肛門がん治療におけるニボルマブの投与―OncoLog 2016年9月号 | 海外がん医療情報リファレンス

肛門がん治療におけるニボルマブの投与―OncoLog 2016年9月号

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肛門がん治療におけるニボルマブの投与―OncoLog 2016年9月号

MDアンダーソンがんセンター月刊OncoLog2016年9月号

MDアンダーソン OncoLog 2016年9月号(Volume 61 / Issue 9)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

肛門がん治療におけるニボルマブの投与

免疫療法薬が肛門管扁平上皮がんに対する治療効果の可能性を示す

 

現在、治療抵抗性の転移性肛門管扁平上皮がん(SCCA)患者に対する標準的な治療選択肢はないが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者主導の多施設臨床試験(No. NCI9673)の初期成績において、免疫療法薬Nivolumab(ニボルマブ)が同疾患に対して有効である可能性が示された。

 

「まれながんとはいえ、SCCAは増加傾向にありHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染や免疫機能障害と強く関わっています」と、Cathy Eng医師(消化器腫瘍科教授で、この臨床試験の総括責任医師)は語った。同医師によると肛門管がんの罹患率は毎年2〜3%増加しているとのことである。

 

毎年、米国内でSCCAと診断される8000人以上のうち約20%は診断時に遠隔転移がみられる。さらに、早期のSCCAと診断された人の20%でも、後に遠隔転移が生じる。通常、転移性SCCAの治療として白金製剤を含む化学療法が用いられるが、転移性SCCA患者に対する化学療法レジメンの評価は臨床試験で十分になされておらず、また治療抵抗性の転移症例に対する標準治療も確立されていない。

 

ニボルマブの評価

 

ニボルマブは、プログラム細胞死タンパク1(PD-1)と結合*し、その働きを阻害するモノクローナル抗体である。PD-1は免疫チェックポイントであり、そのリガンドであるPD-L1により活性化するとTリンパ球による攻撃を遮断する。HPVが関与する肛門管がんはウイルスにより生じたタンパク質を有しており、そのためニボルマブの作用により免疫系がHPVに感染したがん細胞を認識して攻撃しやすくなるのではないかと考えられている。

 

現在行われている第2相試験は治療抵抗性転移性SCCAの治療におけるニボルマブの有効性を評価する初の研究である。Eng医師は、この試験の参加者登録はわずか5カ月で完了しており、これまで満たされていなかった治療ニーズの応えられるのではないかと語った。

 

この試験は、転移性SCCAに対する治療歴のある患者を対象としており、参加した患者は、がんの進行がみられるか、許容できない毒性が出現するまで、2週間ごとにニボルマブの経静脈投与を受けた。

 

研究にとって重要なのは患者集団がSCCAの典型的な経過をたどる患者を代表することであり、この試験では、HIV陽性患者も、CD4陽性Tリンパ球数が300個/μL以上あれば適格とした。「HIVは、免疫不全を引き起こし、肛門管がんのリスク因子であることは確実と考えられています」とVan Morris医師(消化器科准教授)は語った。実際、HIV陽性患者2人が登録されており、この試験は、HIV陽性患者を組み入れた初のPD-1ないしPD-L1阻害薬の臨床試験となった。

 

初期成績

 

9人の患者から得たニボルマブ投与前と投与中のがん生検標本を用いた探索的相関解析では、ニボルマブが奏効した5人の患者の治療前標本は奏効しなかった患者の治療前標本と比較して、CD3陽性CD8陽性T細胞の割合が有意に高かった。また、ニボルマブが奏効した患者の治療前標本では、奏効しなかった患者の治療前標本と比較して、PD-1を発現するCD8陽性T細胞とPD-L1を発現するCD45陽性免疫細胞の頻度が高かった。米国がん学会の年次総会で発表されたこれらの探索的研究結果は、免疫学的バイオマーカーとニボルマブの治療効果との間に相関があることを示した。

 

臨床試験の成績は6月に開かれた米国腫瘍学会の年次総会で報告された。腫瘍縮小効果の評価が可能であった患者37人のうち2人は完全奏効、7人は部分奏効、17人は病勢安定であった。これらの数字から病勢制御率は70%、奏効率は24%と計算される。無増悪生存期間の中央値は3.9カ月であった。

 

ニボルマブの投与を受けた患者に(CTCAE)Grade 4の毒性はみられなかったが、Grade 3の疲労、貧血、皮疹、甲状腺機能低下症が計5例報告された。Grade 1ないし2の疲労、貧血および皮疹もみられた。HIV陽性患者においても、特別な毒性はみられなかった。

 

現在、MDアンダーソンで3人、他の参加施設で3人の計6人の患者が試験治療を継続している。この臨床試験は本年中にさらに多くの患者を登録するように実施計画を改訂しているところである。「私たちの成果は、標準治療のない疾患の患者に対し大きな期待を抱かせる一歩となるのです」とEng医師は語った。「今後、免疫療法薬の併用の検証など研究範囲を拡大する予定です」。

 

For more information, contact Dr. Cathy Eng at 713-792-2828 or Dr. Van Morris at 713-745-8466. Laura Sussman contributed to this article.

 

【画像キャプション訳】

 

上 : 治療前のCTスキャン画像。肛門管扁平上皮がんの転移(矢印)がみられる。下 : 同患者に対しニボルマブを22サイクル投与した後のCT画像。改善がみられた。画像提供 : Cathy Eng医師

 

—— Brandon C. Strubberg

※監修者注:原文では、ニボルマブがPD-L1と結合するとの記載がありますが、正確な記載ではないため、訳文からは削除しております。

 

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳渋谷武道

監修高野利実(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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