HPV関連がんの検診―OncoLog 2016年8月号 | 海外がん医療情報リファレンス

HPV関連がんの検診―OncoLog 2016年8月号

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HPV関連がんの検診―OncoLog 2016年8月号

MDアンダーソン OncoLog 2016年8月号(Volume 61 / Issue8)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

HPV関連がんの検診

HPVが関連する肛門がんおよび中咽頭がんの検診法を追求

 

子宮頸がん以外のヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんについて、コンセンサスの得られた検診の指針は存在しない。指針の作成に向けたステップとして、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでは、リスクが高いと思われる集団で特定のHPV関連がんを早期発見するためのさまざまな方法に関する臨床試験を実施中、もしくは計画中である。

 

HPVは中咽頭がん、陰茎がん、肛門がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がんの原因となることが知られているが、子宮頸がんのみ検診の指針および信頼できる検査法が確立されている。パパニコロウ検査(パップテスト)は、早期がんや前がん状態の異形成が検出できる。「パップテストは前がん状態の組織を検出でき、子宮頸がんを予防します」と、頭頸部外科部門および疫学部門教授のErich Sturgis医師は述べた。「しかし、中咽頭がんや肛門がんに対してはこのような検査法がありません」。

 

Sturgis医師らは、HPVに関連する肛門がんや中咽頭がんのリスクが高い人を選別する検査法について、臨床試験でデータを出したいと願っている。そのような臨床試験が女性を対象として現在1件進行中であり、男性を対象とした別の試験も近々開始される。

 

女性における肛門がんの検診

 

HPVに関連する子宮頸がん、膣がん、外陰がんを有する患者は、HPVによる肛門がんのリスクも高いと考えられているが、これらの患者における肛門がんの発生率はまだ明らかになっていない。現在進行中の臨床試験において、子宮頸がん、膣がん、外陰がんもしくはそれらを異形成の段階で有する女性患者における肛門がんの有病率の解明と、HPVが関連する肛門がんおよび異形成の検診法の比較が行われている。

 

この試験は、子宮頸部、膣、外陰における異形成またはがんを有する女性における肛門異形成もしくはがんの有病率に関する臨床試験(PANDA試験と呼ばれる、No.2014-0021)で、MDアンダーソンおよびその地域ケアセンター、ならびにヒューストンのリンドン・B・ジョンソン病院で参加者を登録している。

 

婦人科腫瘍学・生殖医療部門准教授のKathleen Schmeler医師と、結腸・直腸外科腫瘍学部門准教授のCraig Messick医師がPANDA試験の共同試験責任医師となっている。「Messick医師と私は肛門がんと子宮頸がんもしくは外陰がんを有する患者を何人か共同で診察しており、このことから婦人科がんの女性患者について肛門がんの検診をすべきではないかと気づきました」とSchmeler医師は話す。「だからこの試験を実施しているのです」。

 

Schmeler医師によると、現在の肛門がんの検診には標準化された検診法がなく、パップテストが登場する前の子宮頸がん検診の状態と同じであるという。「ほとんどの場合、症状が出るようになってから肛門がんと診断されており、すでにがんが進行して別の問題が生じています」とSchmeler医師は話す。「子宮頸がんも以前は同じ状況でしたが、パップテストが標準となってからは、上皮内がんもしくはごく早期の進行期で子宮頸がんを発見できます。これと同じことを肛門がんでもやりたいのです」。

 

PANDA試験は最終的に患者500人を登録する予定。その試験の登録基準は、子宮頸部、膣、外陰のいずれかに浸潤性の扁平上皮がんまたは高度な異形成を有する18歳以上の女性。ただし妊娠中の女性および肛門または肛門管に異形成や浸潤がんの既往歴がある女性は除かれる。

 

試験に参加した患者に対して、有している婦人科がんまたは異形成に対する標準的な検査のほか、肛門がんまたは肛門異形成に対する検診として肛門パップテスト、肛門HPV検査、高精度の肛門鏡検査を実施する。これらの検診のいずれかで異常な所見が見られた場合はMessick医師のグループに移されさらに検査および治療を行う。

 

高リスクの女性集団におけるHPV関連の肛門異形成および肛門がんの有病率だけでなく、肛門パップテスト、肛門HPV検査、肛門鏡検査の感度および特異度に関するデータも今回の臨床試験から得られる。Scmeler医師は、「肛門がんのリスクが高い患者が存在することはわかっています。検診の頻度やもっとも効率よい検診法を見つけたいと思っています」と述べている。

 

男性の中咽頭がん検診

 

PANDA試験が、HPV関連の肛門がんの定期検診に関するガイドライン作成につながるデータを提供することを目的としているように、Sturgis医師はHPV関連の中咽頭がんに関して同様のデータを提供できる試験の企画に協力している。中咽頭のHPV感染症とHPV関連の中咽頭がんはいずれも女性より男性に好発するため、Sturgis医師の試験は男性に限定し、特に50代の男性を登録する予定である。

 

同試験は、ヒューストン周辺の複数の施設で参加者の登録を始めるところである。喫煙と飲酒のほか性生活について参加者が記入する質問票があり、HPV検査用の細胞標本を「洗口液」を使う方法によって咽喉から採取する。血液も採取し、血清中におけるHPV16型の初期(E)抗原に対する抗体の有無を確認する。

 

「われわれの以前の研究から、血清中のHPV16型抗原E6およびE7に対する抗体と、中咽頭がんの間には非常に強い関連があることがわかりました」とSturgis医師が話した。「試験参加者の男性のうち、1〜2%がそれらの抗体に陽性であると推定しています」。

 

HPV16型抗原E6またはE7に対する抗体の血清反応が陽性の被験者を、同数の陰性被験者とともにMDアンダーソンに送り、さらにHPV検査とがん検診を実施する。両群とも、咽頭、肛門および陰茎の標準的な臨床検査と、頸部リンパ節の標準的な超音波検査を受ける。肛門の検査には、標準的な高解像度の肛門鏡検査、さらに新しい技術である高解像度の顕微内視鏡のほか、ブラシによる狙い擦過法を使用して採取した細胞からHPV に関して標準的な検査と新しい検査を実施する。

 

ただし、試験の主眼は中咽頭がんにある。Sturgis医師は、「肉眼で見えるようになる前に、画像診断によって早期の中咽頭がんを検出できるかどうかをみるために、いくつかの実験的な方法を使用します」と話した。同試験で使用される技術のひとつ、光干渉断層撮影(OCT)は眼科ではよく使用されているが、中咽頭がんの発見には使用されていない。さらに、早期胃がんを発見するために内視鏡で使用されている狭帯域画像診断(NBI)も試みる。

 

試験では、扁桃腺および舌根からも細胞標本を採取し、遺伝子に組み込まれたHPVを探す。通常、HPVが遺伝子に組み込まれることが、HPV関連がんの発症の第一段階である。Sturgis医師によれば、「遺伝子に組み込まれたHPVの検査を検診に適用するのは、これが初めてになります」。 同試験では試験参加者を5年間追跡する。頭頸部の検査および画像診断は半年ごとに実施するが、肛門および陰茎の検査は1回のみである。

 

この試験には目標が2つある。第一に、高リスク群に対する血清中のHPV検査が検診手法として有効かどうか、第二に、HPV関連がんまたは前がん病変の早期発見に最も有効な検査を確認することである。Sturgis医師によれば、「核心となる問題は、HPVによる中咽頭がんの検診機序を確立することができるかどうかです」。

 

HPV検査を奨励

 

MDアンダーソンには、がん検診およびがん予防のためのHPV検査の役割を検討している研究者もいる。今秋から患者の登録を開始する試験(No. 2015-0795、一般内科学部門の准教授Jessica Hwang医師が主導)では、同種造血幹細胞移植を受けた患者が、HPV関連がんに相当する解剖学的部位のHPV検査を受ける。同種造血幹細胞移植を受けた患者ではHPV関連がんのリスクが高いことが複数の試験で明らかになっている。

 

Sturgis医師の試験やSchmeler医師とMessick医師の試験と同じく、Hwang医師の試験でもHPV関連がんの早期発見を可能とするデータが得られる可能性がある。その間にも、Sturgis医師は他医に、50代の男性に同医師の試験への参加を勧めるように求めている。

 

同様に、Schmeler医師は、他医がHPV関連の婦人科がんに罹患したことがある患者に同医師の試験への参加を検討するよう勧めてくれることを期待していると話す。「肛門がんの検診にはガイドラインがないため、リスクのある患者を有する医師にとってはこの試験が良い選択肢になります」。

 

For more information, call Dr. Jessica Hwang at 713-745-3559, contact Dr. Craig Messick at 713-445-1544 or cmessick@mdanderson.org, contact Dr. Kathleen Schmeler at 713-745-3518 or kschmele@mdanderson.org, or call Dr. Erich Sturgis at 713-792-5432.

 

To learn more about ongoing clinical trials at MD Anderson, visit www.clinicaltrials.org.

 

【上段グラフキャプション】 HPVワクチン接種率 対象となる女性に対する率、国別

 

ワクチン接種はHPV関連がんの予防に最適な方法である。米国のHPV接種率は改善してきたものの、多くの国の接種率と比べて遅れている。上記統計は接種対象女性におけるワクチン3回接種を完了した女性の割合を示している。米国疾病管理予防センター(CDC)は11歳~26歳の男女にHPVワクチン接種を推奨している。出典: Institut Català d’Oncologia Information Centre on HPV and Cancer

 

【画像キャプション】 扁桃がん細胞の免疫組織化学染色画像(茶色)は、p16過剰発現を示し、HPV誘発の中咽頭がんであることを示唆している。画像はErich Sturgis医師の厚意による

 

 

 

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳橋本 仁、ギボンズ京子

監修喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

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