House Call ‐ がんによる疲労

MDアンダーソン OncoLog 2017年7月号(Volume 62 / Issue 7)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

疲労はがん患者から報告される最も一般的な症状である。疼痛や治療の副作用、ストレスなどの複数の要因が疲労の原因となり、その管理には様々な対策が必要である。

「治療が終わった後でさえ、30%ものがんサバイバーが疲労を経験する」と、テキサスMDアンダーソンがんセンター大学の一般内科学教室の教授Carmen Escalante医師は話した。「しかし、疲労は必ずしもがん患者とサバイバーが避けられないものではない」。

MDアンダーソンがん疲労クリニックでEscalante医師は、がん患者とサバイバーが疲労を克服する方法を上手く見つけ出せるようサポートしている。これらの方法のいくつかは下記のようにまとめられ、患者とサバイバーの両方に効果が認められているが、理想的な疲労の管理へのアプローチはそれぞれの患者に基づいてなされるだろう。

運動

まず、疲労を感じている人に、外に出て運動をしなさいと言うのは奇妙に思われるが、中等度の運動はヒトのエネルギーレベルを上げる助けとなることが、研究により示されている。「研究されてきた全ての手法のうち、運動は疲労を改善する最も良いデータを示している。しかし、患者に効果が認められるには数ヶ月の定期的な運動が必要である」とEscalante医師は語った。

疲労を感じているがん患者、特に過去に運動をしていなかった人達にとって大切なことは、短距離の歩行または歩行以外の強度の低い活動を行いながらゆっくり開始し、徐々に運動量を増やすことである。患者は新しい日常的な運動を開始する前には医師に相談するべきである。

睡眠

睡眠不足は疲労の原因となりうる。少し生活習慣を変える、例えば午後以降はカフェインやニコチン、チョコレートを控える、就寝1時間前にはテレビを切ることなどで、良く眠ることができる患者もいる。もしそのような変化によっても睡眠が改善しなければ、その患者は睡眠障害について検査を受ける必要があるだろう。

エネルギーの節約

疲労のある患者はエネルギーを節約できるように自分の活動を計画することができる。この計画には、最も重要なことが確実に行えるように優先順位を付けること、いくつかの用事は他の人達に任せることが含まれる。患者にとって多くのエネルギーを要する活動は、一日の内で最もエネルギーのある時間に予定し、それらの間に休憩を入れることができる。

ストレスと不安の管理

疲労の原因となるストレスと不安を和らげるために複数の選択肢が考えられる。瞑想や深呼吸のようなリラクゼーション法はストレス軽減に寄与することができる。また、ほとんどのがん病院には患者がストレスや不安に対処できるようカウンセラーが勤務している。がんによる不安を持つ患者の中には抗不安薬を処方されている者もいるが、これらの薬が全ての患者に適切とは限らない。

内服薬

がんによる疲労を治療するために、刺激剤や抗うつ薬が試みられてきた。しかし、これらの研究結果は一貫していない、とEscalante医師は言う。そのため基本的に薬剤は、疲労の原因となり、その薬剤で治療可能な特定の疾患の患者に使用される。

Escalante医師は、患者が臨床的なうつでない限り、抗うつ薬投与だけでは疲労に効果がないだろうと語った。

しかし、刺激剤は中等度から重度の疲労患者に対して運動のような他の介入と共に使用されるかもしれない。ただし、Escalante医師は次のように続けた。注意欠陥多動性障害や閉塞性睡眠時無呼吸など、承認されている適応症の診断がない限り、保険会社は刺激剤のような薬に対して保険金を支払わないと思われる。

専門家のサポート

がん治療の期間中または治療後に、疲労のある患者はいつでも担当医に疲労管理の専門クリニックへの紹介を頼むことができる。MDアンダーソン疲労クリニックでは、患者の約半数ががんの治療中で、半数が終了している。

初診時に患者は一通りの診察を受ける。Escalante医師は「最近受けていなければ血液検査行い、貧血や甲状腺機能低下症、肝腎機能障害のような疲労の原因となる医学的に可逆的な問題がないか調べる」と語った。

患者はまた、疲労の症状、不安、ストレス、疼痛、睡眠についての詳細な質問票に回答する。「その調査は、我々がこの網のように絡み合った症状をより分け、患者中心の個別の治療計画を作成する助けとなる」とEscalante医師は話した。 一般的にこれらの計画は、運動や上記の手法などを含んでいる。患者のニーズによって、精神科や不眠症などの専門医に紹介されるかもしれない。

6週間以内に経過観察のための受診が予定される。この受診時に質問票調査が繰り返され、疲労レベルの変化が観察される。Escalante医師は、 基本的に患者の疲労レベルはその期間中に改善すると話した。

「疲労はいつも完全になくなるとは限らない。しかしより重度から中等度または軽度に軽減し、生活の質を向上させることができる」とEscalanteは語った。

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翻訳担当者 中村 奈緒美、

監修 佐藤 恭子(緩和ケア内科/川崎市井田病院)、、

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