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小児がん素因症候群へ推奨するサーベイランスをAACRが発表

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小児がん素因症候群へ推奨するサーベイランスをAACRが発表

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

コンセンサスがんサーベイランス推奨

 

2016年10月、米国がん学会(AACR)は、小児がん素因症候群専門家による国際会議を開催し、これらの症候群の現在の知見を評価し、コンセンサス・サーベイランス推奨を提案した。Clinical Cancer Research誌2017年6月号で、専門家チームは症候群の臨床的および遺伝的側面を要約し、データを検証し、これらの障害を有する患者にがんサーベイランスが提供されることを提言した。

 

小児神経線維腫症1型

神経線維腫症は、神経線維腫症1型(NF1)、神経線維腫症2型(NF2)、そしてシュワノマトーシスと少なくとも3つの常染色体優性遺伝性疾患からなるが、NF1は他の二つと異なり、多系統性多面的状態を表す。

 

NF1は遺伝的な症候群で、最初は幼少期に現れる。複数の臓器、小児発達、および神経認知状態に影響を与え、臨床医には、集学的アプローチを必要とする、しばしば複雑な管理上の決定が提示される。

 

NF1を確認するために、特に診断基準の色素特徴だけを満たす幼児においては、分子遺伝学的検査が推奨される。

 

がんリスクはNF1患者が幼少時期に直面する大きな問題ではないが、この疾患は一般集団と比べ悪性腫瘍のリスクを有意に増加させる。具体的には、NF1は若年性骨髄単球性白血病、横紋筋肉腫、そして悪性末梢神経鞘腫瘍の高いリスク上昇に関連しているだけでなく、非侵襲性線毛性星状細胞腫になる危険性がかなり高く、特に視神経膠腫(OPG)は管理において大きな問題となる。

 

8歳まで、OPGの臨床評価は6~12カ月ごとに行われることが推奨されるが、臨床視覚路障害の兆候がない無症候性のNF1患者には定期的MRI評価は現在推奨されていない。

 

他の悪性腫瘍に対する定期的サーベイランスは推奨されていないが、臨床医や両親は特定の個々の悪性腫瘍(例えば、横紋筋肉腫)リスクがわずかにあること(<1%)を認識しておくべきである。

 

腫瘍は、罹患率と死亡率の両方に、特に後半の人生では影響を及ぼすものである。

 

長期にわたるフォローアップへのアプローチを決定するためにも、成人期への移行時に1回の全身MRIを検討すべきである。

 

小児の神経線維腫症2型および関連障害

80年以上にわたって、神経線維腫症1型(NF1)、神経線維腫症2型(NF2)、およびschwannomatosis(シュワノマトーシス)は、全身性の神経線維症として、一括りにされていた。1987年、NF1の17q染色体への局在、NF2(両側性前庭神経鞘腫)の22q染色体への局在について、メリーランド州ベセスダで行われたコンセンサス会議で見解が統一され、2種の主要な神経線維腫症、すなわちNF1およびNF2は、正式に区別された。さらに最近では、22q染色体のSMARCB1遺伝子およびLZTR1遺伝子が神経線維腫症の一部の原因となっていることが確認された。

 

特にNF2の小児期発現(髄膜腫を併発することが多い)では、重篤な多重腫瘍の疾病経過が予想される。

 

NF2では、悪性のものはまれで、特に小児期では稀少である。しかし、良性および低悪性度の中枢神経系腫瘍による相当のリスクがあり、管理を最適化するためにMRI検査を必要とする。

 

耳道からの高精細画像を含む少なくとも年1回の脳MRI検査および臨床検査ならびに聴覚評価が、診断以降、あるいは無症状の場合には10~12歳あたりから必要である。

 

ベースライン時点および2~3年ごとの脊椎画像撮影が推奨され、腫瘍関与部位に応じて必要と思われる場合にはより高い頻度での撮影が推奨される。

 

シュワノマトーシスにおける悪性腫瘍のリスクは、十分には定義されていないが、SMARCB1における悪性末梢神経鞘腫瘍のリスクは高い可能性がある。画像診断計画も、SMARCB1およびLZTR1シュワノマトーシスならびにSMARCE1関連の髄膜腫の疾病素因に対して提示されている。

 

ゴーリン症候群およびラブドイド腫瘍素因症候群

ゴーリン(Gorlin)症候群およびラブドイド腫瘍素因症候群(RTPS)は、小児期発症脳腫瘍のリスク増加に関連する常染色体優性症候群である。ゴーリン症候群患者は、多様な表現型異常を呈することがあり、その家族の約5%が髄芽腫を発症しており、通常は生後3年以内に現れている。

 

ゴーリン症候群は、PTCH1やSUFUなど、ソニックヘッジホッグ(Sonic Hedgehog)経路の構成遺伝子の生殖細胞変異に関連している。

 

SUFU変異のキャリアは、早期発症髄芽腫のリスクが特に高いように思われる。したがって、SUFU変異のキャリアは、生後1年でのサーベイランスMRIが推奨される。

 

基底細胞がんのリスクを想定して、定期的な皮膚科検査および日焼け防止も推奨される。

 

ラブドイド腫瘍(RT)は、通常は3歳未満で発現し、頭蓋内に非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(AT/RT)として生じることや、頭蓋外、特に腎臓に悪性ラブドイド腫瘍として生じることがある。しかし、どちらのタイプのRTでも、SMARCB1(まれにSMARCA4)の生殖細胞変異および体細胞変異がみられる。SMARCA4変異は、高カルシウム血症型の卵巣小細胞がんに特に関連している。

 

これらの腫瘍はいずれも診断後の転帰が不良であることが多く、サーベイランスの有効性は分かっていない。サーベイランスプロトコルを確立するための国際的な取り組みが進められており、SMARCB1およびSMARCA4変異のキャリアに対して予備的な勧告がなされている。

 

フォン・ヒッペル・リンドウ病および遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群

フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病は、遺伝的素因による腫瘍性症候群で、罹患患者には多発性腫瘍が発生するリスクを伴う。腫瘍の多くは良性であり、主に中枢神経系または腹部に発生する。

 

腫瘍の発生は成人期にみられることが大半であるが、小児および若年の腫瘍患者はかなり高い割合でVHL兆候を呈し、腫瘍の発見が遅れがちで、VHLの後遺症になりやすい。

 

現在、VHL病患者には、腫瘍検出のさまざまなスクリーニング法が枠組みとして適用されているが、入手可能な関連情報が増え続けるいく中で、定期検診を再評価すべきである。専門家委員会は既存のVHLスクリーニング法と類似した新たな枠組みを提案した。そこでは小児期のリスクに重点を置き、腫瘍タイプのいくつかに関して大きな変更が加えられた。この提案には、検診の開始時期の早期化とスクリーニング評価の実施頻度増加についても盛り込まれている。

 

もうひとつの神経内分泌関連家族性疾患は、急速に拡大する遺伝性パラガングリオーマ・褐色細胞腫症候群(HPPS)である。HPPS患者に発生する腫瘍には、パラガングリオーマ、褐色細胞腫、腎がん、消化管間質腫瘍がある。

 

HPPS患者の大部分に、原因遺伝子であるSDHx遺伝子のある箇所の変異を認めるが、他遺伝子(MAX、TMEM127)も発症に関与している。

 

腫瘍の早期検出、ならびにHPPS関連腫瘍の罹患率および死亡率の低下を目的として、HPPS症候群の年長児および成人に対し、全血球数のほかに血漿中または尿中マーカーの上昇について年1回スクリーニングを行うこと、また全身MRIと共に頸部に限局したMRI撮像も2年に1回実施することが推奨される。

 

PTEN、DICER1、FH、およびそれらに関連する腫瘍感受性症候群

PTEN過誤腫症候群(PHTS)、DICER1症候群及び遺伝性平滑筋腫症-腎細胞がん症候群(HLRCC)は成人と小児に影響を及ぼす良性腫瘍と悪性腫瘍を含む多面的腫瘍素因症候群である。

 

PHTSには、共通な独特の臨床的特徴を有するいくつかの障害が含まれる。これらの障害は、乳がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、大腸がん、腎臓がんおよびメラノーマ(悪性黒色腫)といった生涯リスクの上昇と関連している。甲状腺がんが20歳以下では一番のがんリスクである。

 

DICER1症候群には、胸膜肺芽腫、嚢胞性腎腫、卵巣の性索間質性腫瘍、多結節性甲状腺腫および甲状腺がんならびに松果体芽腫および下垂体芽腫を含む脳腫瘍といったリスクが含まれる。

 

HLRCC患者は、複数の皮膚平滑筋腫と子宮平滑筋腫を発症する可能性があり、また腎細胞がんのリスクが高い。

 

これらそれぞれの症候群に対して、専門家委員会は重要な症候群の特徴の概要を提供し、根底にある遺伝的事象について議論し、特定のスクリーニングを推奨した。

 

がんリスク増加を伴うRASopathies[ラスマップケー(RAS/MAPK)症候群]およびその他のまれな遺伝子の状態

専門家委員会は、Rasopathiesおよびソトス(Sotos)症候群、ウィーバー(Weaver)症候群、ルビンシュタイン・テイビ(Rubinstein-Taybi)症候群、シンツェル・ギーディオン(Schinzel-Giedion)症候群およびNKX2-1症候群、小児がんリスクの増加と関連があることで知られている特定の代謝障害についての臨床的および遺伝的側面を要約した。さらに、専門家委員会は、これらの障害を持つすべての患者が、がんサーベイランスを受けることを勧めるための十分なデータが存在するか否かを再検討した。

 

すべての症候群について、委員会は臨床症状の認識の向上と迅速な評価を推奨した。

 

コステロ(Costello)症候群の患者はがんリスクが最も高いため、がんサーベイランスを考慮すべきである。

 

特定のPTPN11変異またはKRAS変異が存在するヌーナン症候群の乳児患者、および、CBL症候群の患者においては、定期健康診断および全血球計算の実施が可能である。

 

また、L-2ヒドロキシグルタル酸尿症患者には脳腫瘍のリスクが高いため、MRI脳検査による定期的なスクリーニングが必要となる可能性がある。

 

ほとんどの症候群において、非悪性の健康問題のためにサーベイランスが必要になる可能性がある。

原文掲載日

翻訳塔本容子、石塚啓司、福原真吾、福升志織、畔柳祐子

監修林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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