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感染症起因のがん発症率は社会情勢と大きく関連

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感染症起因のがん発症率は社会情勢と大きく関連

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

 

社会経済的発展は、感染症起因のがんの減少に関連している

 

2016年7月25日発行Lancet Global Health誌の記事によると、2012年の新たながん患者1400万人の中で、15.4%は発がん性の感染症に起因していた。感染症起因のがんの3分の2は発展途上国で発生しており、こうした国々では感染症起因のがんが全体のほぼ4分の1を占めていた。

 

世界的に最も重要な感染性病原体は、ヘリコバクター・ピロリ、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプステイン・バー・ウイルス(EBV)であった。カポジ肉腫は、サハラ以南のアフリカでは感染症起因のがん発症としては第2位であった。

 

世界中のがん発症に対する発がん性感染症の関与は、定期的に評価されてきた。2009年に国際がん研究機関(IARC)の専門ワーキンググループにより、感染症とがんとの関連についてのエビデンスが包括的に検討された。この専門家レビューを元に、2008年の感染症による世界的がん発症推計が発表された。

 

それ以降、新たながん発生推計がGLOBOCAN2012年で入手できるようになるとともに、数多くの新たな疫学的研究から、HPVの頭頸部がんへの関与や、ヘリコバクター・ピロリの胃がん、特に胃噴門部がんへの関与について、よりよいエビデンスが示されてきた。直近の研究では、IARC研究者らが、利用可能なデータを統合して、世界全体におけるがんと感染症発症の現状を示している。この研究は最新のデータを用いるとともに、国ごとの推計と、社会経済的発展レベルによる解析をより詳細に示し、前回の報告よりも改善した内容であった。

 

ある特定のウイルス、細菌、寄生虫の感染は、特定のがんに対して強力な危険因子である。IARCがこれまでに、人間において確証された発がん性病原体として分類してきた感染性病原体11種類は以下の通り。ヘリコバクター・ピロリ、HBV、 HCV、 HIV-1(ヒト免疫不全ウイルス)、HPV (16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59型―まとめてハイリスク型と呼ぶ)、EBV、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8、カポジ肉腫ヘルペスウイルスとも呼ぶ)、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)、タイ肝吸虫、肝吸虫、およびビルハルツ住血吸虫。

 

これらの病原体の中で、HIVは、他の発がん性感染性病原体との組み合わせになる場合のみ、がんリスクを上昇させることがわかっているため、寄与リスク算出方法が異なる。IARC研究者らは、HIV陽性者のがんを重感染によるものとした。

 

したがって、HIVを除く10種の感染性病原体と、それらに関連する下記のがん種について検討した。

 

ヘリコバクター・ピロリ:非噴門部胃がん、胃噴門部がん、胃非ホジキンリンパ腫

HBV:肝臓がん

HCV:肝臓がん、非ホジキンリンパ腫

HPV:子宮頸がん、陰茎がん、肛門がん、外陰がん、腟がん、扁桃および舌根を含む中咽頭がん、口腔がん、喉頭がん

EBV:ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、上咽頭癌

HHV-8:カポジ肉腫

HTLV-1:成人T細胞白血病およびリンパ腫

タイ肝吸虫と肝吸虫: 胆管がん

ビルハルツ住血吸虫:膀胱がん

 

2012年、世界のがん症例の約6分の1が、感染性病原体に起因するものであった。感染症起因のがんの3分の2は発展途上国で発生しており、こうした国々では感染症起因のがんが全体のほぼ4分の1を占めていた。がん発症に寄与する主な感染性病原体は、ヘリコバクター・ピロリ、HPV、HBV、HCVであり、それらを合わせると世界中で感染症により発生するがん全体の92%を占める。

 

感染症の寄与割合は、国や発展レベルによってさまざまであり、5%以下(アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、西欧や北欧の数カ国)から50%以上(サハラ以南アフリカの数カ国)まで幅があった。

 

著者らは、感染症によって起こるがんの負担を軽減する可能性は大いにあると強調している。社会経済発展は、感染症によるがんの減少に関係している。こうしたがんの発生を早急に減少させるためには、地域住民を対象としたワクチン接種や、スクリーニングと治療のプログラムが容易に利用できるようにするべきである。

 

ある関連コメントでは、感染性病原体に起因するがんの割合は、本解析で実際より低く示されている可能性があると強調している。ワクチン開発へのより重点的な取り組みが最も重要である。さらに、感染症に起因するがんの発生を抑制するための戦略も合わせて検討すべきである。たとえば、行動様式や公衆衛生に関する介入を行い、がんを伴う感染症の発生を抑制することなどである。ワクチン、スクリーニングと治療のアプローチ、有効な薬剤による感染症(HCV、ヘリコバクター・ピロリ、HIV)治療を実施、利用できるようにした後の課題は、何をすべきかだけにとどまらず、いかに実施すべきかに及ぶ。

 

歴史的に高所得国に集中している基礎研究、薬剤開発、臨床試験から、感染症流行地域の各拠点との協同取り組みへと研究の焦点を拡大していけば、感染症によるがんの負担を抑制するとともに、現時点では未知の発がんの仕組みを解明できる可能性がある。

参考文献
Plummer M, de Martel C, Vignat J, et al. Global burden of cancers attributable to infections in 2012: a synthetic analysis. Lancet Oncology 2016;Published Online 25 July. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S2214-109X(16)30143-7

 

Casper C, Fitzmaurice C. Infection-related cancers: prioritising an important and eliminable contributor to the global cancer burden. Lancet Global Health 2016; Published Online 25 July. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S2214-109X(16)30169-3

原文掲載日

翻訳松川深玲

監修東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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