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心理的介入による進行がん患者の苦痛緩和

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心理的介入による進行がん患者の苦痛緩和

米国臨床腫瘍学会(ASCO) 2017

この要約には抄録にはない最新データが記載されています

 

ASCOの見解

「進行がんと診断されることは、患者や家族にとって重い負担になります。本試験はこの負担を和らげる新たな方法を与えてくれます。私たちの腫瘍医としての仕事は、患者の身体的症状の治療だけではありません。患者がうまくがんと向き合い、今後の計画を立てることができるように、他の形のサポートを提供することも私たちの仕事です」と、米国内科学会名誉上級会員(FACP)、米国臨床腫瘍学会専門委員(FASCO)のDon S. Dizon医師は述べている。

 

進行がんは大きな苦痛を引き起こし、抗しがたく思える課題をもたらす。しかし、ほとんどのがんセンターにおいて、患者や家族が進行がんの実際的な負担を管理することができるような体系的なアプローチが欠けている。

 

進行がん患者305人のランダム化比較試験の所見では、CALM(Managing Cancer And Living Meaningfully「がんを上手く管理して有意義に暮らす」)と呼ばれる短期の心理的介入が、このニーズを満たすのに役立つことが示唆されている。 3カ月時点で、CALMを受けた患者の52%において、通常ケアを受けた患者の33%と比較して、抑うつ症状において臨床的に重要な減少が認められた。また、CALMを受けた患者では、3カ月と6カ月の時点で精神的に健康な状態の改善がみられ、終末期に対して準備が進んでいた。

 

本試験は、本日の記者会見で取り上げられ、2017年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される予定である。

 

「この短期対話療法(brief talking therapy)は、進行がんに直面している患者や家族が、その人生に期限があることをわかっているにもかかわらず有意義な行動を持続し、その後に向き合うことを支援します」と、本試験の筆頭著者で、カナダのトロントにあるプリンセス・マーガレットがんセンター支持療法部門長のGary Rodin医師は述べている。Rodin博士は、同僚のSarah Hales医学博士、Chris Lo医学博士とともにCALMを開発した。訓練が進行中で、世界各地のがんセンターに同手法を拡げることができるようになると述べている。

 

「CALMは進行がんに関連する脅威や課題、治療関係における安心の基地の経験、および感情の制御と調節に対する支援について検討するための時間と場所を提供します」とRodin博士は述べている。

 

介入について

CALMは、進行がん患者のために特別に開発された心理的介入である。ソーシャルワーカー、精神科医、臨床心理士、緩和ケア医と看護師、腫瘍医など、訓練を受けた医療従事者が3〜6カ月間にわたって行う3〜6回の45〜60分のセッションで構成されている。家族やパートナーがCALMセッションに招待される。セッションは、以下の4つの広範な分野に重点を置いている。

 

症状管理、医学的意思決定、および医療提供者との関係

自己概念と人間関係における変化

人生における精神的満足感と意味と目的の感覚

未来志向の心配ごと、希望、および死

 

「CALMは、患者が終末期に対する準備をすることだけでなく進行がんを抱えて生きていくことを支援する点、進行がん患者が直面している実際的な心配ごとだけでなくさらには実存的関心に重点を置いている点で、他の介入とは異なります」とRodin博士は述べている。

 

試験について

本試験では、305人の進行がん患者を、カナダの大都市圏の包括的ながんセンターで募集した。患者を無作為にCALM療法と通常ケア、または通常ケア単独(対照群)に割り付けた。

 

対照群の参加者は、定期的ながん治療およびフォローアップ、ならびに診療所ベースの苦痛スクリーニングを受けた。対照群の約3分の1の患者が何らかの特別な心理社会的な側面を踏まえたがんケアを受けたが、構造化または半構造化された心理療法を受けたのは10%未満であった。

 

研究者らは、抑うつ症状(PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)を使用)およびその他の転帰を、試験登録(ベースライン)時、3カ月時点(主要エンドポイント)および6カ月時点(試験エンドポイント)で測定した。

 

主要な所見

通常ケア群の患者と比較して、CALM介入群の患者では、3カ月時点での重篤な抑うつ症状の報告が少なく、6カ月時点では2群間の差がさらに大きくなった。臨床的影響の面では、試験登録時に少なくとも閾値下うつ病の重症度(臨床的に有意に障害に関連するが、大うつ病性障害診断の完全な基準は満たさない)の抑うつ症状を有した参加者については、通常ケアを受けていた患者よりもCALMを受けていた患者の方が、3カ月(52%CALM対33%通常ケア)および6カ月(64%CALM対35%通常ケア)の時点で、症状の重症度において臨床的に重要な低下を示した。

 

CALMはまた、試験登録時に抑うつ症状を有していない137人の患者のうつ病の予防にも役立った。3カ月時点で、通常ケアを受けていた患者の30%に対して、CALMを受けていた患者の13%のみが抑うつ症状(少なくとも閾値下うつ病の重症度)を発症した。

 

3カ月と6カ月の両方の時点で、CALM群では、人生の終末期に対する準備がさらに進められ、未来に対する関心を話す機会が多くなり恐怖は軽減し、感情を表現し管理する能力が高くなったことが報告された。 6カ月時点では、これらの影響が強まり、CALM群は、がんの経験を理解し、がんの結果としての関係の変化に対処し、医療チームや家族とのコミュニケーションの方法を探り、価値観や信念を明らかにすることができると、さらに感じるようになった。

 

次の段階

本試験の次の段階には、CALMの治療プロセス、介入における臨床医の訓練のための最適なアプローチ、臨床転帰を最もよく把握することができる測定ツールの緻密化、および多様な臨床背景や地域における実施の有効性について理解を深めることが含まれる予定である。

 

本試験はカナダ国立衛生研究所による資金提供を受けた。

 

抄録の全文についてはこちらを参照のこと。

 

原文掲載日

翻訳会津麻美

監修太田真弓(精神科・児童精神科/さいとうクリニック院長)

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