

 

がん治療が妊よう性に及ぼす影響

がんまたはがん治療による妊よう性の問題を来す主要経路は、次の2つです。

・内分泌腺または内分泌系器官の損傷。内分泌腺および内分泌系器官としては、精巣、甲状腺、副腎などがあります。これらの腺および器官は、思春期の発現を促すホルモンや、妊よう性に関わるホルモンを放出します。

・内分泌系を司る脳の部位の変化

 

治療によって、男性の妊よう性に影響を及ぼす以下のようないくつかの問題があります。

・精子の損傷

・新しい精子を作る機能の低下

・精液の産生の減少または停止。精液は、前立腺で作られる流体であり、性交中に精子を運びます。

 

下記のがん治療は、妊よう性に関連する副作用が知られているか、または副作用を生じる可能性があります。

化学療法:一部の薬剤、特にアルキル化剤は、妊よう性に問題をきたします。該当する薬剤は、以下のとおりです。
 ・ブスルファン(ブスルフェクス、Myleran[マイレラン])
 ・カルムスチン(BiCNU)
 ・クロラムブシル(Leukeran[ロイケラン])
 ・シスプラチン(Platinol[プラチノール])
 ・シクロホスファミド(Neosar[ネオサール])
 ・ロムスチン(CeeNU[シーヌ])
 ・メクロレタミン(Mustargen[マスタージェン])
 ・メルファラン(Alkeran[アルケラン])
 ・プロカルバジン(Matulane[マチュレーン])

 

放射線療法:放射線治療は、精子細胞、および精子を作る幹細胞を死滅させることがあります。妊よう性に有害であり得る治療としては、以下のものが挙げられます。
 ・幹細胞/骨髄移植のための全身への放射線療法
 ・腹部、骨盤、下部脊椎、および睾丸または睾丸付近に照射される放射線療法
 ・脳下垂体腺への放射線療法

 

手術:手術方法によっては、手術を行うことで妊よう性が低下する、または不妊になる可能性があります。そのような手術は、前立腺、膀胱、片方もしくは両方の睾丸、または骨盤リンパ節の除去手術などです。

 

妊よう性への影響

男性の中には、がん治療により永久不妊になることもあります。あるいは、治療により精子の産生が止まることや遅くなることがあり、回復までに数年かかることもあります。一般に、放射線療法で照射された線量または化学療法で投与された用量が多い男性ほど、精子の産生を回復するまでに時間がかかります。そのような男性は、永久不妊のリスクも高まります。

 

既存の妊よう能の問題や年齢など、他の要因も妊よう性に影響を及ぼします。例えば、40歳以上の男性は、妊よう性を回復できる可能性がより低くなります。一方、思春期前にがん治療を受けた男児は、精子の損傷をそれほど受けないことがあります。しかし、強力な治療では、男児も永久不妊になることがあります。そのような治療の一例は、骨髄/幹細胞移植のための化学療法です。

 

がん治療によって妊娠しにくくなることはあり得ますが、それでも妊娠が可能であることを知っておくことが重要です。多くの医師は、化学療法や放射線治療を受けた男性に対し、精子の修復に十分な時間として6カ月待つよう助言しています。あなたにとって最適な期間を主治医と相談してください。

 

妊よう性温存のための選択肢

妊よう性を温存するための方法の多くは、がん治療の開始前に行う必要があります。取り得る選択肢は、以下のようないくつかの要因によって決まります。

・年齢
・男性の肉体的および性的な成熟度
・男性に女性パートナーが現在いるかどうかなどの交際関係

 

主治医や妊よう性の問題を専門とする医師が、妊よう性を温存するための選択肢を探す手助けができます。妊よう性の問題を専門とする医師は、不妊・内分泌治療専門医と呼ばれます。選択肢には、例えば以下のようなものがあります。

 

放射線療法からの精巣の保護:がんが睾丸以外の骨盤部位にある場合には、睾丸を放射線から遮蔽することができます。これは精子の損傷を防ぎます。

 

精子バンク:この手法は、子宮内人工授精または体外受精(IVF)処置のために精液を凍結して保存するというものです。IVFは、女性の卵子を採取し、女性の体外で、保存しておいた精子を卵子に授精させるという過程からなる手法です。ついで、女性の体内に胚を戻して成長させます。

 

精子バンクは、思春期以降の大半の男性にとって、選択肢の1つとなります。精子がわずかであったとしても、まだ卵細胞質内精子注入法(ICSI)と呼ばれる手法によって妊娠を試みることができます。ICSIでは、IVFのために採取された卵子に精子を直接注入します。

 

精巣精子採取術および精巣上体精子吸引術:この手法は、精液中に成熟した精子を含まない男性のためのものです。精巣から少量の組織を採取し、顕微鏡下で組織を検査して成熟した精子を探します。成熟した精子があったら、凍結されるか、またはすぐにIVFに使用されます。

 

精巣組織の凍結:この手法はまだ研究段階です。思春期に達していない男児のための処置です。この手法は、がん治療の開始前に精巣組織を採取し、凍結して保存するというものです。この組織は、いずれ精子になり得る幹細胞を含んでいます。組織を解凍し、手術で体内に戻して、精子産生の機能を回復させる方法が現在研究されています。

 

これらの選択肢のすべてが誰にとっても適切というわけではありません。上記の方法の中には、高額の費用がかかるものや、ただでさえストレスの多い状況にさらにストレスを加えるものもあり、それらの有効性もさまざまです。方法を決める指針として、主治医の他にカウンセラーに相談することも検討してください。

 

妊よう性温存に関する米国臨床腫瘍学会(ASCO)の推奨方法についても調べてみてください。

 

担当の医療チームに尋ねるべき質問

治療開始前に、担当の医療チームに下記の質問をすることを検討してください。

 

・私のがんのタイプ、ステージ、および分化度に対する治療選択肢それぞれよって不妊になるリスクはどの程度ですか? 不妊リスクがより低く、同等のがん治療効果がある他の治療法はありますか?
・妊よう性を温存するために、私にはどのような選択肢がありますか?
・これらの選択肢のうち、治療を遅らせるものはありますか? もしある場合、それは、私の治癒の確率にどのような影響を及ぼしますか?
・妊よう性を温存するための方法のうち、私のがんの治療効果を低下させるものはありますか?
・妊よう性を温存するための選択肢のうち、がんが再発するリスクを高めるものはありますか?
・治療を始める前に、妊よう性を専門とする医師と話すべきですか?
・どの臨床試験に私は参加できますか?
・妊よう性の問題に対処するための支援はどこで受けられますか?
・私の配偶者やパートナーと妊よう性の問題について話す際に助けが必要な場合、誰に連絡すればよいですか?
・がん治療後に妊よう性があるかどうかは、どのようにわかりますか?

原文掲載日

翻訳福原真吾

監修喜多川 亮(産婦人科/東北医科薬科大学病院)

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